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渡部有希
2022年11月21日 23:05
さながら野生動物のようかつどこまでも人間らしい何かを待ったり、何かを訪ねたりする前にあたしはどこに行きたいのだったろうか考えるそして考える考えるあなたはどこまでも走っていく後ろ指さされても走っていくたまにチラリと不安げに振り返るからもっと遠くに行くのよと私は叫んでやる恥ずかしそうに笑ってそのまま走っていくあなたは美しいだってどこまでも動物だか
2021年9月2日 00:30
僕たちはどこへ行くのか帆は小さく波は高い床板は軋み霧が霞むオールもエンジンもとうの昔に捨ててきてしまったここにあるのは果てのない線と白く獰猛な起伏でも僕たちは漕がねばなるまいつきまとうものを振り払うすべはカモメを眺めて泣くことか魚にキスをすることか太陽を口一杯に頬張ることか僕はまだ知らないそして、知っている世界には尻尾があるらしいここはまだ水槽
2021年8月19日 23:17
未だ他人のうちの匂いがしてお邪魔しますの気持ちただいま自分の声色に少しの羞恥思いのほか響いて狼狽夜は電気を消して手元だけ橙を灯し良い酒を、ほんの少し飲む窓を開け放てば風達の往来今夜はキッチンの床や狭い廊下に横になって眠りたい(いるならば)ゴキブリや蜘蛛や幽霊が私の傍らを駆けていくだろう孤独が散るならそれはそれで構わない私はこの家を早く私の住処に
2021年5月19日 22:00
街路樹の影が真っ黒でニァアと聞こえたああ、誰かいて私を呼んでいるのねと耳を塞いでいた真っ白いイヤホンを外して影へ歩み寄るそこには枯れた葉が2枚ちらりと落ちているだけでニャアもなにもなかったそれがとてもとても悲しかったひとりのかえりひとりのうちへのーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー詩人ってすごい職業だと思います。己
2021年5月15日 01:41
誰かから溢れるべき耳を塞いでも目から目を閉じても記憶から腰の中にあるいは肋骨の隙間に重石を積まれたように窮屈で仕方がなくて身をよじらせるちがうあたしにはそんなものはいらない若いうちに。独身のうちに。元気なうちに。生きているうちに。べきことなんてひとつだって、ない産声をあげたそのときに死の香りを等しく限りがあることを匂ってしまった