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【ネタバレあり】人よりワンテンポ速い彼とワンテンポ遅い彼女が紡ぐ奇跡のラブストーリー『1秒先の彼』


【個人的な満足度】

2023年日本公開映画で面白かった順位:94/107
  ストーリー:★★★☆☆
 キャラクター:★★★★☆
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★☆☆

【作品情報】

   原題:-
  製作年:2023年
  製作国:日本
   配給:ビターズ・エンド
 上映時間:119分
 ジャンル:ラブストーリー
元ネタなど:映画『1秒先の彼女』(2020)

【あらすじ】

ハジメ(岡田将生)は京都の生まれ。いつも人よりワンテンポ早く、50m走ではフライング。記念写真を撮るとシャッターチャンスを逃してしまい、卒業アルバムの写真はことごとく目を閉じている。そんな彼は現在、郵便局で窓口業務に勤しんでいる。

レイカ(清原果耶)も京都の生まれ。いつも人よりワンテンポ遅く、50m走では笛が鳴ってもなかなか走り出さない。現在、彼女は大学7回生の25歳。今は写真部の部室に住み込み、ひとりぼっちで夜食をとりながら、ラジオを聴いている。

ある日、急停車したバスに追突した高校生を看護するハジメの姿を見て、既視感を覚えたレイカ。郵便局でハジメの窓口に行き、胸の名札『皇』の文字を見つめてハッとする。

一方、街中で路上ミュージシャン・桜子(福室莉音)の歌声に惹かれて恋に落ちるハジメ。早速、花火大会デートの約束をするも、目覚めるとなぜか翌日に。

“大切な1日”が消えてしまった…!?

秘密を握るのは、毎日郵便局にやってくるレイカらしい。ハジメは街中の写真店で、見覚えのない自分の写真を偶然見つけるが…。

【感想】

2020年の台湾映画『1秒先の彼女』のリメイク映画が本作です。2021年に日本でも公開され、オリジナル版を観ていたため、今回の映画も鑑賞しました。ちょっと不思議なラブストーリーで、ハマる人はハマりそうな世界観ですね。

<ストーリー的にはまったく同じだけど……?>

この映画、細かな設定の違いはあるものの、よくも悪くもオリジナル版とまったく同じ流れです。なので、すでに内容を知っている人からしたら、そこまで目新しい感じはないでしょうし、逆にこれが初見でも何の問題もなく楽しめるとは思います。唯一の大きな変更点と言えば、メイン2人の性別が入れ替わっているぐらいですね。ところが、たったそれだけなのに、受け取る印象がまるで違います。

まず、オリジナル版でワンテンポ速かったシャオチー(リー・ペイユー)という女性ですが、劇中ではそこまでせわしない印象はなく、ごく普通の女性という感じでした。それが今作のハジメになると、メチャクチャ急かしてくるし、ちょっと自分勝手なところもあるしで、顔はいいのに中身が残念というキャラクターが際立っています。なんか、『大豆田とわ子と三人の元夫』(2021)で岡田将生さんが演じていた中村慎森というキャラクターばりのめんどくささを感じます(笑)

次に、オリジナル版でワンテンポ遅かったグアタイ(リウ・グァンティン)という男性。人と違ったペースで生きているだけで、少し頼りなく間の抜けた印象がとても強かったんですね。それが今作のレイカになると、そういうネガティブなイメージがまったくないんですよ。ちょっと口下手なところがあるぐらいで、好きな人を遠くから見守る物静かな女性という感じでした。性別が変わるだけで、それぞれのキャラクターにこうも違いが出るんですね~。

<すれ違いしか起きなそうな2人に起こった奇跡>

で、この映画の一番面白いところは、そんなテンポが違う2人がいっしょにいられる終盤の展開なんですが、ここはネタバレしないと書きづらいので、内容を知りたくない方はここでページをそっ閉じしてください。




















本当にびっくりな展開なんですが、ある日突然、時間が止まってしまい、その中を動けるのがレイカだけという状況になってしまうんですよ。偶然、街中でハジメを発見した彼女は、同じように止まった時間の中を動けるバスの運転手の協力を仰ぎ、レイカの生まれ故郷へ行くんですね。ここで、今回のリメイク版ならではのナイスな工夫があります。オリジナル版では、なんで時間が止まったのか、やや説明不足だったんですよ。「ワンテンポ遅い」から毎日他の人よりも数秒だけ時間が長い。それを利息と捉え、それが貯まりに貯まった結果、24時間だけ他の人の時間を止めてしまうという設定で、イマイチイメージしづらいなあと。オリジナル版にはも止まった時間の中を動ける人が他にもいるんですが、それは他の人もワンテンポ遅いっていうことなんでしょうかね。そこらへんがモヤモヤしたままだったんですよ。

それが今回の映画ではちょっと違います。レイカは漢字で書くと「長宗我部麗華」と画数が多いんですね。一方、ハジメは「皇一」。だから、レイカが名前を書き終わる頃には、ハジメはとっくに書き終わってコーヒーの1杯でも飲んでるかもしれないんですよ。他の人よりも名前を書くのに時間がかる分、それだけレイカは時間を損しているってことです。その損した分が24時間分貯まると、神様が返してくれて、まわりの時間が止まってしまうというのが今作の設定です。まあ、これはバスにたまたま乗っていたハジメの父親の推論ではあるんですが、こっちの方が説明としてはかなりしっくりきませんか?ちなみに、ハジメの父親は婿養子で、旧姓は忘れちゃいましたが、とにかくクッソ長い名字でした。また、バスの運転手も「釈迦牟尼仏憲(みくるべけん)」という名前で、これまたメチャクソ長い(笑)みんな名前が長いから、こうやって止まった時間の中を動けるんですよ。この名前の画数の多さら来るロスタイムの考えは日本ならではだと思うし、うまい設定だなと感じました。

<そんなわけで>

オーソドックスなラブストーリーかと思いきや、ちょっぴり不思議なスパイスを加えたなかなか面白い展開の映画でした。ただ、オリジナル版とまったく同じ展開なので、内容を知っている僕からしたら、そこまで新鮮さはなかったですし、オリジナル版の方が好きかなって思いました。ちなみに、本作はゆったりとした雰囲気ですが、脚本は宮藤官九郎さんなんですよ。いつももっとテンポのいい作品を書いておられるので、ちょっと意外でした。


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