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ドイツ詩を訳してみる

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2019年11月の記事一覧

リルケ「秋の日」(ドイツ詩を訳してみる 23)

Rainer Maria Rilke, Herbsttag (1902)

主よ、実に良い夏でした。今こそ
あなたの影を日時計の上に落とし
草原に風を放ってください。

最後の果実らには 満ちよと命じ
あと二日だけうららかな日を恵み
一気に熟させ たわわな葡萄の房に
最後の甘い汁を注ぎ込むのです。

いま家のない者は 永遠に建てないまま、
いま孤独な者は 永く孤独なままだろう
夜も眠れず 本を読み

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リルケ「豹」(ドイツ詩を訳してみる 22)

Rainer Maria Rilke, Der Panther (1902)

『新詩集』(Neue Gedichte, 1907) 所収。「パリ植物園にて」という副題がついています。

その目は柵の行き来に倦み果て
もはや何物をも捉えない。
あたかも目の前に千の柵があり
千の柵の先に世界はないかのよう。

力強くもしなやかな足取りが
のっそりと小さな円を描く。
あたかも弱った大きな意志の周りを

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ノヴァーリス「もはや数字と図形が…」(ドイツ詩を訳してみる 21)

Novalis, Wenn nicht mehr Zahlen und Figuren (1800)

もはや数字と図形が
すべての生物の鍵ではなくなったら、
歌う者や口づけする者が
博識な学者よりも賢くなったら、
世界が自由な生命へと戻り
世界が世界へと還ったら、
そして 光と影が再び結ばれて
真の明るさとなって輝き、
人々がおとぎ話や詩の中に
世界の本当の歴史を認めるようになったら、
そのとき

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