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ヘルスケアアートやコミュニティアートは「マッチ売りの少女」のマッチなのか?

ヘルスケアアートやコミュニティアートなどいろいろな呼び方があるが、アートに触れると健康に幸せに生きることにつながる、という考え方や試みがある。

イギリスやデンマークなどで盛んで、研究リポートも多く発表されている。

2017年のイギリスのリポート「Creative Health: The Arts for Health and Wellbeing」を読んでいくと、「病気になった人を治療したり、病気になった人が回復できずに元気に生活できなかったりすると、社会・国にとってコストがかかる。そうした状況を予防するため、アート活動にお金を出して、人々が生き生き暮らせる方がコスパもよい」という思考が示されている。

「すべての人に高度に快適な生活環境や治療を与えるのはすぐには難しいが、アートを体験してもらうことは(それより安価で)できる」といった考え方も提示されている。

「合理的」というべきか。そう考えれば、一般の人々がアートを行う活動への助成金も出せるということなのだろう。(ただし、誰もがそう考えるわけではないので、イギリスでも資金の確保や活動の継続は大変らしい)

そこでふと思い出したのがアンデルセンの「マッチ売りの少女」の物語だ。少女は貧しく、なけなしのマッチを擦ってわずかでつかの間の暖を取り、その炎の中に幸せな夢を見る。

アートは、実質的におなかを満たす食べ物や、暖かく眠れる住居や寝床ではなく、マッチが見せる夢にすぎないのだろうか?

いや、アートと、マッチが見せる夢は違う。アートは、調査により、心身によい影響があることが実証されている。

実は人は、衣食住が物質的に得られれば必ず幸福になれるわけではない。マッチ売りの少女が夢見たのも、空腹や寒さの解消だけではなく、一緒に食事を取り楽しく語らい安らかに眠りに就く、暖かな家族だったのではないだろうか?

アートは心を満たす。心が満たされると、体も元気になる。マッチの炎は少女を天国に連れて行ったが、アート鑑賞や活動はこの世で少し楽に楽しく生きることにつながり、最後には穏やかな気持ちで旅立てる手助けになってくれるかもしれない。


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