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100回同じ温度で

私が尊敬する人。同じことを同じ温度で100回できる人である。

私はものすごく健康で、多分遺伝的に肉体構造が盤石で、よく食べてよく眠る生活習慣も手伝って、自分でも強靭だと思うくらい風邪ひとつ引かない。私の子どももまだ成長途中ではあるけれど、その遺伝子と生活習慣を受け、同じくかなり健康派だ。

というわけで、子どもは入学以来、無遅刻無欠席を貫いていた。そしてもう今や、オロナミンC以上の元気ハツラツなのだが、少し前に体調を崩していた時期があった。

初めて学校の保健室の先生から電話があり、迎えに行った。高学年にして初めてであり、怪我をしたのかと思ったが、熱とのことで少し安心した。学級閉鎖間近だったから、そんな日が来てもおかしくないとは思っていた。逃げ切れず残念ではあったけれど。

保健室に迎えに行くと、お迎え待ちの子どもたちが数人いた。先生方は電話対応をしたり、ケアをしたり忙しそうだった。私が声をかけると子どもの様子を細やかに話してくれた。もう毎日毎日何人もここに来て迎え対応をしているであろうに、事務的なことは1つもなかった。

「あぁ、お母さん!おつかれさまです。お迎えありがとうございます。から始まり、何時ごろどんな様子で、保健室での熱、脈拍、今の様子は..」と教えてくれた。慣れない私が「んー、病院ってすぐ行ったほうがいいですかねぇ?」と聞くと、「さっきまで元気で、今この熱だと今日は検査結果がちゃんと出ないと思います、脈拍からすると熱が上がる可能性が高いから明日の朝がいいかも知れません。」と教えてくれた。細やかである。正しい正しくないではない、こういう時に経験則で話をしてくれるだけで助かるのだ。

職員室を通ると数人の先生が声をかけに来て見送ってくださった。

そして終業時間の後、担任の先生からお電話をいただいた。改めて今日の様子と、その後いかがですか?の確認の電話である。毎日毎日各家庭に電話をしているであろうに、なんなら私以上に親身になって心配してくれていた。

かかりつけの病院とはいえ、行ったのは数年前である。診察券を探してホームページを検索する。完全予約制で、すでに50人待ちとなっていた。

予約時に問診票もそのままオンラインで提出する仕組みになっていて、時間になり受付を済ませると、呼出ブザーを渡された。「車で待っていてください、ご案内できるようになりましたらブザーがなります。」とフードコート形式になっていた。高熱の人だけが渡されるようだ。

車内でゆっくり待てるのが良かった


そして診察の時。医師はもう何百回も毎日毎日同じ診断をしているであろうに。あっちもこっちも同じ症状の子どもがたくさんいるのに。

「あぁ、これは熱が高いねぇ、きつかったでしょう。ここまでよく頑張って来てくれたねぇ。何が原因か調べて、早く治そうね!」と言ってくれた。

なんと。その温度感で、その親身さで、ゆっくりとしたペースで、ちゃんとその目線で、顔を見たり診察をしてくれているその姿にシンプルにビビった。

私は驚いた。なに、なんなの?神ってない?え?聖人君子なの?と冷静に医師をガン見する、ヤバい母親と化した。

定期健診以外で病院に通うことがないから、それが最近の医療現場の素晴らしさである、ということも考えられるけど、だとしても、拍手していいと思う。

「で、お母さん?あの...」と、ひと通りこれからのウイルス検査工程の説明を聞いて、また検査結果を待ちに車に戻った。

検索結果が出て再度診察室に行ってもまたしても。

「⚪︎⚪︎ちゃん、インフルエンザでしたよ、菌がいなくなったら、すぐ楽になるからね!」と伝える時の、先ほどより少し前向きなテンション。何もしゃべることができないほどやられていた子どもは、それでも小声で医師に何かを訴えていた。それを聞き取ろうと近づいて話を聞いてもくれた。

「頭がいたいのかぁ。それはこういうことで、薬でこうなると楽になって、でもその後こういうことも起こるかもしれない。もしまたキツくなったらいつでもここに来てね。」みたいなことを丁寧にわかりやすく説明してくれた。

学校に出席停止期間の電話連絡を入れた。学校に電話するのも初めてで緊張したけれど、第一声からハツラツとした対応だった。状況を説明すると、「あらぁ、それはそれはきつかったでしょうね。」から始まり、具体的に熱の様子や今の状況をヒヤリングしてくれた。親身である。毎日何十件も対応しているであろうに。事務的にさっさと受付けることも可能なのに。私の方が数回状況を説明しただけで、もう飽きそうなのに。

そして「お母さんも大変な時でしょうから、気をつけて、休める時は少しでも休んでくださいね!」とエールまでいただいた。先生だって毎日ウイルスと隣り合わせの環境だ。「先生こそ、毎日この状況でしょうから、ご無理なさらず、なんとかウイルスから逃げ切ってくださいね!」と私は伝え、学校の近況を聞いた後、最終的には「お互い頑張りましょうね!!」という結束感すら生まれていた。

家に帰って夕方には学校のお友だちが、机の引き出しや体操服、時間割表などを家に届けてくれた。その中には担任から手紙が入っていた。毎日何枚も書いているであろうに。丁寧で整った文字、やさしさが伝わる。

こんなことでもないと、気づけない優しさがある。こんな時にこそ、安心させてくれる人がいると気づけるのかも知れない。

子どもに関わってくれているやさしい人たちに敬意を。ありがとうございました!!

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