まのしこおみ

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『夜明けのすべて』三宅唱

ネタバレを含みます。 男女の恋愛に依らない作品のなんと尊いことか!となりました。 異性でも同性でも、なんでもかんでも恋愛に繋がらないのが現実の人間関係。なのに、ことドラマに関して恋愛というものは上位を占めていて、惚れた腫れただのもう飽きたし(いや、面白いものもたくさんあるんですけれどね)実際そういうことってないし、なんかもっと他にないですか?ってところに登場したこちら。主人公2人は男女ではありますが、人間としてお互いの弱さを助け合う関係。そして、周りがみんな良い人!特に職

    • 『市子』戸田彬弘

      あ、シチューはご飯と食べる派なんや。と思った序盤。 同棲している恋人からプロポーズされた市子は大粒の涙を目からポロポロと流し、心の底から幸せを噛み締めている。ように見えた。のに。 翌日にはバッグに荷物をつめ、ベランダから逃げ去ってしまう。BGMがわりに流れるニュースの音声から、事前情報を入れていなくても観客はうっすら気がつく。白骨死体が発見されたことと市子の逃亡が無関係ではないことに。 そこから現在と過去が交差しながら市子の人生が明らかになっていく。市子のはずなのに、いつ

      • 口紅の魔法

        昔からコスメが大好きで、母のドレッサーにあった口紅を友達が遊びにきたときに塗ってみせて、あとで母に「勝手に塗ったでしょ!」と怒られたことを覚えています。「塗ってない!!」と言ったけど、私の唇はさぞかし赤かったことでしょう。あの口紅はディオールだったと思う。 赤い口紅というのは幼い頃から刷り込まれたメイクの基本アイテムというか、いや、赤い口紅ほど難しいものはないと今は思うのですが、やはりこうバチっとキマッた赤い口紅を纏ってみたい思いはあの頃から消えることなく灯り続けている願望

        • 『夏物語』川上未映子

          川上未映子が好きだ。 まずはヴィジュアルから入った。ボブがとても似合っていて、結婚式のために伸ばした髪の毛を、翌日真似してボブまで切った。 エッセイの『きみは赤ちゃん』は妊娠前だったのに謎に妊婦心理に共感してボロボロ泣き、妊娠してからも出産してからも何度も読んで何度も泣いた。サインだってしてもらった。 が、小説の方は全部読んでいます!というわけではなく、読んだことがあるのは『わたくし率イン歯ー、または世界』、『乳と卵』、『すべて真夜中の恋人たち』くらい。この『夏物語』は『乳

        『夜明けのすべて』三宅唱

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        • レビュー
          5本
        • エッセイ
          3本

        記事

          『掃除婦のための手引き書』ルシア・ベルリン

          仕事に行く時はいつも、水筒に熱いお茶を淹れて持っていく。身体を冷やさないために、夏も冬も熱いお茶。その日は蓋の閉め方が甘かったのか、カバンの中であらゆるものがお茶まみれになった。もれなく、この本も。 大慌てでお茶で濡れたハンカチで拭き、家に帰ってから乾いたタオルで拭いた。波打たないように、少し乾いたら重い図鑑の下に置いた。結局波波になった。読みかけだったけれど、そんなこんなで存在を忘れていたこの本を久しぶりに開いた。どうして存在を忘れられていたのだろうか。こんなにも強烈なこ

          『掃除婦のための手引き書』ルシア・ベルリン

          料理本

          料理が好きでも得意でもないのに、なぜか手に取っては買ってしまう料理本。隅から隅まで作ってみるわけでもないし、お気に入りの料理家さんのものを集めているわけでもない。ふらっと本屋に入ったらまずは料理本コーナーに向かってしまうし、平積みしてあるその時期にオススメの本をパラパラとめくっては料理家さんとタイトルをメモして後日ポチる。 結婚して子どもができて、日々のご飯のことを考えない日はない。というかご飯のことばかり考えている。息子の食べたいもの、食べられるもの、栄養のこと、昨日の残

          『かがみの孤城』辻村深月

          少し前にアニメで映画化されていましたね。 あまり気に留めていなかったのですが、不登校の話と聞いて読み始めました。 うちは息子が不登校なのです。小学校低学年。保育園の頃から行き渋りがひどく、小学校に上がってもそこまで変化はなく。すこーしずつ休む日が増え、冬休みが終わると、とんと行かなくなりました。 なんで?どうして?みんなできてることがどうしてできないの?育て方が悪かった?なんで?頭の中はそればっかりです。人はそれぞれできることとできないことがあるし、各々のペースがあるのも

          『かがみの孤城』辻村深月

          続けるということ

          三日坊主といえば私のこと!と胸を張って言えるほどに継続が苦手な私でも続けているのが日記です。母親から勉強に役立つからと勧められたのが始まりで、文字を書くことが好きな私にピッタリとハマり、休んだりしながらも人生の大半、日記に日々のあれこれを綴ってきました。 ここ数年は気に入った日記帳が見つかり、数えてみれば6冊目、6年もの間同じものを買い続けています。5年手帳や10年手帳もあるけれど、最初からそんなに続けられるんだろうかとプレッシャーを感じてしまって億劫になってしまうので、1

          続けるということ

          ごっこ遊び

          小さい頃からごっこ遊びが好きだった。 友達とするのも、弟とするのも好きだったけれど、とびきり好きだったのはひとりでするごっこ遊びだったように思う。 誰かが自分の理想と違う言動をすることがなく、好きなように進行できる。より自分の世界に没頭できるからだ。 いつからかすっかりごっこ遊びとは縁遠くなり、息子とのごっこ遊びからも距離ができたいま、久しぶりに自分だけのごっこ遊びをしてみようかと思いついた。 文章を書くことを仕事にしたいと思うだけで行動に移せない毎日。 書きはじめた