三上義一

数年前あるLGBTQの方から原稿を渡され電子出版したのが『ワインとヌーディストビーチ』…

三上義一

数年前あるLGBTQの方から原稿を渡され電子出版したのが『ワインとヌーディストビーチ』今回結末以外、noteに無料公開します。スペインへの旅とある「愛」の物語。「生きづらさ」を感じている全ての人に捧げます。是非イントロから読んで下さい。ワインを片手に!写真はiphone。

最近の記事

エンディング

 前章まで読んでいただき、ありがとうございます。 面白かったですか?  小説のエンディングは、以下になります。  電子書籍の23章からの26章が続きのエンティングとなります。Amazonだけでなく、他の電子書店でも販売中です。  小説のマンガ化、アニメ化、書籍化(紙)、映像化など熱烈大歓迎です。(スペインではなく、日本国内のワイン探しの旅に変更することも可)  この日本で「生き辛さ」を感じている方々に是非読んでいただきたいです。そして「Life's a beach」、「他

    • 二刀流の挫折

      (19)月子さんとノブちゃんへ  数日間メールしないですみませんでした。毎日何をしているんだと聞かれるでしょう。日課は変わりませんが、二人に捧げるワイン探しには限界を感じてきました。毎日、毎日、スーパーやワイン専門店に出かけても結果は同じです。  スーパーが大きくなればなるほど、スペイン全土のワインを揃えているばかりか、イタリアやフランスなど他のヨーロッパ諸国のワインや、チリや南アフリカなどのワールドワインも置いています。この国のスーパーは日本と比べるとかなり大きく、なか

      • ロングバケの終わり

        (18)月子さんとノブちゃんへ  トーマスが去ってからの日課は、まさに長期のバカンスを楽しむヨーロッパ人の休暇のようです。人生初めてのロングバケでした。  島に来てまだ2週間だというのに、すっかりスペイン人に変身してしまったのです。たぶん日本人よりもスペイン人の生活のほうが、自分の気質に合っているに違いない。なにしろ昼寝をしてまったく罪悪感を感じないというのが至福の喜びです。  というよりは、本当の自分、「本当の自分の色」でいられることが幸せなのでしょう。トーマスと短い恋愛

        • (17) 二刀流 その2 

          ノブちゃんへ (CC月子さん)  ノブちゃんには、月子さんのことを説明しなければならないでしょうね。ノブちゃんにも正直に話したいのです。これまでまったく話せなかった分、自分の気持ちを素直に書きたいと思います。  あなたも知っているように、彼女は自分の自宅近くのイタリアワインとチーズの専門店に勤めているソムリエでした。月に1回はテーマ別に試飲会が開催され、時間があれば参加していました。  ある晩、試飲会が終わり、数人でワインバーに行った後、たぶんクリスマスシーズンだったせい

        エンディング

          二刀流 その1 

          (16)月子さんへ (CC ノブちゃん)  バイセクシャルの人と出会うのは、初めての経験でした。それまでゲイやレズビアンの人と会ったことはありましたが、男でも女でも両性が恋愛とセックスの対象だという人と出会ったことがありませんでした。ノブちゃんが初めてです。たぶんノブちゃんがバイセクシャルだから、好きになったのかもしれません。  あなたも知っての通り、ノブちゃんは中肉中背で中・高ではサッカー選手だったのでかなりの筋肉質です。カッコイイ男、イケメンです。彼女がいないというの

          二刀流 その1 

          初恋

          (15)月子さんへ (CC ノブちゃん)  ノブちゃんと会ったのは約5年前です。彼が経営している店が会社の近くにあり、ランチをよく食べに行きました。週に1回は行くので、通ううちに自然と挨拶するようになり、たわいない会話をするようになりました。それが一変するのは、3年半以上がたってからです。ある日、電車のホームでかち合い目線が交錯しました。しかし、いつもの彼とはどこか違うのです。自分を見る目がどこか違っていた。いつもの営業スマイルもトークもどこかに消え、ただ自分を見つめてい

          楽園もパーフェクトじゃなかった

          14)月子さんとノブちゃんへ  トーマスの提案でホステルを移りました。別々の部屋に一人ずつ泊まるより、二人で1部屋に宿泊したほうが安くなるというのです。調べてみたところ、事実だったので近隣のホステルに移りました。奇妙な同棲生活の始まりです。  しかし、楽園もパーフェクトじゃなかったのです。    アダムとイブが楽園から追放されたように、楽園にはやはり終わりがくるのです。自分の楽園にも来ました。トーマスが去っていったのです。朝起きると、彼の姿はありませんでした。置き手紙が

          楽園もパーフェクトじゃなかった

          汝はなぜスッポンスッポンになるのか

          (13)月子さんとノブちゃんへ  次の日から二人で毎日、一緒に行動するようになりました。朝方は自転車に乗り、あっちや、こっちの村に出かけ、幻のワインを探します。月子さんとノブちゃんが聞いたことも、飲んだこともないワイン、二人が驚くようなワインを探し回るのです。トーマスもワインが好きらしく、探すのを手伝ってくれます。この島はドイツ人観光客で溢れているため、ドイツ語がほとんどの店で通じます。店に入りトーマスがこの近辺にワイン専門店を知らないかと聞いてくれます。いざ、そのような

          汝はなぜスッポンスッポンになるのか

          Life's a nudist beach

          (12)月子さんとノブちゃんへ  あの日、トーマスと初めてヌーディストビーチに行った日、陽が暮れ始めるなり、ビーチに涼しい風が吹き出しました。オールヌードでは肌寒くなってきます。トーマスと自分は起き上がり、パンツとTシャツを着て、浜辺を歩き始めます。青一色だった空にピンクやロゼ色が走り始めます。  ホステルに帰るなり、部屋でシャワーを浴びます。浜辺の砂とサンオイルを流し落とした後は、今日スーパーで買った2ユーロのロゼのスパークリングワインを試してみます。一緒に飲もうとト

          Life's a nudist beach

          猫には告白できる話、人には話せないこと

          (11)月子さんとノブちゃんへ    何日もメールをしないですみません。ヌーディストビーチでのその後、どうなったのかと疑問に思っているのに違いありません。実は自分もどう説明すればいいのかわかりません。それで何日も悩んでいたのです。説明できないことを、どう説明すればいいのか、と。あたかも何もなかったかのように伝えることもできるでしょう。嘘を書くこともできるはずです。  でも、考えあぐねた末、正直に話すべきだと覚悟を決めました。  とくに月子さんには辛いかもしれません。自分はあ

          猫には告白できる話、人には話せないこと

          ヌーディストビーチは楽しい

          (10)月子さんとノブちゃんへ  ヌーディストビーチでスッポンポンになるなり、トーマスがサンオイルをバッグから取り出し、自分の顔や肩や背中に塗ってくれます。その手は自分の下半身へと徐々に向かい、へそから下へ、通常は非公開な部分にまで及びます。そこにサンオイルが塗られるのは初体験、くすぐったいやら、恥ずかしいやら、自分の意思では制御不能に陥り、段々と固く、大きくなりつつあります。  自分はトーマスの手を制止し、彼からサンオイルを取り上げ、彼の背中に塗り始めます。すると今度は

          ヌーディストビーチは楽しい

          金髪の青年との出逢い

          (9)月子さんとノブちゃんへ  ドアを恐る恐る開けると、一人の青年が立っているではないですか。  見知らぬ青年、金髪、茶色い目、Tシャツに短パン、両手でノートPCを持っています。背の高い青年なのでノートPCが小さく見えます。そしてそのコンピュータを指差しながら何かぼそぼそと訴えています。彼に近寄りコンピュータを覗き込み、キーを2、3触ってみましたが、どうやらコンピュータがフリーズしてしまっているようです。 「No Wi-Fi?」と彼が繰り返し、外国人がよくやるように肩を

          金髪の青年との出逢い

          勝手なワイン探し

          (8)月子さんとノブちゃんへ  まったく残念ですけど、一人でオーシャンビューのホテルに泊まるなんて、自分の懐具合では無理です。そこで星の数が少ないホテルを探しました。海辺では当然、星が4、5個あるのでの中心から少し離れたホテルはないかと歩き回りました。    どうせ寝るだけですから、星のない、流れ星のようなホテルで十分。それで見つけたのが星ひとつのホステルです。「Hostal Bar Restaurant」という看板があり、1階はカウンターがある小綺麗なカフェで、小道に面

          勝手なワイン探し

          Wish You Were Here!

          (6)月子さんとノブちゃんへ  バスが止まりました。どうやら終点に着いたようです。1時間以上走ったでしょうか。運賃を払い、バスを降りると、自分は人盛りを頼りに歩き出します。そこには広い一本の通りがあり、ヨットハーバーに面しています。道の両端にそびえ立つ高いヤシの木が心地よい影をこしらえ、地中海の南国気分を醸し出しています。マヨルカ島で一番高いのは、このヤシの木かもしれません。  ヨットハーバーには小ぶりのヨットが停泊していて、穏やかな朝日に輝いています。その横には砂浜の

          Wish You Were Here!

          地球はこんなに美しかったのか!

          (5)月子さんとノブちゃんへ  疲れていたのか、荷物が見つかってほっとしたのか、鉄製でかなり堅いにもかかわらず、ベンチの上でもぐっすりと眠れました。目が覚めると辺りはすでに明るく、柔らかい朝日が新鮮でした。空港のトイレで歯を磨き、顔を洗いました。  さて、これからどこへ行こう。  空港の旅行案内カウンターで無料の地図を見つけました。マヨルカ島は四角形を斜めにしたような形をしていて、地図にはいくつものの名が書かれています。空港はパルマ・デ・マヨルカというこの島最大の都市

          地球はこんなに美しかったのか!

          (4)会社やめてどうするんだ!              あるサラリーマンの Long Vacation

            空港の自動ドアをくぐると、真夜中のそよ風が新鮮で爽やか。風はどこか生暖かいが、20時間以上も機内にいた人間にとっては気持ちがいいです。全身が風に洗われるような感覚です。軽く深呼吸してから、どことなく歩き出します。空港の周辺は高いヤシの木々が一列に立ち並び、いかにも地中海の島らしい光景が広がっています。しばらく歩き、空港の灯りがぼんやりと差し込むベンチに横になりました。  そこから夜空を眺めると、不思議な感動が体の底から沸き起こってきます。これからどこに行くのか、これか

          (4)会社やめてどうするんだ!              あるサラリーマンの Long Vacation