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【エッセイ】トレジャーハンター

私は子供のとき、お金を集めるのが大好きだった。
使うのではなく、とにかく集めて自慢したかった。
5歳くらいまでは量が多く見えるから小銭が好きだったが、小学校にあがったくらいから、札が好きになった。

それには理由があって、幼稚園児まではお年玉で小銭しかもらえなかったのだが、小学校からは札がもらえるようになったからだ。
初めて触る札を、おぼつかない手で数える私に、バーパン(祖母)が銀行員がやるような数え方を教えてくれた。
私はその、札を指で弾く感覚、またその数えているものの威力(これでポケモンカードが何枚買えるんだろう…)の虜になった。

私は数える枚数を増やしたい一心で、いろんな手段をつかって金を集めようとした。

まず、貯金箱を買おうと思った(集まった小銭は、バーパンがいつも札に両替してくれる)。
ずる賢い私は、「どうせみんな私がかわいいから、貯金箱を買えば、小銭を集めるのに協力するだろう。しめしめ(∩皿^∩)」と思ったのである。
私はなるべくいっぱい入りそうな貯金箱を購入し、家族に貯金箱を購入した旨を伝えた。
ターゲットは大人である。
私はよっちゃ(お父さん)を必要以上に追いかけ回し、
「貯金箱を買ったよ^^ねぇ、貯金箱を買った!」とかわいくアピールした。
よっちゃはまんまと引っかかってくれ、「仕方ねぇな」とにこやかに言いながら小銭をたくさん入れてくれた。

こんな感じで大人たちをターゲットに集金していった。
やり過ぎはよくないが、1ヶ月に1回くらいなら皆にこやかに入金してくれることを発見した。


しかし、これだけではなかなか札が集まらない。私は別の手段も考えなくてならないと焦りを感じていたが、なかなか思いつかなかった。

ある日、私は家の下(マンション)の共有の蛇口の下に敷き詰められている石の中で、アスファルトにお絵描きできる石を探していた。
どの石でもお絵描きできるわけではないので、私は必死になって探した。

短気の私はなかなか見つからないことに腹を立て、
「こんちきしょー!!!!!」と言いながら石をアスファルトに投げつけた。

すると、その石は真っ二つに割れ、変わった断面が見えた。
黒地の断面の中に、シルバーの粒がキラキラしていた。

私はそれを見た瞬間、金の匂いを感じた。
さっきまで子供らしく”お絵描きできる石”を探していたのに、私の目は一変して忍たま乱太郎のきり丸のように小銭型の目に変わっていた(ちなみに見た目は完全にしんべえである)。

いろんな場所を探したが、どういう訳かその石は、私の家の下にしかなかった。
私は、「きっと昔、この家の下に隕石が落ちたから、ここにだけ綺麗な石があるんだ」と考えた。

合計で3つ集まったはいいものの、どこで売ればいいのかわからなかった。
私は、こういうことは大人に聞いた方がいいと判断し、その石を大人たちに見せた。
しかし、だれも隕石だと認めてくれない。
私がなぜここまで隕石だと信じ込んだかというと、理科の教科書で似たような石を見たのだ。
それなのに、誰も信じてくれない!!と、私はむしゃくしゃしていた。

そんなある日、小学校の社会科見学の授業で、埋蔵文化財が集まる近くの施設にクラスの皆で訪れた。
私は全く興味がなかったので、説明を聞き流してふらふら遊んでいた。


すると、ある物が目に入った。

あの石に似た石が隕石として展示されているではないか!!!!!

さっきまでやる気のなかった私は、俄然やる気を出し、目をギラギラさせながら説明中の施設のおじさんに問いかけた。

私「すみません!ちょっと!!私、この石を3つ持っています!!!!」

施設のおじさん「!?!?」

みんなが静かに説明を聞いていた中、いきなり突拍子もないことを言われた施設のおじさんは困惑していた。

困惑中のおじさんに、私はさらに詰め寄った。

私「この石は!!どこで売れるんですか!!?私は確かに3つ持っているんです!!それだといくらになりますか!!?」

おじさん「えっと、それは、その…売り物とかじゃなくて……えっと…」

私「そうやって信じないのなら、後日持ってきます!!!」

私は気の弱そうなおじさんを勢いで黙らせたあげく、”信じてくれない奴”というレッテルを貼った。
可哀想なことにおじさんは何も言えなくなってしまった。

代わりにクラス中の注目が私に集まり、やがて近くにいた女の子の友達が口火を切った。

「まりなちゃん、本当にあの石を持ってるの!?すごいねー!!!」

それをきっかけに、皆が私に尊敬の眼差しを向けた。

私は長いこと誰にも信じてもらえなかったうっぷんを晴らすべく、ここぞとばかりに得意になって自慢した。

結局その石は、どの大人に聞いても”売れない”と言われたので、お金にしか興味のない私は、「( `_ゝ´)チッ」と思い、そのまましばらく引き出しに眠ったのち、捨てられたのであった。

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