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Libya Updates #10: JUNE 2020 Week 2


こんにちは🕊
今週のリビアの動きを整理しました。

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これまでのリビア
リビアでは、2011年に40年続いたカダフィによる独裁体制が崩壊。その後、新たな政府樹立を巡り国が分断状態にある。
現在は首都トリポリを拠点し、国連の仲介で作られた国民合意政府 (以下GNA)と、東部の都市トブルクを拠点とする政府(以下HoR)、二つの「政府」が正当性を主張し合っている構図だ。
HoRとつながりを持つハフタル将軍率いる勢力は2019年4月、首都トリポリへの侵攻を開始。GNAに忠誠を誓う民兵組織などがこれに応戦し、軍事衝突へと発展した。 GNAにはトルコ、ハフタル勢力側にはUAE、ロシアなどがつき、軍事支援などを行ってきた。6月はじめにGNA勢力がトリポリを奪還し、ハフタル勢力は同地域より撤退した。

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1. 停戦へ向けた交渉

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国連は5日、リビアのGNA政府とハフタル勢力の間で停戦に向けた協議が始まったと報告した。新型コロナ感染拡大の影響を受け、交渉はオンラインで行われるという。

リビアでの和平を目指して今年1月に行われたベルリン国際会議で、国連主導で軍事、経済、政治の3つのルートでGNAとハフタル両勢力による交渉を進めることが決まった。だが政治ルートの協議は2月に失敗している。

GNA勢力とハフタル勢力は10日、軍事ルートでの新たに停戦に向けた協議を始めたと発表。


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一方、エジプトのシシ大統領は6日、会見で独自の停戦案を発表した。
1年版後の選挙を目指し、それまでは暫定評議会を設けるというもの。大統領はジュネーブでの和平会議の開催とともに、全ての外国勢力のリビアからの撤退も呼びかけた。

会見には大統領のほか、ハフタル将軍とHoR政府のスポークスパーソンであるアグイラ・サレ氏が出席した。GNA側からの出席はなかった。

シシ大統領は10日、米国のトランプ大統領がエジプトの案を歓迎したと声明で明らかにした。

ロシアとUAEも同様の姿勢を示している。


トルコの外務大臣は10日、エジプトの呼びかけを拒否。停戦案がハフタル勢力に有利に働くものだと非難した。

ドイツも国連主導の和平協議が必要との姿勢を見せている。

トルコは米国への働きかけも行っている。
エルドアン大統領は8日、トランプ大統領との電話会談を実施。リビアについて「いくつか合意した」としたものの、詳細は明かさなかった。


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EUは今週、声明で外国勢力を含むすべての紛争当事者に対して停戦を呼びかけた。

背景にはドイツのメルケル首相がリビアをめぐり存在感を見せる狙いがあると考えられる。
首相は8日にはシシ大統領、9日にはロシアのプーチン大統領と電話会談を実施し、リビアの情勢について話し合ったという。


2. 現地では暴力が続く

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現地では暴力が続いている。
トリポリ郊外の町でGNA勢力による破壊や略奪が起きている模様。7日に国連が報告した。


GNA勢力は4日にトリポリをハフタル勢力より奪還したのち、シルトで新たに軍事侵攻を開始した。


国連リビア特別支援ミッションUNSMILによると、現地では少なくとも19名の市民の犠牲が確認されているという。

シルトの場所はこちら。


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トリポリ南部のワディ・アッラビ地区とアイン・ザラ地区では10日、ハフタル勢力が仕掛けた地雷により少なくとも7名が死亡。うち2人は地雷撤去のスタッフ、残りは市民だった。

爆発は複数回起こったという。

トリポリ南部のタルフーナにある病院では、GNA勢力が106名の遺体を発見したとのこと。子どもや女性の遺体もあるという。

タルフーナはハフタル勢力が先週、トリポリより撤退するまで、同勢力とGNAの主戦場だった。UNSMILによると、同地域では数日の間に1万6千人以上が避難を余儀なくされている状態にあるという。

タルフーナの場所はこちら。


この件を受け国連は、GNAによる捜査を支援する準備ができていることを発表した。


ロンドンとトリポリを拠点とし、リビアの人権問題について扱うNGO、Lawyers For Justice in Libyaの理事、エルハム・サウディ氏も、強い権限のもとでの独立した捜査が重要と指摘する。


3. 新型コロナ

新型コロナの感染拡大状況

WHO東地中海事務所によると、11日 (現地時間) 時点で確認されているリビアの新型コロナ感染者は378名。1週間で新たに確認された感染者の数は182名。死者は増えなかった。

リビアでは医療や検査の体制が整っていないことや、医療用防護服の不足が懸念されている。

新型コロナの4月以降の感染拡大状況は以下の通り。6月に入ってから新規感染者の大幅な増加が続いている。

20200612_リビアの新型コロナ感染者数の推移_modified


参考
カイロのシンクタンクとリビアのNGOグループが10日、今年1月から5月までのリビアの人権状況をまとめたレポートを出した。

リビアでは、5つの形で人権侵害が起きているという。

1. 故意で組織的な市民や市民の施設を狙った攻撃
2. ジャーナリストや活動家などに対する恒常的な暴力や脅迫
3. 法的な権限の外での殺害や非人道的な処遇
4. 強制失踪や恣意的な拘束、恐怖による支配
5. 紛争とパンデミックによりさらに悪化した移民・難民の拘束

そのうえで、実効性や説明責任を伴う捜査や制裁が必要だとしている。


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今週はリビアの写真家で、Libya Updatesのシリーズのヘッダー写真を撮影したヒバ・シャラビさんの声を取り上げ終わることにします。
「紛争の影響を受けた子どもたちは、家族のような伝統的なものから守られることがなく、大事なものや無邪気な子ども時代を奪われ、社会の崩壊と価値や法の支配がむしばまれていくことに直面しています。成長するなかで、長く続く悪影響に苦しむことになります」


毎週金曜日にリビア情勢を日本語で整理しています。
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Also read:

パンデミックでより大きな打撃を受けるのは、弱い立場にある人びと。
専門家から市民、政治家まで、たくさん耳にする言葉があります。
「連帯が必要」、「脅威は変革のチャンス」

ですが、実際にリビアなどの紛争地の報道や人びとの声などを追ってみると、新型コロナについてあまり大きな話題になっていないように感じていました。
なぜなのか。少し考えてみました。
2019年2月から3月にかけて訪問したリビアの隣国、チュニジア。旅の記録を書いてみました。

日本全国で緊急事態宣言が解除されましたが、依然として簡単には海外旅行に行けない日々が続くかと思います。
記事を通して、少しでも旅行気分を楽しんでいただければ嬉しいです。

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