マガジンのカバー画像

5
載せた詩はこちらにまとめていきます。
運営しているクリエイター

記事一覧

例えるなら

例えるなら

さながら野生動物のよう

かつ

どこまでも人間らしい

何かを待ったり、
何かを訪ねたりする前に
あたしはどこに行きたいのだったろうか
考える
そして
考える
考える

あなたはどこまでも走っていく

後ろ指さされても走っていく

たまにチラリと不安げに振り返るから

もっと遠くに行くのよ

と私は叫んでやる

恥ずかしそうに笑ってそのまま走っていく

あなたは美しい

だってどこまでも動物だか

もっとみる
舟を漕ぐならば

舟を漕ぐならば

僕たちはどこへ行くのか

帆は小さく
波は高い

床板は軋み
霧が霞む

オールもエンジンも
とうの昔に捨ててきてしまった

ここにあるのは果てのない線と
白く獰猛な起伏

でも僕たちは
漕がねばなるまい

つきまとうものを振り払うすべは

カモメを眺めて泣くことか
魚にキスをすることか
太陽を口一杯に頬張ることか

僕はまだ知らない
そして、知っている

世界には尻尾があるらしい
ここはまだ水槽

もっとみる
家

未だ他人のうちの匂いがして

お邪魔します
の気持ち

ただい


自分の声色に少しの羞恥
思いのほか響いて狼狽

夜は電気を消して
手元だけ橙を灯し
良い酒を、ほんの少し飲む

窓を開け放てば風達の往来

今夜は
キッチンの床や
狭い廊下に横になって眠りたい

(いるならば)ゴキブリや蜘蛛や幽霊が
私の傍らを駆けていくだろう
孤独が散るなら
それはそれで構わない

私はこの家を早く
私の住処に

もっとみる
黒猫

黒猫

街路樹の影が
真っ黒で
ニァアと聞こえた

ああ、
誰かいて
私を呼んでいるのね


耳を塞いでいた
真っ白いイヤホンを外して
影へ歩み寄る

そこには
枯れた葉が2枚
ちらりと落ちているだけで

ニャアも
なにも
なかった

それが
とてもとても
悲しかった

ひとりのかえり

ひとりのうちへの

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

詩人ってすごい職業だと思います。

もっとみる
べきこと

べきこと

誰かから溢れる
べき

耳を塞いでも目から
目を閉じても記憶から

腰の中に
あるいは
肋骨の隙間に
重石を積まれたように
窮屈で仕方がなくて
身をよじらせる

ちがう
あたしには
そんなものは
いらない

若いうちに。
独身のうちに。
元気なうちに。
生きているうちに。

べき
ことなんて
ひとつだって、ない

産声をあげたそのときに
死の香りを

等しく
限りがあることを

匂ってしまった

もっとみる