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未来図書館*ショートストーリー

23XX年。300年ほど前に紙の本をすべてデジタル化し、またすべてを音声として保存する図書バブルがあったという。紙をデジタル化する業界が経済を動かした。
紙を貴重品とし、国は図書税という税金を徴収し、すべての情報をダウンロードできるようにした。
人々は本を紙で読みたければ、デジタルの10倍の値段で買うか、複雑な手続きをして図書館から借りるか、自分でダウンロードしたものをプリントアウトしなければならない。

本は他国の言語でも、音声も文字も自国の言葉で認識できた。
AIによって著作権も守られており、他国の書籍も自国の本と同じようにダウンロードして読むことができた。手数料、もしくは図書税を払うのみで書籍の代金はないのと同じだった。
著者はダウンロード数で印税を国から徴収し、読者はプランによって税額を選ぶことができた。

図書館というスペースは博物館に近かった。紙の劣化を防ぐために膨大な費用がかかるため、厳重な警備がしかれた紙を観覧する場所になった。
本屋は広告をプレゼンする場所であり、絶版という概念がないため、古典でも簡単に手に入る。
新聞、雑誌もすべて世界配信のため、本屋はオンライン上で紙として貴重品の本を売るために存在した。

ある日オレは図書館で1冊の本を読むことに成功した。
アプリで観覧予約をしてまで読みたいと、いや読まなくてはならないと思ったのは、あるメールが届いたからだ。

今はメールを日時を指定して送ることができる。過去に指定はできないが、未来にはいくらでも指定してメールが送れる。
個人のID宛に届くため、迷惑メールのようなものは存在しない。
生きている限りついてまわるシステムである。
主に税金の支払いなどに使われるものだが、そのメールは重要メール着信音、パスワードつきで届いた。

図書館からのメールだった。本の予約が完了したからいつ来館するか手続きをして読みに来なさいという内容だった。まったく予約した覚えはなかったが、その本は気になっていた大学の研究内容、とくに人間のこころを読み解く内容の本らしかった。

だれが予約をしたのか半信半疑ながら、貴重な紙の本を予約ができているチャンスだ。見逃す手はない。観覧予約は思いの外、面倒だったが図書館に入るとその思いはどこかへ行った。

鍵付きの書庫から本を取り出し、読みだした。

ネガティブを並べて箱につめて、それをかかえて生きていた主人公があるキーワードをこころに持って、どんどん成功するという物語。
短編なのに知りたい内容が、時間とともに成長して理解できるようになっていた。
なぜか読んだことがあると感じた。

どこでダウンロードした?記憶を探っても出てこない。

でも最後のページにある手書きの1文を見つけた時、だれがメールを送りこの本を読ませたか、はっきりわかった。

図書館を出てすぐに、その本に書いてあった内容そのままの行動をした。

目標を”紙”に書く。理想の行動や登場人物を登場させ紙の上で動かし、理想の家に住ませて夢の生活を送っている”小説”
印刷して図書館に寄贈する。
そして忘れずに1文書く。

「10年後のオレ○○(名前)読んでくれてありがとう。」

あとは10年後にその本の予約をして、メールを送るだけだ。

図書館で読んだ本の記憶の上書きは終了。

オレは忘れていても自動でそうなることを知っているから、どんな困難があっても、結局うまくいくとわかってる。

そしてどんな困難も、それをゲームのレベル上げのように感じていればいい。
「10年前のオレ○○(名前)書いてくれてありがとう。」
キーワードは”感謝”



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