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雑感記録(210)

【家族という生き物】


自分事で恐縮だが、先日姪っ子が生まれた。

僕には2つ歳が上の兄が居る。別に仲が特別良いかと言われればそういう訳でもない。かと言って極端に仲が悪いかと言われればそうでもない。まだこの歳にもなってお互いに誕生日プレゼントを交換し合う仲であることを考慮すれば、もしかしたら仲は良いのかもしれない。兄弟とは複雑な関係であるものだとつくづく思う。

兄たちは地元で生活しているので、生まれたという連絡を聞いたのはLINEでだ。こういう時にSNSも便利だなとは思うけれども、実感が何倍にも薄まったような、何だか複雑な感情になってしまう。取り急ぎ写真が送られてくる。僕の家族はグループを作成しているので、大体家族とのやり取りは基本ここで行なう。兄夫婦は姪っ子の写真を連投する。

僕は凄く変な感じがした。

どう表現すればいいのか分からないけれど、何でか「嬉しい」という気持ちが勝ってしまったんだな。その連絡を貰った時には何だか、今思い返すと舞い上がっちゃってこっぱずかしい文章を書いてしまった。「嬉しさ」という感情はいつも不思議である。高揚させるだけさせといて、それを具体化させようとしない。ある意味で「喜び」という感情は人間的な本能に基づくものなのだろうと認識させられる。

だが、どうも変な感じが拭いきれない。

僕にとっては、勿論遠いけど血は繋がっている存在だ。単純に考えてみれば「家族が増える」という事に他ならない。兄夫婦は兄夫婦での生活があり、僕の父親や母親も生活があり、そして僕にも生活がある。離れていても「血縁関係」があるというだけで、どこか繋がっているような気がする。いや、繋がっているのは事実なんだが。何て説明したらいいのだろうかと悩む。

生物学上から言えば、僕と姪っ子は血が繋がっている。父も母も兄も血が繋がっている。兄嫁のお父様、お母様、お姉さまも血が繋がっている。だけれども物理的に生活している、要はその周囲の関係性、事物を取り巻く環境は物理的に離れている訳である。生物学的に繋がっていて、物理的に繋がっていないという表現を僕自身が書いていて物凄く違和感があるという話であると同時に、LINEで送られて来た写真を見た時に感じた不思議な正体なのかもしれないと想像してみる。


父親から個別にLINEが届く。

「叔父さんになった感想は?」

正直に言うが、答えに窮した。これは別に悪気があってとか、嫌みでいう訳では決してないが、僕が叔父さんだろうが何だろうが姪っ子には関係が無い。事実そうだ。僕は「叔父さん」という呼称でいつか呼ばれることは事実でも、だからと言って僕と彼女の関係性は変わらない。僕には僕の名前がある訳で、「叔父さん」という名前ではない。何だかそういうカテゴリー化があんまり好きではない。

家族という関係性は不思議なもので、「父」「母」「兄」「弟」「姉」「妹」とあるように様々な役割的名前みたいなラベルって言えばいいのかな?そういうものが与えられている。僕も「父」「母」からしたら僕は「子」というカテゴリーだし「兄」からすれば僕は「弟」である訳だ。ここまで別称が多分にあるのは家族関係だけなんじゃないのか。

家族関係の難しいところは、「子を個として見れない」ということに収斂されているような気がしてならない。僕は自分自身を1人の人間として扱って欲しいと思う訳だ。1人の人間として、家族の一員として、「子」としてではなく僕という存在として見て欲しい。ところが、1度でも家族関係の総体の中に組み込まれてしまうと名を与えられる。いや、厳密には役割を与えられ、無意識にそれを演じるように刷り込まれて行く。

特に「お兄ちゃんらしくしなさい」「お姉ちゃんらしくしなさい」という母親の紋切型の叱り文句が正にそれである。僕は幸いにも弟という立場だったし、兄が僕よりも…まあそれなりにポンコツだったのであまりそういう言われ方をしたことは無かったが、兄は「弟のようにしっかりしなさい」みたいなことを言われている場面を頻繁に見た。何だか今更だし27年越しに謝るのも何だが、申し訳ない気持ちだ。

家族のこの名称はこう考えると統率するのに楽だなとも思う。

ある一定の役割が決まっている分、上に立つ人間、つまりは「父」になる訳だが、家族を好きなようにというとかなり語弊がある訳だが、しかし意のままに動かすことは容易である。と書いたが、僕は家族制度なるものに詳しい訳ではないので思ったことしか書けない。家父長制とか色々とあるだろうし、フロイトの所謂「エディプスコンプレックス」とかそういった観点からも考えた方が良いんだろうけど、生憎読んでない。読もう。

別に僕の家族というか父親は所謂「亭主関白」みたいな家庭ではなかった。何なら色々とやってくれるので、正直母親よりも父親の方に愛着?というかそういうものがある。何だか知らないが、世の中では大抵の場合子供は母親の方を好くというが、僕の家族は母親よりも父親と出掛けることが多い。僕もあんまり母親と出掛けたいとは思わない(だからと言って嫌いという訳ではない。正直に言えば苦手である)。それは兄も同様であるらしい。大抵、何か相談事があればすぐに父親に相談する。それが良いか悪いかは置いておくとして。

多分、家族の中で唯一、人として扱ってくれるのも父親だと思う。僕が転職する時も「別にお前が好きで選んだんならそれでいいんじゃね」みたいな感じだった。わりと自由?という訳でもないが、思うままに色々とやらせてくれたのは家族の中で父親だけだったような気がする。今でも時たま怒られる時はあるが、自分で考えてみても家族が云々よりも、人としてどうなん?みたいなことで怒られる。そこが僕には楽でいい。家族関係を持ち出して云々言われるよりはこっちの方が甘えを持たずに聞ける。


と、色々と頭の中を駆け巡る。その質問にどう答えるのが正解なのか分からない。「嬉しい」?いや、事実そうなんだけれども、何だかそれを父親に言うのも変な感じだしな…。だから僕は正直に「よく分からん」と答えて、「実感が湧かないし、自分の兄貴が親になると考えたら余計に変な感じがするね。」とメッセージを送った。

しばらくして、返信が来る。別に普通の回答だ。「そうか」でお終い。

そう、そうなのだ。今書いてみて思ったが、小さい頃から常に一緒に居る血の繋がった人間が、父親になるだなんて誰が想像できただろうか。小学生や中学生、高校生の同級生とは訳が違う(それは当たり前なんだが…)。それも確かに違和感を覚える1つの原因かもしれない。いや、確実にそうだな。うん…。

いつ頃帰省しようか悩みどころである。

よしなに。



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