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重厚感ある世界観はよかったけど、「ヨーイ、ドン!」の「ヨーイ」で終わるというもはや出し方を間違えた感が否めなかった『沈黙の艦隊』

【個人的な満足度】

2023年日本公開映画で面白かった順位:111/136
  ストーリー:★★★☆☆
 キャラクター:★★★☆☆
     映像:★★★★☆
     音楽:★★★★☆
映画館で観たい:★★★☆☆

【作品情報】

   原題:-
  製作年:2023年
  製作国:日本
   配給:東宝
 上映時間:113分
 ジャンル:サスペンス
元ネタなど:漫画『沈黙の艦隊』(1988-1996)

【あらすじ】

日本の近海で、海上自衛隊の潜水艦が米原潜に衝突し沈没した。艦長の海江田四郎(大沢たかお)を含む全76名が死亡との報道に衝撃が走る。

だが実は、乗員は無事生存していた。事故は、日米政府が極秘に建造した高性能原潜〈シーバット〉に彼らを乗務させるための偽装工作だったのだ。米艦隊所属となったシーバット、その艦長に任命されたのが海自一の操艦を誇る海江田であった。

ところが、海江田はシーバットに核ミサイルを積載し、突如反乱逃亡。海江田を国家元首とする独立戦闘国家「やまと」を全世界へ宣言した――。

やまとを核テロリストと認定し、太平洋艦隊を集結させて撃沈を図るアメリカ。アメリカより先にやまとを捕獲すべく追いかける、海自ディーゼル艦〈たつなみ〉。

その艦長である深町(玉木宏)は、過去の海難事故により海江田に並々ならぬ想いを抱いていた……。

【感想】

※以下、敬称略。
原作漫画は未読です。いや、読もうと思ったんですけどね、32巻となかなかに多かったので時間が足らずでして(笑)なので、映画がどこまで再現性が高いかはわからないのですが、これだけは言えます。「かつてないほどの尻切れトンボだった」と。。。

<作品の世界観はよかった>

設定としては面白いですよ。海江田が世界一の原子力潜水艦であるシーバットの指揮を執ったかと思いきや、いきなり独立国家「やまと」を宣言するって流れで。まあ、宣言しただけでまだ誰も認めてはいないんですが、史上初の移動国家じゃんって。海江田の手腕に加え、シーバットの優れた性能や核ミサイルを匂わせるやり方で、アメリカ海軍第7艦隊を翻弄する「やまと」。

中でもすごいなと思ったのがソナーマンです。〈たつなみ〉の南波(ユースケ・サンタマリア)と「やまと」の溝口(前原滉)、彼らの音を聴き分ける能力を目の当たりにすると、深海における音の重要性がよくわかります。相手が今何をしたのか、音でほとんどわかってしまうんですから。

一方、日本では「やまと」にどう対処するかの会議が開かれています。アメリカとの関係や海江田との交渉など、問題は山積みですが、お偉いさん方も一枚岩ではないから、方向性がなかなか決まらずで。いかにも日本らしいですよね(笑)

<こんな終わり方ある?って>

このように、国際政治や核戦争に絡めたストーリーは見ごたえあるなと感じます。がしかし、だ。メインの舞台は狭い潜水艦の中なので、画としては非常に地味です。これで大迫力の潜水艦バトルでもあればいいんですが、そういうのもなく。実際はゼロではないのですが、個人的には戦闘シーンは興奮するようなものではなかったですね。

で、極めつけは終わり方のひどさにあります。これは初日舞台挨拶でもキャスト陣が続編を希望しているぐらいなので書いてしまいますが、ものすごい尻切れトンボなんですよ。「やまと」がこれからどうしていくか、日本としてどう対応していくかってところでエンドロール。「えええええ」って。本当にびっくりするぐらい途中でぶった切るので、おそらく『2』か『3』まではあるんじゃないかなって思うんですが、続編があると明言していないのも歯がゆいところです。天下のアマゾンが製作を担っている割にはずいぶんと中途半端なことをするもんだ。おかげで本作を観るだけでは、海江田の真意がまったく伝わりません。原作漫画を読んでいる人なら、なおさらそう感じることでしょう。

てか、続編がある場合でも、ひとつの作品の中で起承転結があり、ヤマとなる見せ場があるもんなんですが、本作に限っては「起」しかなく、問題提起だけされて放置プレイって感じですからね。。。もし作品が複数にまたがるなら最初からそう言ってくれれば印象もだいぶ変わるのに、完全に出し方を間違ってしまった感はあります。これ、製作側はお客さんがどう思うかわかっていると思うので、いろいろと大人の事情があるんだろうなあとは思うんですけどね。いや、もしかしたら製作側は自分たちは先のことがある程度わかっているから「これでいいだろ!」ってドヤッてるだけだったりして。。。(笑)

<音楽もよかったけど、、、>

BGMはクラシック音楽を採用したり、ハリウッド映画のような重厚感ある曲調のものを使ったりで、映画の世界観とすごくマッチしていたのはよかったですね。ただ、主題歌はAdoである必要があったのかとは思います。あ、彼女が悪いということではまったくないですよ?これ、楽曲提供がB'zなんですけど、もうまんまB'zのメロディーなんですよ。なので、歌っているのはAdoなんだけど、僕の脳内では完全に稲葉さんの声で再生されてたもんですから(笑)

<そんなわけで>

世界観はよかったですし、面白くなる話だというのはわかるんですが、とにかくぶった切った終わりだけが心残りでしたね。なので、その世界観のよさとストーリーのぶつ切り感でプラマイゼロってところですかね。人によってはマイナスになってしまうかもしれませんが。きっと続編はあるでしょうし、それを踏まえて観たらまた違った感想になるとは思うものの、続編が確約されていない今、この映画単品で観るととてつもなく不完全燃焼ではあります。素材がいいだけにもったいない。。。


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