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愛することについて【哲学】

「愛」

という単語から、どのようなイメージが浮かびますか。

重たいとか、こそばゆいとか、
色っぽいとか、温もりや優しさとか。

人それぞれ、イメージは異なると思います。

私たちは、普段から何気なく「愛」という単語を使っていますし、
テレビや映画からもフレーズを耳にします。

「僕は君を本当に愛しているよ」
「2人の間に愛が芽生えた」
「愛するよりも愛されたいわ」

それは本当に、「愛」を理解しているのでしょうか。

2人を繋ぎ止めるための魔法の言葉でもないし、
気付いたら勝手に芽生えているものでもないし、
愛することすらできない人が愛されたいだなんて…

しかし、いつの時代も「愛」をテーマにした描写は、聴衆を惹きつける感動的な物語として綴られています。

誰でも「愛」には敏感で、あわよくば自分もあのロマンスの渦中に居たいと思っているのです。


現代の人々の多くは、テレビなどで放送されているような恋愛ドラマを「愛」と捉えているのが事実です。
しかしその正体は、愛に似た執着や占有、拘束、処理といったものにすぎず、愛ではありません。

「愛」は情熱だとか、泥沼だとか、求め合うものだとか、そういった誤ったことを想像するのは、恋愛ドラマの見過ぎです。

現実世界の私たちは、そんなドラマをお手本に、幻を本物の愛だと信じ込み、傷付けば「もう誰も愛さない」と塞ぎ込みます。

その繰り返しでは、生涯、本物の愛を知ることはありません。
そんなの、あまりにも勿体なさすぎます。

今回は、愛とは何かを哲学的に探っていきたいと思います。




ドイツの哲学者エーリッヒ・フロムは、「愛は技術である」と述べています。

音楽や工学や建築の技術を磨くためには、失敗をしたらその理由を知ろうとし、次はどうしたらうまくやれるかを熱心に学びます。

愛も同じです。
愛の失敗を克服するためには、失敗の理由を調べ、愛の意味を学ぶことしか方法はないと、フロムは言います。

技術であるその「愛すること」とは、そもそも一体どういうことなのでしょう。

まず、「愛」を定義することはできません。

愛する対象についての知識や関わりの深さは前提として、親密かつ人間的な体験の積み重ねによってのみようやく得られる感情です。
それを他人に言葉で説明することは、ほぼ不可能だということです。

また、「愛すること」は個人的な感性でもあり、これは音楽や絵画などの芸術作品を鑑賞した時に感じる、「その世界に入り込む感覚」のようなものです。
感想文は書けたとしても、やはり共感を得ることはできないため、「愛すること」は言語表現の許容量をはるかに超えています。


この世には、愛することができる人と愛することができない人がいて、

愛することができる人の中でも、対象や範囲は人それぞれ異なっています。

愛って人類に共通しているのに、表現や感じ方は人それぞれです。

そりゃあ、恋愛ドラマのような、世間体を気にした価値観を見せつけられても、私たちには関係ありませんよね。


定義することはできませんが、フロムは「愛すること」を理論的に説明しています。
それは、「愛することは、与えることである」です。

与えるとは、どういうことか?
奪われるとか何かを犠牲にするとかではありません。

何かを与えるという行為は、自らの潜在力の最高表現です。

与える行為によって、自分が生きていることを実感しそれゆえ喜びに満ち、楽しいという経験をします。

例えば、贈り物をすることや、デートの時に自分の時間を相手に与えること、自分の思いやり、知識、財産を与えるなど、どんな形でも愛する人には「与える」という行為を絶えずおこなっています。

人類における、与える行為の究極は性の領域です。
男性は女性に自分の性器を、精液を与えます。女性は男性に与えることとして、自分の女性としての門を開きます。母親になれば、子に母乳を与え、肌の温もりを与えるのです。


与えられた相手は、必然的に心が動かされます。
相互作用がもたらされ、相手も与える人となるのです。

これが互いに愛し合うメカニズムです。2人はその世界で、愛に包まれるのです。

「好き」の延長線上に「愛」はありません。
自分から愛さない限り、愛されることもありません。

2人の複雑な時間と経験から生まれた愛の結晶は、2人の努力の賜物なのです。




国語や数学は学校で習いますし、就職すれば会社の研修を受けます。
日曜大工とか投資とか、専門ではないことでも必要であると思えば、独学で習得しますよね。

「愛すること」はどうでしょうか。
私たちはこんなにも愛を渇望しているのに、自分から学ぼうとはしないのです。

仕事で疲れ切った毎日を送る私たちにとって、「愛すること」についての優先順位はかなり低いようです。
私は仕事を辞めて、たっぷりある時間の中で愛について深く学びました。

皆さんに仕事を辞めることを勧めているのではなく、忙しい日々の中でもほんの少しだけ、そのスマホで見る動画1本分の時間を、「愛」について考える時間にすることを勧めます。

愛することについて、他にもたくさん書きたいことはありますが、ひとまずここで終わりにします。
最後に参考にした書籍を載せておきます。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

・エーリッヒ・フロム著、懸田克躬訳「愛するということ」株式会社紀伊國屋書店(1959)←今は新訳版が出ています。新訳版も読んでみたいです。
・白取春彦著「『愛』するための哲学」株式会社河出書房新社(2021)

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