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アメリカのTofu

アメリカにおけるTofuの立ち位置

日本の食卓の定番である豆腐。ヴィーガン、グルテンフリーはもちろんKETO(ケトン食)などが注目される昨今、アメリカにおいても、その注目度は急上昇のように感じます。とはいえ、アメリカで、Tofuが普通に食卓にあがる家庭はまずないでしょうね。
Tofuが重宝される場のひとつは、間違いなくベーカリー。私が働いているベーカリーでも、Tofuはヴィーガンチョコレートムースの主材料。簡単に言ってしまえば、豆腐とライスシロップ、溶かしたチョコレートを混ぜれば、ヴィーガンチョコレートムースの出来上がり。見た目も食感も、豆腐の存在はゼロ。普通においしいですよ。
でも、そんなベーカリースタッフでも、Tofuが豆腐という日本の食材であるということを知らないことが多く、私が「豆腐は日本語だよ」という話をすると、単純に「へぇ~」の世界になるものです。

今思い返してみるとですが、比較的アジア人人口が多いベイエリアでは「Tofu」が名前に入ったレストランもよく見かけた気がします。チゲをウリにした韓国料理レストランとかだったかな。アジア人が少ないサクラメントエリアではまず見かけないですね。

アメリカで、なぜか人気の豆腐料理

アメリカの日本食レストランで、なぜかよく見かける豆腐料理があります。何だと思いますか?
「Agedashidofu」そう、揚げ出し豆腐なんです。アメリカ人好みの揚げ物だからなのか、豆腐にしては味がついているからなのか、不思議と需要がある様子の揚げ出し豆腐。
もう何年も前の話になりますが、以前働いていたベーカリーのオーナーのKarenさんが、私の誕生日に「ここのAgedashidofuがすっごくおいしいから食べておいで!」と、ちょっとおしゃれな日本食レストランのギフトカードをくれたことがありました。これといって特別ということはありませんでしたが、普通においしい揚げ出し豆腐でしたよ。この「普通においしい」というのは、アメリカにおいては、かなり重要(笑)。
調理場を覗いてみると、日本人(少なくとも東アジア人)とお見受けするおじいちゃんの姿が見えましたからね。基本的にアメリカンとジャパニーズのフュージョン(融合)感が強いメニューの中において、普通に日本風の揚げ出し豆腐であったこと、また、その普通の揚げ出し豆腐の大ファンだったKarenさんはさすがだな、なんて思ったものでした。

ところがです。
数日前に日本人の友達と日本食レストランへ行く機会があり、いくつかのお寿司に加えて「Agedashidofu」を注文してみました。出てきたのは、太目のキャベツの細切りの上に、薄く、そしてなぜか三角にカットされた揚げ出し豆腐(?)の姿… おぉ、そうなっちゃうのねぇ。しかも、ツユがかかっているというより、キャベツの下に隠れたタレを発見という… 食べてみると、これがなかなか脂っぽい。単純に豆腐に対する衣の割合が多いのか、揚げ油の温度の問題か。以前の揚げ出し豆腐が全然普通だったので、それをイメージして注文したのですが、なるほど「Agedashidofu」はこういうふうになってしまうことがあるのですね。ちなみに、アメリカ生活が私より断然に長い友達が注文したのはカマ。出てくるまでに時間はかかるものの、おかしなことになりようがないという経験から、日本食レストランに行くと決まって注文するそうです。さすがですね。勉強になりました~

スーパーに並ぶTofuの数々

さすがに冷奴を食べるという人の話は聞いたことがありませんが、今やアメリカのスーパーでも、お豆腐はレギュラー商品です。日本と比べると値段は割高なので、気軽な感覚で買える食材ということではないものの、日本人としてはやっぱり欲しいところ。という訳で、値段も見比べつつ、今までいろいろなTofuに挑戦してきた私です。でも、値段以上に気を付けるべき点は、その種類。日本で豆腐というと、木綿と絹ごしが大きな分類になりますよね。ちなみに私は、断然絹ごし派。正直、子供の頃は、お豆腐は嫌いとは言わないまでも、好きなものではありませんでした。お味噌汁のお豆腐ならまだしも、冷奴の良さは全く分かりませんでしたね。それが、中学の修学旅行で、京都の南禅寺の湯豆腐を食べて衝撃を受けたのです。なんじゃ、これ!うまっ!!って。

さて、アメリカのTofuに戻ります。アメリカのTofuには、Extra firm(超硬め)、Firm(硬め)、Soft(柔らかめ)、そしてSilk(絹)という分類があります。揚げ出し豆腐はFirmで作ったように思いますが、それを除いてはFirm、またはExtra firmは購入しません。ちなみに、Extra firmがいかなるものかというと…あれは豆腐ではありませんね(笑)。以前働いていたベーカリーのサンドイッチメニューのひとつのバンミー(ベトナムのサンドイッチ)に入っていたのがExtra firmの豆腐スライスでした。ランチ休憩に、熟れ残りのサンドイッチやサラダは食べてよいことになっていましたが、長く働いていると、どうしても同じメニューの繰り返しに。多少なりとも飽きがくるなか、バンミーが新商品として登場したときはワクワクしたものです。バンミーというだけあって、味わいもアジアっぽいし、野菜もたくさん。そういえばベジタリアンって言っていたな。ん?なんだこの四角いものは?チーズ?食べたことないけど「からすみ」ってやつ?なんだか分からないけどおいしいなぁ。なーんて思いながら食べたものでした。翌日、キッチンスタッフに「あのバンミーに入っている四角いものは何?」と聞いてみると、あたりまえのように「あぁ、Tofuのことね」だって!びっくりでしたね。そう言われれば、味わい的にそういう気がしないではないものの、とにかくTofuとは思えない硬さでしたから。それ以来、変わったのは私の意識だけなのですが、なぜかTofuバンミーからは遠ざかってしまいました。恐るべしExtra firmのTofu。

スーパーの豆腐売り場も、ブランドによって、または、お店の仕入れ方によっては、FirmとSoftしか見当たらないなんてこともあります。そんな状況に遭遇した先日、つい「Silk」という存在自体を忘れてあたりまえのようにSoftを購入して帰宅。後から気づいて、いくらかの不安はあったものの、そのSoftのTofuで麻婆豆腐を作ることにしました。封を切って「あぁ、やっぱり」と。これのどこがSoftなんですかぁ?ってな具合。歯ごたえ多めの麻婆豆腐ができました。

では、Silkなら無難かというと、Silkで困った経験もありますよ。最近、すっかり見かけなくなってしまったのですが、日本の豆腐に限りなく近い感じで、好んで購入していたTofuがありました。サイズ的にも、値段的にも、パッケージ的にも馴染みのあるTofu。もちろんSilkです。あの日も麻婆豆腐だったのですが、開封するとSilkがSuper Extra silk(超超絹)。型から取り出すことはもちろん、切ることもままならぬまま、とにかく投入して、できる限りつぶさないようにしてみたものの、出来上がったのはスープでしたね。それを見て「どーしちゃったの?!」とびっくりの旦那さん。
にがりが少なかったのか、どーしちゃったのか、とにかくSilkが過ぎたTofuでした。
まぁ、ここは日本ではないですからね。豆腐に限らず、ありがちといえばありがちなことのひとつです。

豆腐ってすごい! 

数ヶ月前にベーカリーで発注ミスがあり、Tofuを2ケースほどただでもらって帰ってきたことがありました。今や私が働くベーカリーでは、Tofuが日本食であることは周知の事実なので、発注ミスが判明した時点で、誰よりも先に私に「いる?」という声がかかりまして。賞味期限が妙に長いという不思議を除いては、大きさ的にもほどよい、そしてSilkで、MorinagaのTofu。どことなく甘みが強目で、冷奴に…という感じではありませんでしたが、片栗粉を使ってお好み焼き風にしたり、チヂミ風にしたり、きな粉餅風にしたり、日本でも経験したことがない豆腐生活を満喫しました。豆腐を食べることで体が喜んでいる実感もあり、調理も簡単、そして、只(笑)。
お豆腐ってすごい!と改めて認め直したアメリカ生活なのでありました~。



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