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エクセルシオール!マーベルのスーパーヒーローたちの生みの親に学ぶエンタメの在り方がとても勉強になる『スタン・リー』

【個人的な満足度】

2023年日本公開映画で面白かった順位:30/96
  ストーリー:★★★★★
 キャラクター:★★★★★★★★★★
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:-(配信のみ)

【作品情報】

   原題:Stan Lee
  製作年:2023年
  製作国:アメリカ
   配信:Disney+
 上映時間:86分
 ジャンル:ドキュメンタリー
元ネタなど:漫画原作者「スタン・リー」(1922-2018

【あらすじ】

スタン・"ザ・マン"・リーが、コミック界とポップカルチャーにおいて、最も影響力のある人物の一人になるまでの道のりを描いたドキュメンタリー。

本名スタンリー・リーバーとして育った過酷な少年時代からマーベル・コミックスの急速な台頭まで、スタン・リーの人生を彼自身の言葉で辿っていく。ホームビデオ、インタビューや音声録音など、保管されていた素材のみを使用し、彼の人生の起点と、そこから生まれた壮大な物語、そして世界中の人々の共感を得た深みのあるキャラクターについて探る。

コミック、情熱、そして一人の男の人生哲学と、とどまることを知らない影響力について、詳細に物語っている。

【感想】

マーベル好きにはたまらないドキュメンタリーですね。今まであまり知ることのなかったスタン・リーについて知れるとても貴重な内容でした。

<17歳で編集長に>

今や全世界の興行収入ランキングで最も売れている映画シリーズである「マーベル・シネマティック・ユニバース」。その元となっているのはマーベル・コミックが発行しているコミックたち。そして、そのコミックに描かれたスーパーヒーローの多くを生み出したのが、今回のドキュメンタリーの題材でもあるスタン・リーという人物です。本名はスタンリー・マーティン・リーバー。当初、コミックにはあまり興味がなく、適当なペンネームでいいだろってことで、"スタン・リー"にしたそうな。

幼い頃は貧しい生活をしていたそうで、仕事のない父親を見て、「自分は安定した職業に就く」ことが目標だったそう。そこから紆余曲折を経て、叔父であるマーティン・グッドマン(当時のマーベルの発行者)の働くタイムリー・コミックス(後のマーベル・コミック)に入社。雑用をこなしながら、人員不足ということもあって、17歳にして編集長になったんです。ここはもう運としかいいようがないですけどね(笑)

<伝説の人物も辞めようかと思ったときがある>

タイムリー・コミックスには、会社の意向でコミックを作る際に厳密なルールがありました。当時のコミックは子供向けだと思われていたので、以下を守るようにと決められていたんです。

・3音節以上の単語は使わない
・セリフは短く、アクションを多く
・性格描写にこだわるな

それに辟易していたスタン・リーは、自分自身の仕事についても疑問を感じるようになります。世の中を見渡せば、橋を架けたり、医療研究をしたりと、社会的インパクトのある仕事をしている人がたくさんいます。そんな中で、くだらない空想のストーリーを書くなんて、大の大人がすることかと思ったそうなんですよ。

<妻の一言がすべてを変えたきっかけに>

そんなとき、妻の「自分の好きなキャラクターを作ってみたら?」の一言で生み出されたのが、『ファンタスティック・フォー』です。当時、DCがジャスティス・リーグというスーパーヒーローチームで人気を博していたことを受けて作ったらしいですが。「どうせ辞めるつもりなんだからこの際やってみるか」と、半ばヤケクソだったのかもしれませんね。ところが、これが話題となり、社名も驚異(マーベル)に変え、現代に至るまで多くのスーパーヒーローを生み出していくことに繋がったんです。あのときの妻の一言がなかったら、こうはなっていなかったかもしれません。余談ですが、妻はスパイダーマンの恋人、MJのモデルになっているそうです。

<コミックを作る上で大切にしていること>

スタン・リーは、スーパーヒーローにリアリティを持たせることで、他のコミックと差別化を図りました。今となっては当たり前のことかもしれませんが、スーパーヒーローが恋愛をしたり、家賃を払えなくて家を追い出されたり、普通の人間と何ら変わらないという部分があるのは、当時としては画期的だったようですね。また、アイディアは常に身近なところにあるようで、X-MENが誕生したのも、当時の人種差別問題がきっかけだそう。

そうやって数多くのコミックを作っていく過程で、スタン・リーが思ったこと。それは、多くの人々にとって最も大切なことは「楽しんで喜びを得ること」だそうです。世の中で悪いことが起きる中、喜びを与えるのはいいことだから。そこで、エンターテインメントの重要性を実感し、ようやく自分の仕事にも価値がある気がしたと言っていました。

また、自分が読みたいものを描くことも彼の大切にしていることのひとつです。不特定多数を喜ばせようとしてもダメ。よく知らない相手ではなく、よく知ってる自分を満足させるんだと。世間では、「自分が読みたいものを作るか」、「まわりが求めているものを作るか」ってよく言われますし、どちらのスタンスでもヒットする作品はありますが、スタン・リーに関しては完全に前者だったわけですね。

<時代がマーベルを大きくしたのか>

結局のところ、マーベルがここまで大きくなれたのは、スタン・リーの努力に加えて、時代がよかったってのもあるかもしれません。今はもうコンテンツが溢れすぎちゃって、昔みたいに新しいキャラクターを作ろうにも、すでに同じものがたくさんいますよね。あとは、会社が大きくなると、採算性を追求するが故に、尖ったことはしにくいっていう事情もあるんじゃないでしょうか。そういう意味では、前例がなかった昔の方がやりやすい部分はあった気もします。でも、常に自分の感性を信じて、ファンを大事にして、ここまでマーベルを大きくしたスタン・リーの貢献度は計り知れません。とはいえ、倒産の危機に陥ったりもしてるんですけどね。その結果、スパイダーマンの権利がソニーへ(笑)そこらへんは今回のドキュメンタリーでは触れられていませんが。。。

<そんなわけで>

世界最大級のコンテンツを誇るマーベル・コミックを作り上げた男の、エンタメに対する考え方が知れるとてもいいドキュメンタリーでした。マーベル好きじゃなくても参考になる部分はあるはず。ただ、後半がけっこう駆け足というか、大体10年刻みで話が進んでいくのに、1972年の後は一気にに2010年になってしまったのがだいぶ飛んだなと思いました。その間に倒産騒動もあったので、そこらへんの事情もぜひ知りたかったですね。


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