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アメリカ版?!「〇〇のように~」「✕✕のような~」

ひょんなことから、日本語と英語の比喩の違いが気になり始めました。例えば、すごーく固いものを表現するとき、日本語では「石のように固い」と言います。英語でも「Rock hard」と言い、つまり「岩のように固い」ということに。『石/岩=固い』というのは万国共通のイメージのようです。でも、アメリカでは(英語では?)、固いものを表現する比喩に、Hockey puck(アイスホッケーのパック)が使われることがあります。私の過去9年のアメリカ生活経験上では、テレビのクッキング/ベーキング番組で審査員が使っていることが多い気がするので、食べ物についての批評に用いられる表現なのかもしれません。例えば「あなたが作ったカップケーキね、アイシングはとてもおいしいし、見た目もとってキュート。でもケーキ部分は、まるでHockey puck(のように固い)。レシピを見直してみたほうがいいかもね」のようになります。まぁ、概してマイナス批評に登場する比喩ですね。アメリカ人の間では『Hockey puck=固い』という周知の事実があるということになりますが、「石のように固い」と言われるよりも、なんだかイタイ印象を受けるのは私だけでしょうか。アイスホッケー自体、あまりなじみがない日本では、まず聞かれない比喩でしょう。一方アメリカでは、Hockeyと言ったらアイスホッケーのことで、三大スポーツの野球、バスケ、アメフトに続く人気スポーツと言ってもいいのではないでしょうか。これは面白いものだな、と思い、うちの旦那さんの知恵も借りながら、アメリカならではの比喩を探してみることにしました。

まずは、最近私が気になっていた表現。旦那さん曰く、みんながみんな言うわけではないとのことですので、その点ご了承くださいませ。小学生時代からバスケに熱中していた私は、今でもバスケが好きです。さすがに自分でプレイすることはなくなりましたが、アメリカで、本場NBAの試合を日常生活の一環としてテレビ観戦できる、または、実際にアリーナに足を運んで生のプレイを見ることもできる、という贅沢。アメリカでは、プロスポーツは地域に強く根付いていて、地元チームの試合は、大体の場合、無条件でテレビ観戦することができます。そうすることによって、より多くの地元ファンを獲得するというのが狙いですね。私たちが現在暮らすサクラメントには、Sacramento KingsというNBAチームがあります。これが、長~い、長~い低迷時代をさまよっているチームでして。9年前に私が日本から移り住んだ、私にとっての最初のアメリカの地はベイエリアでした。旦那さんの生まれも育ちもベイエリア。そのベイエリアの地元チームといえば、日本でも大人気のStephen Curryが所属するGolden State Warriors。40年ぶりの優勝をした頃、私たちはまだベイエリアに住んでいましたので、当然のように私もWarriorsファンでした。あ、今でも好きですよ。それがですね、サクラメントへ引っ越して来たら、Warriors領域ではないということで、Warriorsの試合が見られないのです。最初はかなりイライラし、ラジオで試合を聞いたりして頑張っていたのですが、次第にいつでも見られるKingsの試合を見るようになりました。そうこうしているうちに、気づけばKingsに愛着が沸いてきて、頑張っているのになぜか勝てない、でも頑張っている…という部分さえ、面白みに思えてきたのです。NBAの思惑通り、まさかのお鞍替え。そうしてWarriorsファンからKingsファンへと変身した私。ブレずにWarriorsファンを貫いている旦那さんの非難にもめげずに、Kingsを応援している毎日です。さて、そのKingsのスター選手が、De'Aaron Fox。持ち前のスピードでゴールへ切り込んで得点するのが、彼の得意技。NBA選手としては身長も低いし、ひょろひょっとしているのにもかかわらず、長い手と柔軟さでスルスルっとゴールまで到達します。そして、そんなFoxの姿を、チーム専属のアナウンサーは、大興奮とともにこんな風に実況します。「Foxは、間違いなくJelly(ゼリー)になった!もしくはJam(ジャム)だ!」アナウンサーの腕の見せ所なのでしょうが、独特でありながらも、言いたいことがユーモアを交えて伝わる感じがアメリカっぽい。ちなみに、日本のゼリーエースと同じように、粉末にお湯と水を注いで作るゼリーのアメリカの定番中の定番商品は、Jell-O(ジェロ)というものになります。一般的に、プルルンとした質感を表現するのに、このJell-Oがよーく使われます。例えば「ブラウニーの焼き加減は、型を揺らしてみて、Jell-Oみたいにプルプル(jiggle)したらOK」と教わったことがありましたね。質感は多少異なりますが、使い方と印象としては、日本の「お餅みたーい」に似た感じでしょうか。日本では誰もがお餅を知っているから「お餅みたーい」と言うことができ、アメリカでは誰もがJell-Oを知っているから「Jell-Oみたーい」となるわけです。

ちなみに、柔らかわいものの例えによく使われるのはPillow。枕です。マシュマロもありますね。日本の定番は何でしょうか。また、柔らかくてすべすべしたものは、Baby's butt、赤ちゃんのおしり。場所問わず、赤ちゃんのおしりは、柔らかくてすべすべ、ということですね。納得。

あとは、これもベーカリーでの会話によく登場するものですが、人工的な香味料が強いお菓子の感想は「Candle(ロウソク)を食べているみたい」となるようです。実際にキャンドルを食べた経験があってのことではないでしょうが。日本語の「トイレの芳香剤みたい」に近い感じでしょうかね。

もうひとつ、こちらもベーカリー会話で覚えたものですが、何かをじっと眺めていることをWatch like a hawkと言います。鷹のように見ている、ということです。例えば、お菓子やパンのミキシングをしているときに「鷹のようにじっと見ていても仕方ないから、その間に〇〇をしてね」みたいな感じでしょうかね。鷹というところにアメリカっぽさを感じるのは、私だけ?

動物つながりでアメリカっぽいものをもうひとつ。日に焼けて肌が真っ赤になった状態をLobster(ロブスター)と言います。火が通ると赤くなるロブスターということですね。日本語の「ゆでだこ」の洋風版、かな。

「〇〇のように~」「✕✕のような~」みたいに、代表選手として比喩に使われるようになるには、かなり高い支持率が必要なはずです。みんなが当たり前に知っているからこそ、成り立つ表現ですからね。そして当然のことながら、その“みんな”が、日本の“みんな”なのか、アメリカの“みんな”なのかによって、代表選手も変わってくる。それだけのことなのですが、こんなところにも文化の違い、生活の違いが出るのだなぁ、と思うとなんだか楽しいものです。


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