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生まれ変わっても愛する人に会いに行く純愛モノだけど、一歩間違えればホラーになりうると思った『月の満ち欠け』

【個人的な満足度】

2022年日本公開映画で面白かった順位:146/185
  ストーリー:★★★☆☆
 キャラクター:★★★★☆
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★☆☆

【作品情報】

  製作年:2022年
  製作国:日本
   配給:松竹
 上映時間:128分
 ジャンル:ラブストーリー
元ネタなど:小説『月の満ち欠け』(2017)

【あらすじ】

仕事も家庭も順調だった小山内堅(大泉洋)の日常は、愛する妻・梢(柴咲コウ)と娘・瑠璃のふたりを不慮の事故で同時に失ったことで一変。

深い悲しみに沈む幼いのもとに、三角哲彦と名乗る男(目黒蓮)が訪ねてくる。事故に遭った日、小山内の娘が面識のないはずの自分に会いに来ようとしていたこと、そして彼女は、かつて自分が狂おしいほどに愛した“瑠璃”という女性(有村架純)の生まれ変わりだったのではないか、と告げる。

【愛し合っていた一組の夫婦】と、【許されざる恋に落ちた恋人たち】。まったく関係がないように思われた2つの物語が、数十年の時を経て繋がっていく。

それは「生まれ変わっても、あなたに逢いたい」という強い願いが起こした、あまりにも切なすぎる愛の奇跡だった——。

【感想】

原作小説は未読です。いわゆる生まれ変わり系、転生系の映画で、とても感動しそうな設定だったんですけど、個人的にはそこまで響かなかったんですよね。。。

<泣けそうなのに泣けなかった理由>

世界観はすごくロマンチックでファンタジックでした。生まれ変わっても前世の記憶が残っていて、生前叶えられなかった愛する人との再会を果たそうとする話ですよ。もう号泣必至かと思うような設定じゃないですか。でも、、、泣けませんでした。。。

理由をいろいろ考えてみたんですが、エピソードが2つに分散しちゃったのは大きいかなと思いました。小山内とその妻および娘の話。そして、三角と瑠璃の話。この2つが、"生まれ変わり"を通じて交差するのが感動ポイントなんだとは思います。でも、どちらを主に観ればいいのかわからなくなってしまったんですよ。小山内がメインなので、最初は彼に寄り添っていけばいいのかなと思って観ていたんですが、その割には三角と瑠璃の尺も長く、どちらに心を寄せればいいのかわからなくなってしまって。。。さらに、いずれのエピソードも回想という形で過去を振り返っているので、なんだか経緯説明みたいに感じてしまい、感情移入しづらいってのもありました。

<すべての土台となる設定に疑問>

今回の話、主人公は小山内なんですけど、物語の土台となる三角と瑠璃の関係性がちょっと弱く感じました。この2人が強く愛し合っていたからこそ、瑠璃が生まれ変わっていくんですが、その愛の強さがあんまり伝わってこなかったんですよね。偶然の出会いからのスタートはいいものの、その後から三角と瑠璃が惹かれ合う要素があんまりなさそうに見えてしまって。特に瑠璃から三角に対して、惚れるポイントあったかなっていう。まあ、瑠璃の置かれた辛い立場を踏まえれば、自分に好意を寄せてくれる人になびいたっていうこともあるかもしれませんけど、あまり明確な動機が描かれていないからか、瑠璃が生まれ変わってまで三角に会いたいっていうのが、どうもピンとこなかったんですよね。むしろ、「執念すごっ、こわっ」って思っちゃうほどでして。一歩間違えれば、『転生したらストーカーだった件』ってタイトルになりそうでもありました(笑)

<気になるところ>

全体的に素敵な話ではありますが、気になるところもありました。正木(田中圭)というキャラクターです。もともと彼は瑠璃と関係のある人物なんですけど、生まれ変わった瑠璃を、生まれ変わりだって気づくんですよ。「やっぱりキミか」って。なんでわかったんでしょうか。ヒントというほどでもないですが、匂わせるような部分があるにはありました。でも、それで生まれ変わりだって普通は思わないですよ。別に生まれ変わり自体がポピュラーな世界でもない上に、瑠璃が亡くなってから18年ぐらい経つのに、そこで生まれ変わりだと気づける方がすごいなって。ここは一番モヤッとしたところですね。

あと、ラストの高田馬場でのシーン。ここがクライマックスになるんですけど、、、三角と瑠璃の姿でしか描かれていないんですよ。あれ、“現世”での光景を考えたら、なかなかにシュールな画になるんじゃないかなあと、冷静な目で見てしまい、ここも気分が乗り切れずじまい。セットとCGで再現された1980年代の高田馬場のリアルさはすごかったですけど。

<そんなわけで>

設定自体はよかったものの、個人的には感情が高ぶりづらい内容だったでしたね。ただ、大泉洋の演技はすごくよかった。大切な人を失ったときの泣きじゃくる彼の姿は、それだけで一見の価値あると思います!

ちなみに、本編とは何の関係もなくて恐縮ですが、生まれ変わり系の話で、直近で一番感動したのは、『僕のワンダフル・ライフ』(2017)と『僕のワンダフル・ジャーニー』(2019)という映画です。"飼い主を幸せにすること"を自らの使命と考えている犬が、事故や寿命で亡くなるたびに生まれ変わって、再び飼い主に会いに行くという話です。環境が変わっていく中で、変わらない犬の健気な姿勢に大号泣だったのでオススメです。


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