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石田あきら×橙乃ままれ『まおゆう魔王勇者「この我のものとなれ、勇者よ」「断る!」』|絶対に忘れられない漫画が、そこにはある

長い旅路の末、魔王と 1 人対峙する勇者。魔王はお決まりのセリフを口にする。「この我のものとなれ、勇者よ」。それに対しセオリー通り「断る!」と答えたはずの勇者だったが――。

現実の世界史に、魔王など魔族との対立をファンタジーとして組み合わせて解釈すると、この漫画における魔族の侵略戦争も人間同士の戦争も、何も違いがないということに気づかされる。お互いに利益を求めて略奪し、多くの犠牲を経て協定が結ばれる。『ドラゴンクエスト II』が生まれて初めてプレイした RPG なのだが、何の疑問もなく「悪」だと認識して魔王を退治する旅に興じる子供だった。それは本当に、それで良かったのかと今になって思い返してしまう。交流手段のない異民族の未知なる大地、侵略や略奪しか、アプローチする手段がないのだろうか。人間個人同士も同様で、相手の素性が分からなければ、自分のやり方でぶつかっていくしかないのだろうか。ただ、例えそうだとしても、どちらかの破滅まで行うべきやり方なのか。衝突と和解の繰り返しが歴史だとしたら、ハーゴンとも和解できる道があったんじゃないかって、読後にクリアした RPG の別世界を、思わず妄想してしまう。

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