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8月に読んだ本まとめ①【読書大全から、哲学、心理学、そして戦争へ】

8月をふりかえると、今まで自分が読むことのなかった新しいジャンルに手を伸ばせているような気がする。

そうして一歩ずつ、自分の知らない場所へと歩みを進めることができれば、代わり映えのない日常がちょっと楽しくなる気がする。

アンテナを広げ、子どものような好奇心を持って毎日をすごし、自分の体験や日常からまったく新しい本に巡り会うような、そんな機会を増やしていきたい。

もちろん、本から本への水平的な読書も忘れずに。


1. 「読書大全」堀内勉

先月、話題になっていた「読書大全」を購入した。

すごく簡単に説明すると、様々な本をお勧めしてくれる分厚いブックガイド。

しかしこれは膨大な数の高尚な(?)古典を分野ごとにまとめて紹介してくれる、そんな稀有な本。最近はこれを辞書のように使い、教科書に出てくるお堅い本をせっせと選んでは、読み漁っている。

そんなたくさんの難解な古典を、この本はわかりやすく説明してくれる。なので買ってまずさっと一読しておけば(分厚さに怖気付いてはいけない)、書店や古本屋でぶらつくのが楽しくなる。なぜなら高い本や絶版の本も紹介されているので、棚の隅から隅まで目を凝らすことになる。そうして思いがけぬ本と出会う可能性も増えるのだ。

また、一通り目を通すと自分の知識の偏りがわかってくる。私は理系だったので、哲学、経済学の本を圧倒的に読んでいないことに気がついた。このように読書傾向の偏りを矯正し、自分の知識の穴を埋めていくのに非常に役に立つ本だと思う。


2. 「利己主義という気概ーエゴイズムを積極的に肯定するー』アイン・ランド

上記の「読書大全」から興味を持って購入した本である。

「利己主義」というタイトルは、調和を大切にする我ら日本人には過激に聞こえるかもしれない。しかし、本を読めばその真の意味が全く異なるものであるとわかる。

(絶版で高騰しているので、ぜひ図書館で!)

「幸せ」を考える上で、わたしたちはもっぱら個人と社会を切り離して考える。私は幸せだけど、社会全体として考えたら嫌な世の中であることもあれば、社会は平和で幸せそうなのに、自分だけが不幸であることもある。

この本が言いたいのは、実のところ「わたしが幸せ」で「あなたも幸せ」で「その周りも幸せ」ならば、その集合である社会も幸せになれる、という主張なのだ。

他人のために自分をすり減らすのではなく、ひとりひとりの幸せを実現した社会へ導くという考えが「利己主義」なのだ。

興味のある方、ぜひ一読していただきたい。「読書大全」には危険な思想という記述もみられるが、決してそんな本ではない。


3. 「中空構造日本の真理」 河合隼雄

7月にいろいろな経緯があってミヒャエル・エンデ→東洋思想→日本の思想→河合隼雄でたどり着いた本である。(エンデの創作の原点について書かれた本も読んだが、非常に興味深いものだったので今度別で書こうと思う)

この本では神話から日本人の考え方を分析し、その特殊性を外国人と比較したものなのだが、とにかく日本人という人間をよく説明している。

読みながら、日々の生活で関わる人々の行動や言動と照らし合わせてみると、非常に納得できる(いい意味でも悪い意味でも)。

以来私の中で河合隼雄のビッグウェーブが到来中なのだ。

ちなみに日本の思想を知るべく読んだ本がこの一冊である。ここから河合隼雄に進んだ。


4. 「ユング心理学入門: 〈心理療法〉コレクション I」河合隼雄

引き続き河合隼雄。

このかたの何がすごいって「ユング心理学」という睡魔の塊のようなにみえる学術的内容を、私に一睡もさせずに読ませきったことである。(倫理の授業でよく寝ていたせいか、実は名前くらいしか知らなかった)

シリーズものなので今後も一冊ずつ読んでいきたいが、彼の名著はたくさんあるのでいつ読むかは不明である。

いま興味があるのはこの一冊。ユング心理学に出てくる「影」はグウィンのゲド戦記に出てくる「影」と通ずるものがある気がする。

ファンタジー、魔法という目で見えないものを形作る上で、哲学は非常にいい素材になる気がする。


5.「NHK「100分de名著」ブックス 荘子」

エンデ→東洋哲学の流れから。(正確にはエンデが影響を受けているのは老子であり、老子→荘子の流れでこの本にたどり着いた)

毎週楽しみにしている番組で、このテキストも非常にわかりやすくまとまっていたので岩波荘子の前に購入した。しかし今となっては読まなくてもよかったように思う。岩波の注釈が想像以上にわかりやすかったのだ。

6. 「荘子 第一冊 内篇」

全4巻。1と2を読んだが、本の解説にもある通り、2冊の内容が違いすぎて驚く。「胡蝶の夢」など寓話的でファンタジックなお話は1巻中心なので、そういうものを求めている人は1巻を読むとよい。

老荘思想についてはここで触れない。別で書こうと思う。


7. 「荘子 第二冊 外篇」

2巻。孔子を意識しすぎじゃない?と個人的につっこみたくなるくらい1巻より現実的。ある程度わかってきたので3、4は現在停滞中。


8. 「ぼくはこんな本を読んできた」立花隆

テレビ番組の特集で著者を知り、近所の書店に駆け込むもこれしかなかったのでとりあえず購入。知の巨人たる著者のインプットに対する考えや、文学を読むことの意味について語った内容に感動した。

次は脳死や田中角栄研究ほかいろいろ読みたい。こういう方を知るとまた本棚を買わねばならなくなる。


9. 「失敗の本質」戸部 良一ほか

読書大全に載っており、ちょうど終戦記念日だったこともあって手に取った気がする。

この本はなぜ日本軍が太平洋戦争で負けたのか分析した本であるが、戦略や軍備ではなく組織について着目したものである。特に米軍との比較がたくさん挙げられており、また日本軍が毎度戦線で同じ失敗を繰り返すため、要点が非常に頭に残りやすい。(けなしている訳ではない)

感想を別で書きたいくらいよい本だった。特に経営者必読。リーダーシップや組織論の本を読むくらいだったらまずこれ。


10. 「抗日遊撃戦争論」毛沢東

立花隆氏が上記の本の中で毛沢東を挙げていたのでとりあえず購入。文革のイメージがあってずっと敬遠していたのだが、彼の戦術論は理にかなっているように思われる。先入観に囚われず手に取ってよかった。


以降は②に続く。こちらは比較的ゆるい本。


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