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アマチュア障害福祉概論 ~伴走者の立場から考えてみる~

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専門的に学んだことがないし、研究をしたことがない。 でも障害のある人と一緒に、彼ららしい生活をつくるように約9年間伴走していたわたしが捉える障害福祉の考え方を紹介するコラム。
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記事一覧

第17回「「働けない」ことがこんなにも悔しく、「働く」ことがこんなにも楽しい」

第17回「「働けない」ことがこんなにも悔しく、「働く」ことがこんなにも楽しい」

「悔しいんです」。あるメンバーが泣きながら放った言葉です。障害や病気を療育・治療する目的で三休を一旦離れないといけないかもしれないと電話相談があり、おはなしを聞いていたら彼の思いがどんどんと溢れていきました。

「マルチを張り、苗を植え、水やりをし、さあもうすぐ収穫だ!というときに一緒に働けないなんて・・・悔しいです。一緒に収穫の喜びを分かち合いたかったです」と。彼の悔しい気持ちに触れ、僕も悲しい

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第16回「つくりたい未来が想像できた日」

第16回「つくりたい未来が想像できた日」

本日は小学校4年生と障害をお持ちの方や支援者との交流会がありました。
地域で自分らしく暮らす障害をお持ちの方のおはなしを伺い、感想を後日記入する往々にある一方的な総合授業ではなく、様々な障害をお持ちの方や支援者15名と生徒150名の大交流会をする双方向的な総合授業。生徒にはもちろん、僕にも気付きがありました。

ぼくは支援者という言葉が苦手でした。上下関係が発生しているみたいで、自然ではなく特別な

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第15回「生き様ソングプロジェクト打合せに於ける予想外な回答」

第15回「生き様ソングプロジェクト打合せに於ける予想外な回答」

障害のある方に「生きざま」を中心とした取材を行い、その取材内容と生まれた感情をもとにうたをつくっていく生き様ソングプロジェクト(仮)。「オープン/クローズ」「アナログ/デジタル」と往来していきながら、完成までの過程を一緒に共有していくプロジェクトをこれから行っていきます。

そのプロジェクトの打合せが先日ありました。
打合せの前に行う「チェックイン」。そこで紹介する項目する1つに「あなたの特性」を

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第14回「給料が15分の1になったけれども、彼女はそれ以上の生きづらさを抱えたかもしれない」

いま理事をつとめている団体がクラウドファンディングをしています。園田というまちにチャリティショップをオープンする準備のためです。https://camp-fire.jp/projects/view/71126

それに関して記事を書きました。是非ご覧くださいませ。

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私たちの暮らしは、たくさんの選択肢によって構成されています。

映画を見ること。友達とご飯を食べること。パソコン作業

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第13回「脱・施設から築・地域へ!NPO法人「月と風と」が目指す半径2キロの"混浴社会"!? ~3話目~」

第13回「脱・施設から築・地域へ!NPO法人「月と風と」が目指す半径2キロの"混浴社会"!? ~3話目~」

■小さく・ローカルであることへのこだわり

実はかつては大規模な障害者施設で働いていた清田さん。多くの障害者を受け入れることが出来る一方、ともすれば本人の希望より施設の都合が優先されてしまうような支援のあり方に疑問と怒りを覚えていたと言います。そんな原体験から月風を立ち上げた清田さんがこだわったのは、「NPO」という組織体であることと、「小さく」・「ローカル」であること。

『NPOの仕事は、もと

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第12回「脱・施設から築・地域へ!NPO法人「月と風と」が目指す半径2キロの"混浴社会"!? ~2話目~」

第12回「脱・施設から築・地域へ!NPO法人「月と風と」が目指す半径2キロの"混浴社会"!? ~2話目~」

■おふろプロジェクト—「劇場型銭湯」で目指す“混浴社会”—
そんな「ヒトリボッチジャナイプロジェクト」の中でひときわユニークなのが「お風呂プロジェクト」。「みんなで旨いものを食べ→お芝居を見て→まちの銭湯へいくという健康ランドのような1日を過ごす」その名も“劇場型銭湯”というイベントを地元の銭湯の協力を得て毎年開催。障害者のメンバーと地域の老若男女が一緒にお風呂につかり、汗を流して「いい湯だな♪」

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第11回「脱・施設から築・地域へ!NPO法人「月と風と」が目指す半径2キロの"混浴社会"!? ~1話目~」

第11回「脱・施設から築・地域へ!NPO法人「月と風と」が目指す半径2キロの"混浴社会"!? ~1話目~」

超リスペクトしている法人「月と風と」に昨年のどこかで取材を行いました。ずっと、ずっとしたためていたその記事を更新いたします。

■■■脱・施設から築・地域へ!NPO法人「月と風と」が目指す半径2キロの"混浴社会"!?■■■

「友達ほしい。」「バイトしたい。」「結婚したい。」「好きな子にチョコあげたい。」。どこにでも落っこちていそうな“THEつぶやき”。あなたもついこんなことを呟いたことはありませ

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第10回「さぁ、ここからだ」

第10回「さぁ、ここからだ」

「もう終わってしまうんだ。」
11月11日、尼崎市の橘公園で開催した「ミーツザ福祉2017」が終焉した瞬間、僕の口からこの言葉が自然とこぼれました。焦燥感と後悔が入り混じった、何ともいえない感情でした。もっと続いてほしかった。もっと良いものにしたかった。

ミーツザ福祉の説明は下記の通り。
「尼崎ではハンディキャップを持つ方と一般の方で交流できる「市民福祉のつどい」というイベントが、1982年より

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第9回「彼女の周辺に障害が加わっていく瞬間を、目撃できたのだ」

第9回「彼女の周辺に障害が加わっていく瞬間を、目撃できたのだ」

障害をテーマと掲げた「BYE MY BARRIER FES」を昨年9月に開催しました。

クラブを貸し切り、障害をメインテーマと据えた唄え!踊れ!騒げ!なイベントです。コンセプトは「さようなら、私のバリア」。イベントを楽しむこと自体が、障害を意識し、考え、私のなかのバリアとおさらばしていくことを目指しました。
内容は、障害×地域を打ち出すNPO法人月と風と の代表と世古口とのクロストークや車椅子ユ

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第8回「みんなを意識しすぎると、1人ひとりがぼやけてしまいがち」

第8回「みんなを意識しすぎると、1人ひとりがぼやけてしまいがち」

福祉に出会う、福祉を話すワークショップ「ミーツ・ザ・福祉」の打合せが先日ありました。打合せの議題は、どんな障害を持った人が来ても、誰しもがワークショップに参加できるような仕掛けを考えること。

アイディアを出せば出すほど納得のいく答えが遠ざかっていきました。全員が満足する快を得られる状況を実現するのは、難しいのではないでしょうか?

というのも誰かの「快」を満たすことが、誰かの「不快」となり得て、

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第7回「そう、結局」

第7回「そう、結局」

「障害のある人が普通に過ごせるような一助が自然と起こり、彼らと一緒にいることが特別と思わないような社会にしていきたい!」友達の1人がこのように話していました。

前回の記事「価値の転換が起こりうる場をつくりたい」で触れましたが、
障害のことを知らない→知っている
障害者のことなんて関係ない→関係がある
わたしの生活において障害者を意識しない→意識する
とスライドさせていくことが、障害に対しての特別

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第6回「価値の転換が起こりうる場をつくりたい」

第6回「価値の転換が起こりうる場をつくりたい」

僕は障害者福祉の仕事に就くまで、障害者とどう接したらいいかわかりませんでした。就職活動に軒並み失敗し、自暴自棄に陥ったぼくは、何となく福祉の仕事を探し、何となく障害分野を選び、何となくいま働いている法人をリクルートサイトで見つけ、何となく説明会に参加しました。その説明会でお聞きした理念や活動に共感したのと、実習で出会った脳性マヒのおっちゃんが大好きになったのと、親の会社に就職したくなかったという理

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第5回「伴走者の立場から考えてみると決めた理由」

第5回「伴走者の立場から考えてみると決めた理由」

ぼくは福祉を学ぶ学校に行ったわけでも、障害者と関わる経験があったわけでもなく、就職活動に失敗し、大した理由もなく障害福祉の業界で働くことに至りました。働くなかで、障害者が困っている問題や受けている偏見や差別を目の当たりにし、彼らと一緒に問題や偏見、差別を解消したい思いが強くなり、いまも障害福祉の業界で働いています。

障害福祉を学び、研究している専門家でもなく、普通の暮らしを送ることに制限がかかり

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第4回「遅咲きレボリューションから得た外側へ発信するヒント」

第4回「遅咲きレボリューションから得た外側へ発信するヒント」

前回の記事「だから、もっと福祉の外へ」では「井の中の蛙になってはいけない。もっと福祉の外側に発信しなければいけない」とお伝えしましたが、その発信のヒントを得た出来事がありました。

その出来事とは、昨年11月にLoft PlusOne Westで開催された『クシノテラス大阪トークライブvol.2「遅咲きレボリューション」』に参加したことです。
クシノテラスとは、日本唯一のアウトサイダー・キュレータ

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