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エッグベネディクトとミルク、嶽本野ばら

給料が入ったので、彼女を真似て新宿に出かけた。

彼女が荒れてから未だにTwitter等のSNSが更新されない。
こうも長いとこちらも困ってしまう。
過去の情報から彼女が度々新宿へ足を運んでいるのは知っていた。
専門学校、職場、服飾資材屋が新宿にある様でその名残りだろう。

以前、彼女がTwitterでサラベスと言う店のエッグベネディクトの写真を上げていた。
「エッグベネディクト」聞いた事はあるが食した事はない。

調べて見るとエッグベネディクトとはイングリッシュ・マフィンの半分に、ハム、ベーコンまたはサーモン等や、ポーチドエッグ、オランデーズソースを乗せて作る料理であるとあった。
全く味の想像が付かない。

また、サラベスはニューヨークの朝食の女王と呼ばれている様だ。

彼女の何気ない食事ですらこの様な仰々しい物なのか。
その様なお洒落な物を食べた事もないし知りもしなかった。

朝食に行けば3000円程のセットがある様だ。
朝食で3000円。高い。高過ぎる。

しかし今日の私は給料がある。
コミケも終わり当面の出費の予定も無いので足を運んでみる事にした。

オープンから1時間程後に行くと20人程の人が並んでいた。
お洒落な物を食べるだけで朝からこんなに並ぶのかと思ったが、店の前は冷房が効いており涼しかったのと交通費が勿体無いので並ぶ事にした。

動画を見たりして1時間程で店内に入れた。

メニューを見ても聞き慣れない料理ばかりでよく分からないのでワインとフレンチトーストのセットを頼んだ。
朝からワインなんて優雅ではないか。

続々と品物がテーブルへ並ぶ。
エッグベネディクトは思ったより大きくて丸かった。
卵を割ると黄身が流れ出てそれをパンに付けながら食べる様だ。
一口食べて驚いた。とても美味しい。
こんなに美味しい物を食べた事がないし、何とも形容し難い味だ。

後から来たフレンチトーストも柔らかく甘いメープルシロップが蕩けそうで、こんなに美味しい物を毎日食べている彼女が羨ましい。

ファミレスで食べるフレンチトーストと同じ名前の食べ物と思えなかった。

店内は常に満席で小心者の私は長居する度胸もないので食事を終え足早に外へ出た。

あのトロッとした卵とふんわりとしたフレンチトーストは二度と忘れないだろう。


今日新宿まで来たのはこれだけが目的ではない。

彼女が行きつけの洋服屋に行ってみたいのだ。

彼女は度々「MILK」と言うブランドの服を着ている。
都内に何店舗か構えている様だが行動範囲からして恐らく新宿に買いに来ているのだろうと考えた。

店舗に足を運ぶと眩し過ぎる位に煌びやかでフリフリの可愛らしい空間だった。
こんな所に喪女が来て良いのかと躊躇してしまうがここまで来たからには洋服に袖を通したい。

手前の商品を手に取ると直ぐに店員が飛んできて商品の説明をされた。

普段ユニクロとしまむらにしか行かないので店員に話しかけられる事なんて無いので感動した。
これがよくネットで話題になるウザい店員と言うやつか。

愛想笑いをしつつ値札を見る。
33000円。ワンピース一着で。

隣のカーディガンを見る。
22000円。

買える訳がない。
この二つで家賃が払えてしまう。
洋服屋とはこんなに高い物なのか。

店員がまだ暑い時期が続くので新作ではない夏服を見ないか、セール中で買いやすいとのセールストークをして来た。

正直、こんなに可愛い服なら着てみたい。
でもこんなに高い金額を出せない。
セールとは言え高いだろう。

やはり私の様な喪女には場違いなのだろう。

逃げる様に店舗を出た。


買えるなら買いたかった。
人形の様な可愛い服を着てみたい。
でも着たら落ち込むのだろう。

着てみた所で鏡に映るのは私で喪女で、彼女ではない。
そもそも私に合うサイズなのかも分からない。

ネットで見るとセールの品物だってどれも一万円以上する。
この一着で何日生きれるだろう。何冊漫画を買えるのだろう。
そう思うと購入出来なかった。

私に着る資格も価値も財力も何も無いのだ。

あの空間に行けば私も可愛くなれるかと思った。
実際はただ現実を突き付けられただけだった。


帰りにブックオフに寄った。
彼女が好きな嶽本野ばらのミシンとロリヰタを買った。
新品は買えないが古本なら買える。

小説を読むのなんて何年振りだろうか。
購入はもっと記憶にない。

彼女は本を読む事が好きな様だか、読書は生活にゆとりが無いと出来ない趣味だと思う。
本を買う財力、読む時間と体力、それから基礎知識や教養。
またしても私にはない物だ。

彼女の見た目になる事は難しい。
でも中身になら近付きやすいと思う。

今日は1日、彼女に近い日を過ごせたと思う。

より近付いて行く為に、まずはこの2冊を読む事から始めたい。

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