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循環

実感よりも 瞬間のきらめきの中で
あなたは笑って空を見上げる
心地よい静寂の傍らにある 攻撃的な距離感
寂しさはいつだって 堕落への扉
最近の物事が うるさすぎて 死んだように眠った
繰り返される歴史の中で 忘れ去られたあの子が泣いている
人間の手によって産み出された まやかしの宗教の海
絶対的な讃美歌の嘶き はみ出そうともがけば押し潰される
わたし 不安なんだ
不安過ぎて わたし 狂ってしまいそうなんだ
ちいさいが 邪魔をする
ちいさいの 絶対がわたしを 引き戻す
嫌なのに あの呪文はわたしを翻弄する
あの呪文で わたしはひとときの安らぎを得るのだ
絶対的をもって 瞬間の世界はあらかじめ決められた出来事で
わたしの傷も 声も 寂しさも 虚しさも 怒りも 哀しみも
この世界のありとあらゆる出来事が 否定的にその存在を肯定される
わたしは毒を噛んでいる
飲み込めない毒を
わたしは誹謗中傷にだって光を見出した
苦しみを ラッキーチャームだと愛でた
迷惑な隣人を救済しようと自分を 押し殺した
わたしは只 自由な休息が欲しい
こころの休息は只 奈落に突き落とす罪悪感
立ち止まれば突き飛ばされ 迷えば踏み潰された

ママ 聞いてる?
わたし 鉛筆隠されたんだ
わたし 仲間外れ
わたし 無視されるんだ
わたし 恐いんだ
学校に行くのが 毎日恐くて嫌で
そしたらわたし 何も覚えていないんだ
だから何も言わなくてもいいんだって思って
ずっと学校に行ってたんだよ
でもね、このまま言わなかったらどうなっちゃうの?
何も覚えていないわたしはどうなっちゃうの?
置き去りなんだよ あの頃のわたし
ずっとあっちのどこかで 一人 閉じこもっているんだよ
何で迎えに行ってあげれないの?
何で思い出さなくてもいい事は 無理に思いださない方がいいの?
ずっとずっと小さいままでわたしが泣いている
トイレと図書館しか思い出せないよ
通学路も 先生の事も 授業の風景も
全部 空白
まっしろ
何の思い出もない
ママ、一番はね 本当はね
ママに怒られると思って ずっと言えなかったんだ
ママは置き去りにされたわたしを 抱きしめてくれる?
わたしはずっとぎゅっとしてほしい気もするけれど
ただ そっと手を握ってくれるだけでも 随分嬉しいんだと思うんだ

風に寂しさが混ざり 秋が来たのだなと思う
あの寂しさの元凶は 不安げな冷たさのせいだろうか
あの空気の緊張感が嫌いだった子供の頃
夏が終わらなければどんなにいいかと
そう思っていたのかも曖昧だ
今となっては その空気の冷たさも
単なる心地のよい 季節の変わり目の風でしかなく
私はふと寂しくなった
置き去りにされたあの子が 仮に私と一緒に成長していたとしたら
そこに未来はあったであろうか、と
あの子は私の代わりに死んでしまったのであろうか?
沈む月明かりが眩しい夜
私は隅っこで小さくなってあの子を抱きしめる
こぼさないように 小さくなってしまったあの子を必死に抱きしめるのだ
それは一種のまじないのようであり
壊れた心を修復させる精神療法であろう
石ころを投げて という
あの子はいつだってきれいな色の石ころを欲しがった
だからその石ころがこぼれ落ちないように
私は慎重にあの子を抱きしめるのだ
ひとかけらだってこぼさないように
あの子はほんのかけらだって諦めないんだから

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