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難民申請の不認定によって何気ない日常が突然奪われる悲劇と家族の絆に目頭が熱くなる『マイスモールランド』

【個人的な満足度】

2022年日本公開映画で面白かった順位:29/91
  ストーリー:★★★★★
 キャラクター:★★★★☆
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★★☆

【作品情報】

  製作年:2022年
  製作国:日本・フランス合作
   配給:バンダイナムコアーツ
 上映時間:114分
 ジャンル:ヒューマンドラマ
元ネタなど:なし

【あらすじ】

17歳のサーリャ(嵐莉菜)は、生活していた地を逃れて来日した家族と共に、幼い頃から日本で育ったクルド人。現在は、埼玉の高校に通い、親友と呼べる友達もいる。夢は学校の先生になること。父・マズルム(アラシ・カーフィザデー)、妹のアーリン(リリ・カーフィザデー)、弟のロビン(リオン・カーフィザデー)と4人で暮らし、家ではクルド料理を食べ、食事前には必ずクルド語の祈りを捧げる。

「クルド人としての誇りを失わないように」

そんな父の願いに反して、サーリャたちは、日本の同世代の少年少女と同様に“日本人らしく”育っていた。

進学のため家族に内緒で始めたバイト先で、サーリャは東京の高校に通う聡太(奥平大兼)と出会う。聡太は、サーリャが初めて自分の生い立ちを話すことができる少年だった。

ある日、サーリャたち家族に難民申請が不認定となった知らせが入る。在留資格を失うと、居住区である埼玉から出られず、働くこともできなくなる。そんな折、父・マズルムが、入管の施設に収容されたと知らせが入る……。

【感想】

これはいろんな人に観て欲しいですね。ドキュメンタリーのようなフィクションでとても見ごたえのある映画でした。内容的には今年2月に観た『ブルー・バイユー』に近い感じですかね。

<日本で起こる難民問題>

この映画はいわゆる難民問題を扱っていますが、邦画では珍しい題材だなと思いました。なぜなら、単一民族というと正確ではないかもしれませんが、日本は他の国と比べたら圧倒的に同じ人種しかいないというイメージがあるからです。移民や難民という問題とはあまり縁がないように感じますよね。

でも、この映画で描かれていることは、今実際に日本でも起きていることなんです。今回焦点が当たっているのはクルド人の家族。クルド人というのは、「国を持たない世界最大の民族」と言われています。クルディスタンという地域はあるものの、それはトルコ、イラン、イラク、シリアの4カ国に分かれており、独立した国家ではありません。

埼玉県にも2,000人ほどのクルド人が住んでいるそうです。映画で描かれている4人の家族は、難民申請が不認定となる悲劇に見舞われてしまいます。在留資格を失ってしまうと、居住地である埼玉県から出られなくなり、働くことも禁止されます。医者に行っても保険も効きません。生活があっても働けないし、病院に行っても高額になるからなるべく健康でいろというかなりのハードモードです。そんな状況でどうやって生活すればいいのでしょうか。

なお、クルド人の大半はトルコ国籍だそうです。難民認定するにはトルコ国内で政治的迫害があると認めることになるため、トルコとの関係を損ねないために、日本政府は難民認定しないらしいです(理解、合ってます?)。

<感動的な家族の絆>

さらに追い討ちをかけるかのように、父親が不法就労で入国管理局に入れられ、サーリャもバイト先のコンビニを辞めざる得なくなってしまいます。それでも生活のためにお金は必要ですからね、ついにはパパ活に手を伸ばそうとも。。。まだ遊びたい盛りの17歳ですよ。受験に恋にと、本来なら享受できたはずの青春が、一瞬にして闇の中へと消えてしまいます。何とも胸がえぐられるような気持になります。自分たちは何も悪くないんです。それなのに、安定した平和な生活すら許されないんですから。

そこで父親はある決断をします。ネタバレになるので詳細は書きませんが、家族を守るために父親の出した解決策の自己犠牲感と、そうしてでも家族を守ろうとした姿はとても印象的ですね。終盤の父親とサーリャの会話はものすごく感動的でした。この家族の未来が幸せであることをただただ願うばかりです。。。

<そんなわけで>

テーマが難民ということで、これまでの邦画ではなかなか目にしない内容だったから、それだけでとても興味深かったです。この先どうなるかわからない不安を抱える17歳の主人公サーリャを演じた嵐莉菜の演技も、初めてとは思えないほどのクオリティでした。しかも、この4人の家族ってリアルの家族ということにも驚きです。今後、いろんな国の人たちが日本を行き来することになる世の中になるでしょうから、こういった国際的なテーマを持つ邦画も増えるかもしれませんね。


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