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楽園もパーフェクトじゃなかった
14)月子さんとノブちゃんへ
トーマスの提案でホステルを移りました。別々の部屋に一人ずつ泊まるより、二人で1部屋に宿泊したほうが安くなるというのです。調べてみたところ、事実だったので近隣のホステルに移りました。奇妙な同棲生活の始まりです。
しかし、楽園もパーフェクトじゃなかったのです。
アダムとイブが楽園から追放されたように、楽園にはやはり終わりがくるのです。自分の楽園にも来ました
汝はなぜスッポンスッポンになるのか
(13)月子さんとノブちゃんへ
次の日から二人で毎日、一緒に行動するようになりました。朝方は自転車に乗り、あっちや、こっちの村に出かけ、幻のワインを探します。月子さんとノブちゃんが聞いたことも、飲んだこともないワイン、二人が驚くようなワインを探し回るのです。トーマスもワインが好きらしく、探すのを手伝ってくれます。この島はドイツ人観光客で溢れているため、ドイツ語がほとんどの店で通じます。店に入
Life's a nudist beach
(12)月子さんとノブちゃんへ
あの日、トーマスと初めてヌーディストビーチに行った日、陽が暮れ始めるなり、ビーチに涼しい風が吹き出しました。オールヌードでは肌寒くなってきます。トーマスと自分は起き上がり、パンツとTシャツを着て、浜辺を歩き始めます。青一色だった空にピンクやロゼ色が走り始めます。
ホステルに帰るなり、部屋でシャワーを浴びます。浜辺の砂とサンオイルを流し落とした後は、今日スー
猫には告白できる話、人には話せないこと
(11)月子さんとノブちゃんへ
何日もメールをしないですみません。ヌーディストビーチでのその後、どうなったのかと疑問に思っているのに違いありません。実は自分もどう説明すればいいのかわかりません。それで何日も悩んでいたのです。説明できないことを、どう説明すればいいのか、と。あたかも何もなかったかのように伝えることもできるでしょう。嘘を書くこともできるはずです。
でも、考えあぐねた末、正直に話
ヌーディストビーチは楽しい
(10)月子さんとノブちゃんへ
ヌーディストビーチでスッポンポンになるなり、トーマスがサンオイルをバッグから取り出し、自分の顔や肩や背中に塗ってくれます。その手は自分の下半身へと徐々に向かい、へそから下へ、通常は非公開な部分にまで及びます。そこにサンオイルが塗られるのは初体験、くすぐったいやら、恥ずかしいやら、自分の意思では制御不能に陥り、段々と固く、大きくなりつつあります。
自分はトーマ
金髪の青年との出逢い
(9)月子さんとノブちゃんへ
ドアを恐る恐る開けると、一人の青年が立っているではないですか。
見知らぬ青年、金髪、茶色い目、Tシャツに短パン、両手でノートPCを持っています。背の高い青年なのでノートPCが小さく見えます。そしてそのコンピュータを指差しながら何かぼそぼそと訴えています。彼に近寄りコンピュータを覗き込み、キーを2、3触ってみましたが、どうやらコンピュータがフリーズしてしまってい
Wish You Were Here!
(6)月子さんとノブちゃんへ
バスが止まりました。どうやら終点に着いたようです。1時間以上走ったでしょうか。運賃を払い、バスを降りると、自分は人盛りを頼りに歩き出します。そこには広い一本の通りがあり、ヨットハーバーに面しています。道の両端にそびえ立つ高いヤシの木が心地よい影をこしらえ、地中海の南国気分を醸し出しています。マヨルカ島で一番高いのは、このヤシの木かもしれません。
ヨットハーバ
(4)会社やめてどうするんだ! あるサラリーマンの Long Vacation
空港の自動ドアをくぐると、真夜中のそよ風が新鮮で爽やか。風はどこか生暖かいが、20時間以上も機内にいた人間にとっては気持ちがいいです。全身が風に洗われるような感覚です。軽く深呼吸してから、どことなく歩き出します。空港の周辺は高いヤシの木々が一列に立ち並び、いかにも地中海の島らしい光景が広がっています。しばらく歩き、空港の灯りがぼんやりと差し込むベンチに横になりました。
そこから夜空を眺め