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古書を取り巻く環境から目が離せない『ブックセラーズ』

【個人的な評価】

2021年日本公開映画で面白かった順位:46/89
   ストーリー:★★★★★
  キャラクター:★★★☆☆
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★☆☆

【以下の要素が気になれば観てもいいかも】

ドキュメンタリー

古書
古本
希少本
骨董品
美術品
コレクター

【あらすじ】

社会の多様化やデジタル化で、本をめぐる世界は大きく変わった。書店は、本は、未来に生き残れるのだろうか。

いや、本の魅力は絶対になくならない。本を愛する人たちのそんな思いに応えてくれるのが本作だ。

世界最大規模のNYブックフェアの裏側から、業界で名を知られたブックディーラー、書店主、コレクターから伝説の人物まで、登場する人々の本への愛情、ユニークなキャラクターには誰もが心惹かれるだろう。

インタビューに登場するNY派の錚々たる作家たちや、ビル・ゲイツによって史上最高額で競り落とされたダ・ヴィンチのレスター手稿やボルヘスの手稿、『不思議の国のアリス』のオリジナル原稿など、希少本が多数紹介されるのもたまらない魅力だ。

本を愛するすべての人に届けたい一級品のドキュメンタリーである。

【感想】

古書をめぐる様々な歴史や問題を扱った、実に興味深いドキュメンタリー映画でした。ちなみに、恥ずかしながら、僕はまったくと言っていいほど、本を読みません。。。物心ついたときから映画やドラマ、ゲームに囲まれたせいか、活字がどうも苦手なんですよね(笑)

<知の集合体ではなく、"モノ"としての本>

この映画は本を扱ってはいますが、読書が苦手な人でも大丈夫です。なぜなら、これは読書を薦めるものではなく、"モノ"としての価値に迫った内容だからです。なので、『開運!なんでも鑑定団』に出てくるような骨董品を思い浮かべてもらった方がいいかもしれません。僕はコレクターでも何でもないですが、何かとモノを集めがちなので、親近感を持ってこの映画を楽しむことができました。何かのコレクターの人なら、なおさら楽しめるかもしれません。

<とんでもない金額がつく本たち>

舞台となっているニューヨークでは、書店の数がどんどん減っているようです。そんな中で、ディーラーと呼ばれる人たちは、価値ある古書を見つけては、保存や売買に勤しんでいます。

本というのは、先人たちの知の集合体で、その中身には大きな価値があります。しかし、ここでは本の内容云々ではなく、いかに昔のもので、保存状態がよく、まだ世に出回っていないかが重要になります。それこそ、『不思議の国のアリス』の初版本や、『若草物語』の作者が偽名で書いた小説、ダ・ヴィンチの手稿など。

最近では、有名な本の初版本よりも、手書きで書かれた手紙などに価値があるようで、ダ・ヴィンチの手稿はビル・ゲイツが2,800万ドル(約28.4億円)で落札するほど!それと比べると見劣りしてしまうものの、『007 カジノ・ロワイヤル』の初版本も13万ドルするんだから驚きです。

<所有欲の行き着く先>

今の時代、本の中身はデータで読めますよね。それは、本だけでなく、ゲームや映画なんかも同じです。単純に中身を楽しみたいだけならそれでも十分だと思いますが、形あるものならではの価値というのもあると僕は思っています。その証拠に、僕はゲームに関してはダウンロードして遊べるにも関わらず、わざわざパッケージ版で買っています。これは単純に所有欲を満たすためではありますが、遠い未来になってから振り返ったとき、形がある方が歴史を感じやすいと思うんですよね。そこにロマンを感じているからこそ、何かとモノを捨てられずにいるんですが(笑)

<古書を取り巻く環境の変化>

インターネットの登場は古書業界にも大きな影響を与えているようでした。消費者からしたらいろんな本を手にしやすくなったものの、やっぱりディーラー泣かせではあるらしいですね。これまでは自分たちが足を運んで買い付けしていたものが、個人間で簡単に取引されてしまうから。とはいえ、商品状態は実際に自分の目で確かめたいので、僕だったらネットではなく、きちんとディーラーさんから買いたいですけどねー。

で、そのディーラーさんたちは高齢化に悩まされているようです。みなさん、偶然この業界に足を踏み入れた方が多い印象でしたが、あまり若い人が入ってこなかったり、自分たちの子供が本に興味を持たなかったりと、なかなか次世代が育たないようです。まあ、出版社自体に興味は持っても、骨董品としての本に興味を持つ若者って、あんまりいないかもしれませんね。そもそも読書離れで、本自体を読む若者も減っているようです、アメリカも。

<アーカイブとコレクションの違い>

他に興味深かったのは、アーカイブとコレクションの違いにも触れられていたことです。作中では、単純に情報量の差で区別しているようでした。前者はひとつ残らずすべて存在しているのに対し、後者は少し欠けている場合に使われるよう。なので、コレクションも突き詰めればアーカイブになるって言ってましたね。今僕が持っているモノたちも、いずれ歴史的価値を持つかもしれないと思うと、ちょっと誇らしいです(笑)

<面白い本の数々>

映画の中に出てくる本は、何も値段が高いものばかりではありません。魚の化石を実寸大で載せている巨大本や、本物のマンモスの毛を入れている本、
宝石をあしらった表紙の本、人間の皮で装丁された本など、普通の書店ではまず手に入らないものがたくさん紹介されていました。文庫や新書とはまったく異なる、骨董品やインテリアとしての側面が強い本は、読書好きじゃなくても欲しくなりますね。

ざっくり言ってしまうと、「崇高なまんだらけ」って感じでした(笑)中野ブロードウェイに入っているまんだらけ、あそこにあるコレクターズアイテムの数々も、メチャクチャ欲しくなるものばかりですからね。

何かと収集癖のある人、オタク、コレクターの人たちは、この映画を観ると共感できるポイントが多いかもしれません。


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