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Libya Updates #37: December 2020 Week 3


こんにちは🕊
1週間のリビアをめぐる動きを整理しました。

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リビアのこれまで
40年以上続いたカダフィによる独裁体制が2011年に崩壊。新たな政府樹立を巡り、衝突が続いてきた。
現在は首都トリポリを拠点とし、国連の仲介で2016年に樹立した国民合意政府 (GNA)と、東部の都市トブルクを拠点とする政府 (HoR) が分裂している構図だ。
HoRが支持するハフタル将軍率いる勢力が2019年4月、トリポリへの侵攻を開始した。GNA側の民兵組織らが応戦し、武力衝突に発展。GNAにはトルコ、ハフタル勢力にはUAEやロシアなどがつき軍事支援などを行ってきた。
6月はじめにGNA勢力がトリポリを奪還し、ハフタル勢力は同地域より撤退。停戦へ向けた協議が進む一方、現地での戦闘を繰り返してきた。


■リビアで起きていること

■先週のアップデート


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1. 国内の動き

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和平へは一進一退の状態が続いている。
国連が中心となり進めている政治交渉では15日、提案の可決に必要な最低投票数の引き下げについて投票を行ったものの、合意に至らなかった。
現状では提案の可決には75人のメンバーの75%以上の投票が必要で、提案はこれを61%あるいは66%に引き下げるというもの。
36人が61%、14人が66%に投票。21人が投票を放棄し、いずれの提案の可決にも至らなかった。

国連が中心となり進めている政治交渉の第4回は1日にオンラインで始まっていた。メンバーらは3日、首相など高官の任命や選出の方法に関する提言を採決するための投票を実施。9つの案から選ぶものであったが、これも可決には至らなかった。


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一方、「1つのリビア」へ向けた動きもある。
リビアの中央銀行の役員らは16日、国内の為替レートを1ドル4.48ディナールで統一することで合意した。

政治的分裂などにより東西支部は分裂状態にあり、それぞれが独自に為替レートを設定していた。国連が両者の統合を呼びかけており、両側から役員らが集まり会議を行うのは5年ぶり。
同国では全土で銀行から現金を引き出すことが制限されている状態が続いてきた。国は多額の負債を抱えており、地方銀行への打撃も大きい。


2. 国際社会の動き

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国連のグテーレス事務総長は15日、リビアの紛争を解決するために新たな特使を派遣する案を策定した。
事務総長が推薦したのは現在、中東地域の特使を勤めるニコライ・ムラデノヴ氏。安全保障理事会の理事国15カ国の反対がなければ同日にも案が可決されることになるとのことだが、結果はまだ明らかになっていない。

前特使のガッサン・サラメ氏は今年3月に辞任しており、現在はステファニー・ウィリアムズ氏が暫定特使を務めている。

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ロシアの民間軍事会社、ワグナー・グループは15日、2019年に拘束され、先週解放されたロシア人2人に30万ドル以上を支払う見込みを発表した。
マクシム・シュガレイとサミール・ハサン・アリ・セイファンは、同社の社員であると同時に、ロシアの国益や文化を守る活動を行っていると主張する団体「国の価値の保護基金 (Foundation for National Values Protection)」のメンバーだという。GNAがリビアの内政や選挙に干渉したとして、2019年7月から拘束されていた。

ワグナー・グループは2人が現地で研究を行っていたと主張。だがGNAが暴いた文書によると、2人は同社のために調査を行っていたという。


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GNA軍は15日、ハフタル勢力側に新たに飛行機でシリア人傭兵らが派遣されたことを明らかにした。飛行機はシリアのシャーム・ウィングス航空のもので、同国からベンガジへ飛んだものだという。
広報官、アブゥドゥル・ハディ・ダラは国連に対して、停戦合意が結ばれているにも関わらず、ハフタル勢力に対して何もアクションを起こしていないことを批判した。
軍によると、13日にもハフタル勢力がシルト周辺で軍備拡張を行ったほか、同地域の空港には武器を載せたロシアの飛行機が到着したことを確認しているという。

リビアへはハフタル勢力を支援するロシアのほか、敵対するGNAを支援するトルコもシリア人傭兵を派遣していることが分かっている。事実上、同国でシリア人同士が戦っている格好だ。


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イタリア人とチュニジア人を含む18人を乗せた漁船が9月にリビア東部のHoR政府に拘束されていた事件について、イタリアのルイージ・ディマリオ外務大臣は17日、船員らが解放されたことを発表した。

HoR政府は漁船はリビアの領海を侵犯していたと主張していたが、イタリアはこれを否定。ディマリオ外務大臣とジョゼッペ・コンテ首相がハフタル側とと交渉するためにベンガジへ渡航していた。

ロイター通信によると船員らの引き渡しにあたり、どのような交渉をしたのかは明らかとなっていない。
イタリア政府関係者によると、ハフタル側は今年10月、シチリア島で2015年に移民・難民が地中海を渡ることを斡旋したとして拘束された4人のリビア人の解放を求めていたという。


3. 新型コロナウイルス

感染拡大が続く

リビアでは17日 (現地時間) 時点で、累計92,577人の感染者が確認されいている。1週間の新規感染者数は4,055人。日に平均約580人近い新規感染者が確認されている計算。累計死者数は1,324人で、1週間で63人の増加。


リビアでは5月頃まで、感染者数は数十人規模で推移してきた。爆発的な感染拡大が始まったのは6月で、新規感染者数は増加の一途を辿っている。

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同国の人口は約689万人。
情勢不安の続いてきたリビアでは、パンデミック以前より医療保険制度がきちんと整備されていない状態。感染者に対応するための病床や医療器具なども不十分だ。
4月から5月には医療従事者や医療施設への攻撃も多発。6月以降は市民が地雷の爆発に巻き込まれる事態が相次いだ。


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「わたしたちが続けなければ、『彼ら』が力を持つ。ただ殺されるくらいなら、活動を続けるほかない」。現地で平和教育を続けるアジマールさんのお話です。

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