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家庭医(ホームドクター)

日経新聞の社説に家庭医のことが記載されていました。海外ではホームドクターといいますが、アメリカ、欧州では一般的な制度になっています。
ホームドクター制を導入するにはいろいろなハードルがあると思いますが、アメリカ、欧州での経験から患者にとって良い面・悪い面を書いてみます。

まず、家庭医(ホームドクター)の制度はどのようなものかは、社説にも書いてありますが、実体は次のようになります。

ホームドクターをどこにするかは、自由に決めることができますが、ホームドクター制で大事なことは、どのホームドクターが自分に合っているか、ということです。率直に言えば、ホームドクターの腕前。
アメリカの時も欧州の時も、大家が勧めるホームドクターにしました。病気でなくても、まずは大家と一緒にホームドクターのところに行き、顔合わせをします。

体調が悪いとき、耳が痛い、腹が痛い、首が痛い時には、耳鼻科医、整形外科医、行くのではなく、まずホームドクターに行きます。ホームドクターは予約制で、よほどの緊急時には予約なしでも診察してもらえますが、「明日の10時から」などと予約します。
診療時間は1回20分以上。1人のドクターがあらゆる点から診療します。たとえ風邪だと分かっていても、じっくり診療してくれます。

乾燥肌で皮膚が荒れて夜眠れないぐらい痒い時でも、皮膚科は診療を受け付けてくれません。まずはホームドクターに行って、ホームドクターから皮膚科の専門医を紹介してもらいます。
欧州の時は、ホームドクターが皮膚を診察し、塗り薬などの処方箋を出してくれました。それでも症状が改善しない場合にはホームドクターが専門医を紹介してくれます。ホームドクターは診察内容をレコーダーに吹き込み、それを専門医に送ります。

専門医の予約は1ヶ月以上先のことが多かったので、その間は我慢するしかありませんでした。

専門医によっては、予約が半年先になることもありました。知人のつてで専門医に予約を入れると1ヶ月早まり、5ヶ月先になることもありました。

緊急の場合には、ER(救命救急室 Emergency Room)に救急車で運ばれるか、自分で行きます。例え救急車で運ばれても生命に別状がない場合には、2,3時間は待たされます。欧州の時、足首の酷い捻挫をしてしまい救急車で搬送されましたが、診察まで3時間待たされことがあります。

アメリカの時は腹痛でホームドクターに行きましたが、ホームドクターから精密検査のためにERを勧められ、救急車(有料です)を避けて自分でERに行きました。その時は幸いなことに30分程度で診療してもらいました(結局、入院する羽目になりましたが)。

患者にとって、ホームドクター制はこのような善し悪しがあります。

良い面は、ホームドクターは自分や家族のことを生活面を含めて熟知していますから、診療を受けていて安心感があります。
また、1回の診察でいろいろ診療してくれます。

悪い面は、専門医にたどり着くまでに日数を要することです。耳鼻科、咽喉科など、いつ予約がとれるのだろうと諦念の境地になります。欧州で皮膚が悪くなった時は、ホームドクター⇒専門医⇒専門医で皮膚のサンプルを採取⇒ドイツの専門医でサンプルを精密検査⇒専門医に結果通知⇒ホームドクターで治療・処方、というプロセスが半年かかりました。
(この間、日本の出張し、帰国した翌日に皮膚科に飛び込み、痒み止めののみ薬をと塗り薬をもらい、精密検査の結果を聞く前に治ってしまいました)
このため、医者にかからなくてもいいように、普段から体調面には気をつけるようになりました。

ホームドクター制を導入するには、医薬品制度も整備する必要があると思います。ホームドクター制においては風邪だと分かっている場合には、予約をとってまでホームドクターにいかず、ドラッグストアで風邪薬を購入します。アメリカの風邪薬は、対処療法としては非常に効きます。タイトノールPMという薬は、PMというぐらいですから睡眠効果もあり、夕食時に飲むと、ぐっすり寝て体力が回復しますが、翌日は昼頃までふらふらしていました。
アメリカのお土産として、ドラッグストアで風邪薬を購入していたぐらいでした。

このように、ホームドクター制のもとでは時間の感覚にゆとりが必要になります。患者の利便性・医療財政という観点だけでなく、社会全体が時間に厳しい日本ではホームドクター制は馴染まないかもしれません。



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