このお話に出てくる『ハンキュー』というバッグの色は
「マルーン(栗色・エビ茶色)」と言い、
我ら関西育ちにとってはなじみ深い、阪急電車の色でございます。

この本に出てくる、20万円の”ハンキュー”にあたるモノを手に入れたいと思ったし、
鈴原さんが水筒から注いでくれた熱いほうじ茶の銘柄を知りたいと思ったし、
何よりクズケン良い男すぎるよねー。

というお話です(ちょっと違います)。

深淵を覗く時、深淵もまたこちらを…というやつ

伊藤くんAtoEという小説です。

読書は苦手という方は映画・ドラマ版もございますが、
読書が好きな方は先に原作本からスタートをお勧めします。

痛々しい男にかかずらわってしまったせいで、
大変な目に合う女の子たちが5人出てくる短編集仕立てで、
全話ともその痛い男を通してちょっとずつ絡み合っていて、5話めに収束していきます。映像版は最初からこれが収束されて進んでいきます。

1話1話、男と向き合うことを通して、自分の中の深淵がこっちを覗き返してくる様がリアルなんですね。
ぜひ、文章で噛みしめてゾクゾクしながら読んでもらいたいです。

深淵と対決した後、
それぞれの女の子が手に入れる「傷ついたけど、そろそろ前向きに行こうか」というあの切なくてダルくて少し晴れやかな虚無は、
5人のうちだれか1人には共感できるんじゃないでしょうか。

なお、珍しく映画版とドラマ版、キャストが同じです。
映画しか見たことないけど、映画版はダイジェストって感じなのかな。

クズ過ぎて自分みたいだからギリギリ読める

30代に入ったぐらいで読みましたので、
共感できる子のストーリーと、上から眺めちゃう子のストーリーが分かれます。
ですが、どのストーリーもクズすぎてキラキラしてなくて自分みたいで笑、良い話なんです。

アラサーの、恋愛百鬼夜行中の女性陣にはぜひご覧頂きたいし、
恋愛百鬼夜行をもう一度したい人妻の皆様にはエンターテインメントとしてお勧めだし(恋愛やっぱもういいわ、と思えるかもしれませんｗ)、

何よりこれ色んな人にお勧めしやすいんです。
私男の人と付き合ったことないです、
バージンまたはセカンドバージンです、
30代ですが高校時代に1人付き合った(？)経験があるだけです、
というような方々も
20代前半で私ってクソビッチなのかなぁと悩んでいる方も、
私は港区女子なのでアラサーフリーターの話とか逆にリアリティないという方も、本当にどなたでも読めると思うんです。

マジで読めます。それぞれのマインドのエピソードが出てくるからです。

もちろん『33歳既婚子1人・ファーストキスは18歳・バージンは21歳・夫より前に付き合った人数は3人』…とかって割と普通なんじゃないか私、っていう方でも楽しめるんじゃないでしょうか。

前半の4人には、助けて支えてくれる女友達や先輩や後輩がいます。
女友達に対するスタンスすら、
スタンダードにマウンティング集団に属す方、女友達が苦手な方、私のような女友達は至宝！という方、どのタイプの方でも面白いと思うんです。色んなタイプが出てくるから笑

ただし。
ある程度は元気な時に読むか、失恋後に号泣してデトックスするタイプの方が失恋後に読むか、をお勧めします。

どれか1つの失敗談は胸を炙りすぎて、胸が焦げ焦げに焙煎されるか、胃がただれるか、ハラワタが煮込まれすぎて脱腸の恐れがあるからです笑

元気な時に読めば、ある程度「他人事」として読みつつ「あるあるー」と笑える本です。

著者の柚木さんは誰に共感できるんだろう？

このお話の著者の柚木麻子さんは1981年生まれと書かれているので、
2013年に発行されたこの本の執筆は31~32歳ということになると思います(プロットとかは分かんないし、多分としか言えませんが)
2013年は私は28歳～29歳でしたので、登場人物の最初の1人「Aの女」と年齢が近かったんですね。
初読の30歳は、著者の柚木さんの執筆時のご年齢に近かったということになります。

凄いわー。この年頃の頃にあった「あるある」をここまで鮮やかに文章にできるのすごいわー。と一気に読んだあとで思いました。
作中に出てくるSATCの話に若い頃にあこがれる様は、
今の30代～40代ぐらいの方はドンピシャじゃないかと思います。

男子禁制？いやいや面白いと思います。

映像版のスポット(PR)には『男子禁制』的なことが書かれていますが、
「29歳以下の童貞」以外の男性は見てみていいと思います。
”完璧に見えるキレイな女”が怖くなくなると思います。

30歳未満の童貞の男性のみなさまは(恋愛に興味ある人は)、
とりあえずはご自身でジタバタした後から見た方が良いと思います。
ちょっと自分で失敗とかやらかしてないと、途中”意味がわからん””話が繋がってない、なんだコレ”、な、ことが多すぎるはず。

これが女の全てと思うと、女が嫌になって困るかもしれない。
「あるある」だけど全てじゃないですからね笑
それに、伊藤くんそのものの痛々しさが見ていられないと思いますｗ

悪いオトコをやれている皆さんにはもう鴨の集団にしか見えないと思いますので、たぶん興味ないですよね笑