宮城 誠

詩を投稿したいと思います。 文字起こしの仕事を少ししています。

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くず野菜 【詩】

ぬか床を作るとき キャベツの葉や大根の皮をはじめに入れます 発酵を促し 乳酸菌を増やします 野菜を入れ替えたりして様子を見ながら 3週間ほどかけて ぬか床を育てます そうして おいしく漬かったきゅうりをかじりながら ふと キャベツの葉を思い出します  今まで捨ててきたものたちにも 役割があると知って くずには くずなりの道があると 誰の記憶にも残りませんようにと 願っている私も こうやって思い出してもらえるなら いいかもしれないと さて 私には何ができるだろうかと

    • ぺんぺん草 【詩】

      ケイちゃんと行った いつもの公園 草はいっぱい生えていて ひとつ私にくださいな ぺんぺん草をいただいて 実をそうっと引っぱるの 茎を持ってくるくる回して 一緒に聞いた軽い音 顔寄せ合った小さな音 ゆうやけこやけで帰り道 ポッケの中にぺんぺん草 音はもうならなくて しなびた草から見えるのは 錆びた遊具と日の光 青い匂いとケイちゃんの頬

      • 横顔 【詩】

        優しい風を浴びて 目を閉じる 天使と口づけしてるような その姿に 嫉妬深い僕は 慌てて君の手を握る こちらを見る君に 理由は言えない とりあえず 手を離さないことは決めた

        • 暖かい冬の日に 【詩】

          暖かい冬の日に 梅の花が咲いていた 赤と白の2色の花は 道行く人の足を止め わずかに口元緩ませた 脇のほうに落ちている 細い2本の枯れ枝が 雪だるまの腕だって たった1人も気付いていない 日の当たらない道の端 だからこれからその腕を 拾って弔うことにした 近付いたときに赤い実蹴った 暖かい冬の日に

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        くず野菜 【詩】

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          9本

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          足りない 【詩】

          食品棚を漁ると 何かが足りない いつも置いていたのに 補充するのを忘れたようで 何を置いていたのか 思い出せないまま 日常は困らず 何かが足りない記憶は残る その棚を見るたびに 足りないと思うので 他の物を入れるのも 何だかどうにも気が引けて 何かを置いていた その過去を置いたまま きょうも棚の中は 足りないまま

          足りない 【詩】

          出す 【詩】

          トイレに入り 大きく息を吐く 便器に座り 排泄する また一つ 小さなため息 そして一つ ひどい言葉を吐く 人前では絶対に 言わない言葉を吐く 出たもの全て 水に流す ドアを開くとき 少し軽くなっている 苦しいものを 受け止める準備 新しいものを 取り入れる準備 循環させて 私を保つために

          出す 【詩】

          小さな部屋の小さな願い 【詩】

          食べ過ぎたと言える日が 幸せなことだと気付いた日 あちらでは誰が偉いか ケンカをしている こたつでうたた寝する時間が 貴重なんだと気付いた日 こちらでは正義のヒーローたちが 声を荒げている 聞きたい声は台風に巻き込まれて いつも遠く彼方 そしてちっぽけな私は こもった熱を握りしめ笑う 隣の人の話を聞いて 子どもの頭をゆっくりなでる 私のちっぽけな行いが 子どもの友達のおじいさんの 親戚のご近所さんの仕事先の その先のその先のあなたに 届くように願いながら

          小さな部屋の小さな願い 【詩】

          かゆみ 【詩】

          かゆいかゆい 背中がかゆい 真ん中より少し上 手は届くけどかきにくい かゆいかゆい 目がかゆい 花粉もPM2.5も 私にゃ刺激が強すぎる かゆいかゆい 耳がかゆい 綿棒の先の奥がかゆい 引きちぎって取り出したい かゆいかゆい 心臓がかゆい 過去の過ちよみがえり 血が出るほどにかきむしりたい かゆいかゆい 体がかゆい かゆいかゆい…

          かゆみ 【詩】

          ピアス 【詩】

          あの人の真似をして ピアスを開けた 左耳だけ 体は拒否していたけれど 風を切って歩いた 左耳だけあの人と一緒 だけど外さないといけなくて ふさがってしまった おそろいの穴 あの人には近づけなかった 残ったのは 左耳の小さなしこり 次は誰の真似をしよう?

          ピアス 【詩】

          枯れ木 【詩】

          音も立てずに葉を落とし 茶色いじゅうたんひいた後 枯れ木の枝の曲線に 凍てつく冬の美しさを知る 白い息をそっとかければ 綿の花が咲いたよう 春に花をつけるまで 少し私と遊びましょう

          枯れ木 【詩】

          ポケットの中に 【詩】

          ポケットの中にどんぐり これはいつかの招待状 とっておきの秘密基地 見せてもらうはずだった ポケットの中に空袋 これはいつかのおまけの飴 迷って選んだソーダ味 消える最後も甘かった ポケットの中にメモ用紙 これは過去の走り書き 忘れたくない言葉たち 折り畳まれて待ちぼうけ

          ポケットの中に 【詩】

          信頼の言葉 【詩】

          あなただけに言える言葉 他の人には使わない だって私は大人ですから そして人の心は見えないから 長い付き合いのあなただから 私をからかうあなただから 大げさに怒ったふりをして 大嫌いって言えるのだ そしたらきっとあなたのことだ 笑って抱き寄せてくれるから

          信頼の言葉 【詩】

          甘い部屋 【詩】

          自分で選んだ部屋には 毒が満ちていた 甘く柔らかで 透明な毒 こんなに中毒性があるなんて 知らなかったから 当たり前に吸い込んだ 心地よくて息苦しい部屋 わずかに開けた窓から風 空気は冷たく尖っていて 思わず鼻から深呼吸 細胞が眠っていたことに気付く カーテンが美しく踊って 私をあちら側へ誘う もう一度やってみようか つらくて楽しい場所へ

          甘い部屋 【詩】

          まばたき 【詩】

          私が初めて目にしたものは 何だったろう 病院の白い天井か 哺乳瓶の乳首なのか それとも母の顔なのかな 私はこれからあと何回 まぶたのシャッターを切るだろう その内覚えられる量なんて どうせほんのわずかだから 好きなものだけ見たいけど 私が最後に目にするものは 何だろう 病院の白い天井か つながれた点滴のボトルなのか それとも疲れた医者の顔かな できればあなたの顔がいい なんてわがまま言ってみる そして困った顔したあなたのことを 忘れぬようにまばたきするのだ

          まばたき 【詩】

          スクラッチアート 【詩】

          手にした紙は 墨をこぼしたような黒色 私のスタートはここから 少しずつけずっていこう どんな色が見えるかな 痛みに顔をしかめながら 黒色に隠れていた色たち 新しい夢を見よう もう息をひそめなくていいんだよ けずりかすに残る思い出 早く別れたいような だけど名残惜しいような どんな絵になってもいい それでも見たい そう思えるようになったんだ

          スクラッチアート 【詩】

          水滴の行方 【詩】

          マンションに着いて 傘を閉じる 石突きから雨が流れる 軽く振って水を切る それでも落ちない雨たちは 朱に交わりたくない 水滴たち そのまま傘立てに差し込むと 手の甲に水滴が乗ってきた 扉を開けて靴を脱ぐ間も 落ちないように必死である 手を洗おうと流水に近付けると 腕をつたって肩の上まで登ってきた どうしても朱に交わりたくない 水滴たち 横目で気にしつつヒーターの前へ 温かいお茶も両手で持ったら 湯気に興味津々の 水滴たち 全身が温まった頃 水滴たちは消えていた 明日

          水滴の行方 【詩】