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地道な練習の積み重ねでしか、遠く高いところへは行けないんだということを実感する『BLUE GIANT』

【個人的な満足度】

2023年日本公開映画で面白かった順位:12/35
  ストーリー:★★★★★
 キャラクター:★★★★★
     映像:★★★★★
     音楽:★★★★★
映画館で観たい:★★★★★

【作品情報】

  製作年:2023年
  製作国:日本
   配給:東宝映像事業部
 上映時間:120分
 ジャンル:アニメ、ヒューマンドラマ、音楽
元ネタなど:漫画『BLUE GIANT』(2013-2016)

【あらすじ】

ジャズに魅了され、テナーサックスを始めた仙台の高校生・宮本大。雨の日も風の日も、毎日たったひとりで何年も、河原でテナーサックスを吹き続けてきた。

卒業を機にジャズのため、上京。高校の同級生・玉田俊二のアパートに転がり込んだ大は、ある日訪れたライブハウスで同世代の凄腕ピアニスト・沢辺雪祈と出会う。

大は雪祈をバンドに誘う。初めは本気で取り合わない雪祈だったが、聴く者を圧倒する大のサックスに胸を打たれ、二人はバンドを組むことに。そこへ大の熱さに感化されドラムを始めた玉田が加わり、三人は“JASS”を結成する。

楽譜も読めず、ジャズの知識もなかったが、ひたすらに、全力で吹いてきた大。幼い頃からジャズに全てを捧げてきた雪祈。初心者の玉田。トリオの目標は、日本最高のジャズクラブ「So Blue」に出演し、日本のジャズシーンを変えること。無謀と思われる目標に、必死に挑みながら成長していく“JASS”は、次第に注目を集めるようになる。

「So Blue」でのライブ出演にも可能性が見え始め、目まぐるしい躍進がこのまま続いていくかに思えたが、ある思いもよらない出来事が起こり……。

【感想】

ジャズはまったく聴いたことないのでスルーしようかなとも思ったんですが、あまりにも話題かつ評判がよかったので、原作漫画を読んでから鑑賞しました。原作漫画の1巻~4巻はフラッシュバックで出てくる程度で、メインは5巻~10巻でしたね。原作に忠実な流れにしつつも、まさかのオリジナル要素も加えたいい映画でした!

<成長や上達が早い人がやっていること、それは……>

漫画を読んでいるとより一層強く感じるんですけど、この作品を観て思うのは、とにかくインプットとアウトプットの両方が大事だということです。特にインプット、つまり練習の量がハンパないですよ。そりゃどんな漫画でも修行や練習を積むシーンはありますが、ここまで愚直に地道に練習を積んでいるシーンが多いのは珍しいんじゃないですかね。

中でも、主人公の大が一番ヤバいです。生まれ故郷の仙台にいたときから、雨にも負けず風にも負けず雪にも負けず、ひたすら河川敷でサックスを吹きまくっていますから。それは東京に来ても同じ。人の多いこの街で何とか誰にも邪魔されずに練習できる場所を探し、バイトでどんなに疲れてても必ず吹きに行く真面目さ。僕だったら「まあ、今日はちょっと疲れたしいっかー」ってなっちゃいますけど、彼はそんな甘いことは一切しませんね。それは、世界一のジャズプレーヤーになるという目標があるから。そして、それ以前にジャズが大好きだから。何事もここだよなって思いますよ。好きじゃなきゃ続きませんし、目標がなきゃ成長しません。まあ、そこまで情熱を注げるものに出会えたこと自体が恵まれているなとも思いますけどね。

そして、やることをきっちりやっているから、ライブというアウトプットをしたくてしょうがないないんですよ。自分もこれまでの経験からわかりますけど、「恥ずかしい」とか「まだそんなんじゃないし」とかって言ってるうちは、やるべきことをやっていない証拠なんですよね。ちゃんとやってたら、その力を試してみたくなるはずですから。まあ、そもそもそこまで本格的にやってるのかっていうのもあるので、一概には言えませんけど。

こうやって、①好きな気持ちと、②それゆえに生じる高い目標、③それを実現するための地道なインプット、④自分の力を試すためのアウトプット、この4つが成長や上達には必要なんじゃないかと思いました。なんか、仕事よりも趣味や部活の方ががんばれるのは、その4つ(特に①)が揃いやすいからなのかなって思いました。

<一番の功労者は玉田じゃないかと>

この作品の主人公は宮本大です。かつて友人に連れられて行ったジャズライブを聞いて衝撃を受け、それ以来ジャズの虜になり、ひたすら練習を繰り返し、成功を掴まんとする青年です。彼のその愚直な姿勢には頭が上がらないんですが、個人的には大よりも玉田を推したいです。だって、彼は初心者じゃないですか。いや、もちろん誰でも最初は初心者ですけど、玉田は三人の中で一番の後発ですし、音楽の経験もありません。にも関わらず、大たちの演奏を聴いて、魂を揺さぶられて、あそこまで行ったんですよ?鬼のように練習する大と、キャリアが一番長い雪祈を見て、それでも追いつきたいと思えるほどジャズに魅了されたってことなんですけど、すごいですよ。初心者ゆえに伸びしろは一番あったとは思いますが、それを踏まえてもゼロからのスタートであそこまで行くなんて、、、僕は彼が一番がんばったと思っています。

<ジャズの演奏もよかった!けど……>

原作漫画は「音が聞こえる漫画」と言われるほど、その躍動感が魅力のひとつですよね。セリフがなく、キャラクターたちの表情やポーズだけのコマ割りがあるのもこの漫画の特徴ですけど、それで音や動きが伝わってくるんだからすごいですよ。今回はついに音楽がつくことで、ようやく完成形になったのではって思いました。「ああ、彼らはこうやって演奏していたのか」ってのが実感できてとても感慨深かったんですが、正直、ジャズ自体を好きになったかと言われたら、正直そこはあんまり変わりませんでしたね。大人で崇高で近寄りがたい印象はそのままでした(笑)やっぱり自分はポップスの方が好きだなって。

想像力が乏しいのか、自分がやったことないものは、あんまりそのすごさがわからないんですよ。。。なので、演奏は素敵でしたけど、劇中の観客のように涙が出るまではいきませんでした。。。とはいえ、一応小さい頃にピアノを習っていたので、雪祈の演奏だけはそのすごさが実感できました。あんなにリズミカルに軽やかに自由に、指が鍵盤の上を動きまわれるものなのかって。まるで鍵盤が指の一部かのようで圧倒されましたね。これ、サックスやドラムも、たくさん聴いたことのある人や、自分でやったことのある人は、みんなそのすごさに脱帽してるんでしょうね。

<そんなわけで>

普通に映画としてもメチャクチャ面白いですし、ジャズを知らなくてもまったく問題ありません。原作漫画とは違う展開もあって、初めての人でも漫画を読んだ人でも十分に楽しめると思います。僕も漫画と同じところで再び泣きましたから。ぜひ音響設備が整った劇場で観ていただきたいですね。あと、意外と大の声がまんま山田裕貴さんなのはちょっと笑いました(笑)


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