テクニカルライフトレーディング

敏腕トレーダーは、

モニタ上のピラピラ点滅する株価と、うねうね上下動するろうそく足を見ながら、

人生を、株になぞらえて、空論を思い付いた。

よく、人生の浮き沈みを、株価の値動きにたとえて、ライフチャートと表すことがある。

あのときは、全盛期だった。

あのときは、黒歴史だった。


チャートの前の高値と安値を静かに見つめた。

でも、チャートは、あくまで、
今日時点から過去を振り返った時の形に過ぎない。

ニュースや事件、決算発表、あらゆるファンダメンタルも、

結局は、買い手と売り手の需給バランスで、
株価にアウトプットされる。

だから、起きた出来事に、

ああだった、こうだったと、
いろいろ後付けしようとしても、

事実は、変わらないということに改めて気付かされる。
  

むしろ、チャートがどんな形をしていようが、

そこで、大事なのは、


負けていないかどうか。

たとえ、下落局面でも、
空売りを入れていたら、負けていない。

一見、負の出来事であっても、
それをチャンスに変えることだってできる。

すぐに損切りできたり、早めに利確すれば、含み損を抱えず、勝ち逃げできたかもしれない。

後悔しないで済んだかもしれない。

身の回りの様々な出来事に当てはめてみたら、
思い当たる節がある。

 だんだん彼は、

分かりきった過去のチャートに対して、

たらればを語る自分に嫌気がさしてきたので、

現在と未来に目線を変えた。

今を生きる自分にとって、最も大事なのは、

過去の値動きから、未来の方向性を予想すること。

流れが右上がりのときに買って、右下がりのときに売る順張り。

確かに、流れに乗ったり、皆と同じ方向に進むことも大事だ。

でも、ここぞというポジション・節目では、

上がっていても、空売りを入れたり、

下がっていても、買いを入れる逆張りもしなきゃいけない。

早めに仕込む程、堪え忍ぶ期間が長く、苦しいかもしれない。

ナンピンをしたら、なおさらだ。

でも、流れに逆らい、皆と違うことをするからこそ、ゆくゆくは大きなチャンスになることだってある。

「人生は、逆張りだ」

そう教わったこともあった。

それから、
両建ができれば、もっと負けないかもしれない。

局面を見据えながら、
ヘッジを入れて、リスクをおさえる。

逃げ道や選択肢があるから、
気持ちに余裕を持って、向き合える。

あとは、どんな時にポジションを張るかだ。

ずっとモニタを見つめて、
あくせく手を動かしていたら、疲れる。

ここぞという、転機、タイミングが来るまで周到に準備しておき、

チャンスが来たら、一気にポジションを張る。

やっちゃいけないのは、みんながやったからって、
何も考えずに飛び付いて、後追いすること。

手仕舞いも後手になる。

あとは、言わずもがなインサイダーだ。

結局は、自分の道は、自分で切り開いていかないとならない。

っと、

モニタを見つめながら、

「言うは易し」

という本質的な問題にぶちあたった。

やっぱり、予想は外れるし、
思わぬ事故を喰らうことだってある。

自然災害が来れば、暴落する。

結局、

人生も株も難しい。

挑むからには、覚悟が必要だ。

そう結論付けた彼は、

引けに数億の空売りを入れ、

明日の値動きを気にしながら、

静かに、PCを閉じた。

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