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今更、大江健三郎

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大江健三郎作品についての感想を載せています。
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今更、大江健三郎(3)

今更、大江健三郎(3)

初期作品群(Ⅲ)

『幸福な若いギリアク人』『犬の世界』

前回、大江健三郎の作品のどういうところに魅力を感じるのかについて少し書いたのですが、今回もその続きです。

私は自分が好きだなあと思う作家に出会うと、その作家や作品についてもっと知りたくなり、作品を読みながら同時並行でいろいろな資料を読んだり、他の読者がどんなふうに評しているのかを調べる方です。
大江文学の愛読者は層が厚いので、その点資料

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今更、大江健三郎(2)

今更、大江健三郎(2)

初期作品群(Ⅱ)

『セヴンティーン』『政治少年死す(セヴンティーン第2部)』

大江健三郎さんは、読み手によってかなり好き嫌いが分かれるタイプの作家ではないかと思っています。
熱心な愛読者も多い反面、アンチもまた多いという印象があります。
初期の作品群では、扱う題材に性の描写や暴力、殺戮など過激な内容が多いので、私の第一印象がそうだったようにそれを好まない読者もいると思います。また彼の文章が読み

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今更、大江健三郎(1)

今更、大江健三郎(1)

初期の作品群(Ⅰ)

今回は、私がこのところ継続して読んでいる作家、大江健三郎さんについて書いてみようと思います。
2023年3月、大江健三郎さんが世を去ってから約一年一ヶ月が過ぎました。
享年88歳。22歳で最初の短編『奇妙な仕事』を発表してから、最後の小説『晩年様式集(イン・レイト・ワーク)』を78歳で書き上げるまで、50年以上を走り続けた作家です。

大江健三郎作品を私はこれまで殆ど読んでき

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