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多くの人が自分の生きた証を残せない中、それができる役者という仕事は尊いなと感じた『バビロン』

【個人的な満足度】

2023年日本公開映画で面白かった順位:10/20
  ストーリー:★★★★☆
 キャラクター:★★★★★
     映像:★★★★☆
     音楽:★★★★☆
映画館で観たい:★★★★☆

【作品情報】

   原題:Babylon
  製作年:2022年
  製作国:アメリカ
   配給:東和ピクチャーズ
 上映時間:189分
 ジャンル:ヒューマンドラマ
元ネタなど:なし

【あらすじ】

1920年代のハリウッドは、すべての夢が叶う場所。サイレント映画の大スター、ジャック(ブラッド・ピット)は毎晩開かれる映画業界の豪華なパーティの主役だ。会場では大スターを夢見る、新人女優ネリー(マーゴット・ロビー)と、映画製作を夢見る青年マニー(ディエゴ・カルバ)が、運命的な出会いを果たし、心を通わせる。

恐れ知らずで奔放なネリーは、特別な輝きで周囲を魅了し、スターへの道を駆け上がっていく。マニーもまた、ジャックの助手として映画界での一歩を踏み出す。

しかし、時はサイレント映画からトーキーへと移り変わる激動の時代。映画界の革命は、大きな波となり、それぞれの運命を巻き込んでいく。

果たして、3人の夢が迎える結末は…?

【感想】

映画好きが映画好きのために作ったような映画愛が詰まった映画です。1920年代のハリウッドのカオスっぷりが知れる点でも有意義な作品だったんじゃないかなと。

<とにもかくにもパーティーシーンがヤバい>

この作品、映画に魅せられた人々の話ではあるんですが、まず目につくのが冒頭のパーティーシーンです。僕は常々、洋画におけるクラブとかでのパーティーシーンって本当に楽しそうだなって思っているんですが、本作に関しては次元が違います。普通の人が思い浮かべるであろう「パリピ」と呼ばれる存在の、1000倍ぐらいイッちゃってる人たちが大集合。そんな人たちの浮かれっぷりにただただ圧倒されます。

具体的には、人目もはばからず、男女共に下半身全開の人がチラホラ。人がごった返している中で躊躇なくファック。アブノーマルなプレイに興じる人もいて、まさに欲望にまみれた異様すぎる空間でしたね。シラフでは絶対行けません。。。実際に1920年代のハリウッドは無法地帯だったようで、パーティー三昧であったことは確かなようですけど。

これ、撮影に参加した人たちがすごくないですか?おそらく、扱いとしてはエキストラになるんでしょうけど、裸になって体を重ね合わせてって、よく引き受けますよね。そういうの専門でやっているエキストラとかになるんですかね。もしくは裸に見える下着みたいなのとかで、ああ見えて脱いでないとか。いずれにせよ、邦画では一生お目にかかれなさそうなシーンでした。

<波乱万丈な3人の人生>

この映画、誰が主人公なのかわかりづらいんですが、ジャック、ネリー、マニーの3人が主人公なんですよね。誰かひとりに集中することなく、3人それぞれ等しく扱われていましたから。冒頭のパーティーシーンが終わった後は、その3人の波乱万丈な人生を追っていく展開になります。

ジャックは、映画スターとして一世を風靡しながら、トーキーへ移り変わる時代の流れに順応できず、だんだん人気がなくなっていく役どころです。現実にも、声や音が拾えるようになってから落ち目になってしまった役者はたくさんいたそうです。

ネリーは、新人ながらも怖いものなしの性格が功を奏して、スターダムを駆け上っていきます。ただ、あまりにも奔放すぎる上に、ドラッグもやめられず、かなり癖の強い人物です。

マニーは、映画製作に携わりたいという密かな想いが、ジャックに気に入られたことで実現したラッキーな人です。アシスタント的な立場から、やがては重役にまで上り詰めるも、ひょんなことからトラブルに巻き込まれてしまう可哀そうな人です。とはいえ、彼が一番まともな人間でしたけど(笑)彼が最後に涙するシーンを見て、この人は本当に映画が好きだったんだなとジーンときましたね。

3人とも、「さすがショービズの世界は違うなあ」と思うぐらい、煌びやかで浮世離れしまくった環境で四苦八苦する姿が描かれています。ルールもなく、何をするにしても自由だった当時のハリウッドでの映画製作は、楽しさと辛さの両極端が味わえたんだろうなというのがよくわかりました。

<最初と最後はよかったけど、、、>

冒頭のパーティーシーンがあまりにも強烈すぎたが故に、個人的にはそれ以降あんまりパッとしなかったように感じちゃいました(笑)おまけに尺も3時間とかなり長丁場。上記の3人の誰を追っていけばいいのかもわからないまま、しっちゃかめっちゃかに進んでいくので、けっこう体力も使いましたね。

で、話は飛んじゃいますが、ラストはラストでよかったんですよ。過去の名作をフラッシュバック的にたくさん差し込んでいるのが映画好きにはたまらないポイントです。『ラ・シオタ駅への列車の到着』(1895)や『2001年宇宙の旅』(1968)、『ターミネーター2』(1991)、『マトリックス』(1999)など、僕が好きな映画のワンシーンが流れるのはエモかったです。他にもたくさんあるんですが、どんな映画が流れていたのかは、下記に詳しく書いてありました。

そう考えると、個人的にはこの映画、最初と最後だけはよくて、その間はそこまで刺さらなかったんですよね。もちろん、面白いっちゃ面白いんですけど、そんな大絶賛するほどかなと。これ、実は『ラ・ラ・ランド』(2017)のときも同じ印象を持ったんですよ。冒頭のハイウェイでの歌と踊りと、ラストの「もしも」の世界はよかったものの、その間はそこまで、、、っていう(笑)僕の中ではデイミアン・チャゼル監督作品はそこまで刺さらないのかもしれません(笑)

<役者という仕事が尊いワケ>

終盤にこの映画で一番お気に入りのシーンがあります。それは、自分のキャリアが落ち目になったジャックに対して、知り合いが投げかけた言葉。「誰もが必ず死ぬけど、映画はずっと残る。自分が死んだ後、誰かがその映画を観てくれれば、時を超えて観客は役者のことを友人のように感じられる。50年後に生まれた子供が、自分が生まれる前に死んだ人のことを知れるのよ」と。うろ覚えですが、こんな感じだったかな。まさにその通りで、この世に生を受けても、多くの人が自分が生きた証を残せるわけではありません。もちろん、子孫が残ればそれ自体が自分の生きた証にはなりますけど、普通はそんなこと意識しないじゃないですか。それこそ、大きな会社を創業したとか、歴史的な偉業を成し遂げたとかじゃないと、人々は知る由もありません。そう考えると、役者って自分が生きた証として作品が後世にまで残るので、すごくいい仕事だなと感じたわけです。大スターに限られてしまうかもしれませんけど。。。

<そんなわけで>

映画好きな人には特にオススメしたい映画ですね。3時間と長尺ではありますけど、1920年代のハリウッドの雰囲気を知れて、非常に興味深い内容ではあります。あと、マーゴット・ロビーの、頭のネジ10本ぐらい飛んでるような様子がおかしいキャラクターもツボです。あのぶっ飛んだ演技も一見の価値アリだと思います!


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