見出し画像

身体の使い方

 介護の分野で「ボディメカニクス」と言うと、何だか専門的なので、あえて「身体の使い方」と使います。
 一応「ボディメカニクス」は簡単に言いすぎてしまうと、「てこの原理を応用して利用者の身体を動かす」ということ。他にも「重心を落とす」「体を近づける」などの注意点があります。

 ただ、ここで僕が言いたいのは「利き手」や「利用者との向き」、「ヘルパーの動き方」である。以前、ヘルパーの講師で基本介護技術を教えていた時に、僕がよく受講生に言っていたのは

「テキストに載っている方法は、あくまでも基本」

 ということ。テキストに載っているのは、写真があっても、モデルとなっているのは、身長差や体重さがほとんどなく、力がありそうなヘルパー役が利用者役をすんなりと行なっていることが多い。
 でも、受講生は色々。小柄な方、大柄な方、背が低い、背が高い・・・など。

 そして、僕は左利きだからなのかもしれないが、テキストやDVDでの方法で行なうと、力の入り具合というか、手や腕の張りというか、バランス(重心)のとり方というか、どうも違和感がある。
 体の向きを変える時の手の位置、ベッドから起き上がる時の利用者との向かい方や手の位置、足の向き、ベッドの左右どち行う方がやりやすいか、左右どちらの足を前の出した方が力が入りやすいか、などである。僕としては、シーツ交換のとき、手のひらを上向きにするか、下向きにするかで悩んだこともある。
 でも、ヘルパーの腰痛、肩の痛みによっても変わるから、無理はしないようにしてくださいね。

 実際の現場ではどうか?

 演習とは違うことがたくさん。
 「生活の場面での介護」ということもあるけれど、ヘルパーが動ける範囲にも制限が出てくる。例えば、利用者によっては「触ってはいけない場所」があったり、家族ではない他人では「狭い場所」があったり、ベッドや家具の位置によっては、ヘルパーのやりやすい体勢にすることができなかったりする。床にゴミや物が多いと足の位置も気をつける。
 そうなると、ヘルパーは気をつける。
 身体をぶつけて家具や壁を壊してしまわないように、
 足元にあるものを不意に踏まないように、蹴飛ばさないように、
 食器を落としたりしないように、
 「〇〇しないように」と思うと、変な力が入ってしまい、痛めてしまうこともある。

 僕としては、利用者の室内環境も気にしてしまいます。要するに、空調やエアコンである。夏で言うと「汗」、冬で言うと「冷え」である。汗が利用者に垂れないように、手が冷たすぎて利用者が不快にならないように注意する。タオル(夏)、カイロ(冬)をうまく使ったり、飲み物を工夫する。

 もちろん、慣れてきたり、自分のやりやすい方法を考え出して実践して工夫していることもある。身体を痛めない方法、利用者に負担にならない方法を考えている。ただ、利用者によっては障害の関係で、ヘルパーの工夫だけでは対処できないこともある。例えば、麻痺のある方では、力が入らないこともあり、この前できていたことができないこともある。
 そういうこともあるから試行錯誤である。一人で考えるのではない。家族での方法、リハビリでの方法、ベテランでの方法などを話し合う。
 「えっ」という方法も出てくることはある。だけど、そこからの発見をする。2つの方法を組み合わせたら良くなるかもしれない。福祉用具、自助具を使ったら負担が減るかもしれない。

 また、実践で変わってくるのは、ヘルパーの動いている「時間」である。完全な休憩時間以外は、動き回っている。「何かあった時にすぐに駆けつけられるように」ということだが、それができない時もある。
 それは「立ち止まっているとき」である。いつも動いているから、一度止まってしまうと、動く時に最初の一歩が出せない時があり、痛めそうになる。座っている時でも、休憩ではない。記録は書きつつ、すぐに立てるように、座り方を工夫している。

 介護職員である以上、どこか痛めるのはよくある。無理な姿勢にはしたくはないけど、痛めない工夫をしたり、痛くなる限界を見つけている。
 じゃあ、筋肉をつければ解決するのか、となりそうだけど、そうでもない。筋肉が付きすぎていても、邪魔になってしまうこともあると感じている。

 必要なのは、自分の身体を知ることだと思います。「知る」ことで、利用者に対する緊張が軽減して、お互いに負担なくできることも増えるかな。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?