西原真奈美

最新詩集「朔のすみか」初の写真詩集『私の中の五線譜』ーたいおん・体温・体音ー /詩誌『…

西原真奈美

最新詩集「朔のすみか」初の写真詩集『私の中の五線譜』ーたいおん・体温・体音ー /詩誌『クリムゾン』/ 「詩と思想」 2017 現代詩の新鋭/ 手作り詩集に「きらうた」「とわうた」「まなうら」

マガジン

  • 放置していた、庭。

    放置していた、庭 があったのでした。 少しずつこちらに 詩をアップしてゆきます。 宜しくお願いします。

  • 水底の街

    詩やエッセイ、感想や雑文、Twitterの中では書き込めなかったことを、丁寧に書いてゆきたいと思います。 よろしくお願いいたします。

記事一覧

小豆を煮る日

あなたは幼い頃から辛くなると、むっつりと黙りこんで塞ぐから、泣かなくても、しゃべらなくても色んな(もう、無理)が、胸いっぱい、喉元まで込み上げていると分かる。 そ…

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痛みを傷みとして

今夜は 吉原幸子を読む。 15歳で出会い、以来ずっと好きで。 この頃読むと、少し(通過) したのかなと思う。 のたうち回るような日々があったことへのオマージュ やっと…

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サイレント・レイン

氷雨の朝、私は新宿にいた。 大好きな詩友に手を振り、そこからの予定も決まらないまま、もう一泊分の荷物の入った鞄をコロコロと曳きながら、ホテルを後にした。 悴む手…

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木守りの神

朝、猫の(うた)と一緒に家中の窓を開ける。外を知らないうたが飽きることなく外を眺める姿が好きで。存分に眺めるんだよ、と思う。 前の猫の(きら)が外で食べた異物で…

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父としっぽ

  父としっぽ      家畜の往診を終えると、飲み始めてしまう父が、不意に大学時代の友人の卒論が「どんなしっぽの猫もしっぽの骨の数は同じ」ってテーマだったと話…

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息つぎ

出来ると思っている。夢の中では何度でも出来たから。 水の中で呼吸をすること。 (出来るから、出来るだけゆっくりね。)と言い聞かせてから、襞をたたむように胸懐を開い…

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noteの再開かブログを開設したいと思っていました。きっかけは詩と思想10月号にに書いたエッセイ。初めてのエッセイに2ヶ月間…

ゆっくりとですが続けてゆきたいと思います。アナログなのでしばらくは不手際もあると思いますが、よろしくお願いいたします。

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noteはじめました。
140文字に入り切れない詩を
時折、綴りたいと思います。
よろしくです。

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小豆を煮る日

あなたは幼い頃から辛くなると、むっつりと黙りこんで塞ぐから、泣かなくても、しゃべらなくても色んな(もう、無理)が、胸いっぱい、喉元まで込み上げていると分かる。

そんなあなたを見送った朝は、決まって小さな乾物入れにしまってある、小豆の袋を取り出し封を切った。鍋に一気に小豆を広げると、あなたの足取りとは程遠い、乾いた音で勢い良く飛び散るのだけど、辛いのはここから。

洗い始めると、浮き上がってくる小

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痛みを傷みとして

今夜は

吉原幸子を読む。
15歳で出会い、以来ずっと好きで。
この頃読むと、少し(通過) したのかなと思う。

のたうち回るような日々があったことへのオマージュ

やっと、ここまで。

詩集『夏の墓』より「雨」

こころなんて 内蔵さ
内蔵のいたむやうに いたむのさ

の痛みを傷みとして
ロックのグラスと読める今も幸せだ。

長い時を超えて
今も私に詩があることも。

この函入りの装丁の、圧巻

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サイレント・レイン

氷雨の朝、私は新宿にいた。

大好きな詩友に手を振り、そこからの予定も決まらないまま、もう一泊分の荷物の入った鞄をコロコロと曳きながら、ホテルを後にした。

悴む手、右手は鞄、左手は傘で、息を吐きかけることも出来ず、とりあえず紀伊国屋書店まで行こうと歩き出した。

大通りに出ると、そこはいきなり異界だった。東京マラソンの為に、交通規制の布かれた大都会は車一台なかった。雨のアスファルトがすべての音を

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木守りの神

朝、猫の(うた)と一緒に家中の窓を開ける。外を知らないうたが飽きることなく外を眺める姿が好きで。存分に眺めるんだよ、と思う。

前の猫の(きら)が外で食べた異物でひどく体を壊し、7年で別れた辛さと、里親さんからの約束で(うた)は外を知らない。

柿が色づく頃になると、小さなキッチンの窓から見える柿畑が本当に美しい。素朴で飾り気のない柿が、紅葉した大きな葉っぱにちっとも負けない元気さで、たわわに実っ

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父としっぽ

  父としっぽ   

 
家畜の往診を終えると、飲み始めてしまう父が、不意に大学時代の友人の卒論が「どんなしっぽの猫もしっぽの骨の数は同じ」ってテーマだったと話し始めた。
「それって一匹一匹触って数えたの?」と尋ねた私に、笑って「そうだろうなあ。」と答えていた。

何故かレントゲンで確かめるなどということは浮かばなかった。猫と言えば触って撫でてめでるしかなかったから。
(またまた酔った父の言うこ

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息つぎ

出来ると思っている。夢の中では何度でも出来たから。

水の中で呼吸をすること。

(出来るから、出来るだけゆっくりね。)と言い聞かせてから、襞をたたむように胸懐を開いて、息つぎをする。

出来るのだ、いつでも。

私の中に水底の街がある。

それはジオラマではなく、ほんとうの。

そこからのこと、そこでのこと、そこから考えていることを

書いてゆきたいと思っています。

2018年11月。note

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noteはじめました。
140文字に入り切れない詩を
時折、綴りたいと思います。
よろしくです。