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ハマス、イスラエル戦争の疑問

1.ハマスの攻撃に関する疑問

 日本人にとって、中東は遠い存在だ。歴史も宗教も複雑だ。いくつかのネット上の動画を見て分かったことは、イスラエルが悪いとか、パレスチナが悪いとか、簡単には言えないこと。そして、ハマスはパレスチナの第一党ではあるが、西側諸国からはテロ集団と認定されていること。
 私は中東の専門家でも何でもない、単なる素人だ。しかし、素人の私でも感じた違和感がある。
 第一に、ハマスはイスラエルに対する攻撃で、なぜ、自らの残虐性を必要以上にアピールしたのか、という疑問だ。人質として拉致する行為は、ある意味で殺人よりも残酷に感じられる。しかも、イスラエル人だけでなく、外国人も対象にしているのだ。こんなことをすれば、イスラエルが激怒するのは分かっていただろう。
 例えば、ミサイルやロケット砲の攻撃だけなら、イスラエルも空軍の攻撃が中心になる。人質として拉致したのは、イスラエルの地上部隊をガザ地区に誘い込むことを目的としているのではないか。
 第二の疑問は、閉鎖されたガザ地区に大量の武器、弾薬が搬入されていたことだ。加えて、統制のとれた攻撃をしてることから、事前に訓練を積んでいたことが分かる。しかも、それをモサドに気付かれないで実行したのだ。
 ハマスは、どのような方法で武器、弾薬を搬入し、保管したのか。そして、どこで訓練をしたのか。
 ハマスによるイスラエルへの攻撃は短期間で終わった。その上で、ハマスは「我々の作戦は終了したので、停戦に向けて話し合いたい」という声明を出した。私には、この声明が「我々は一日の攻撃しかできない。それ以上の武器弾薬は用意していない」と聞こえるのだ。これもガザ地区への誘導ではないか。

2.ハマスの裏の反米勢力

 ハマスの対イスラエル戦略とはどのようなものだろうか。日本のテレビ局では、中東専門家が「我慢の限界」「堪忍袋の緒が切れた」などの衝動的な理由を語っている。しかし、そんな単純な理由による攻撃ならば、もっと無計画かつ衝動的な戦闘で終わるはずだ。
 イスラエルとパレスチナには圧倒的な戦力差がある。普通の戦争で、パレスチナが勝てるはずがない。それを踏まえた上で、一定の成果が見込めなければ攻撃は仕掛けないだろう。
 戦争を起こすには、軍を維持する資金、武器と弾薬、訓練が必要だ。今回は、その条件が揃ったから攻撃ができた。
 まず、資金はどこから来たのか。可能性が高いのは、イラン、中国である。
 イランはイスラエルの存在を認めていない。そこで、様々なテロ組織を使ってイスラエルを攻撃している。ハマスにも以前から支援を行っていたし、今回もハマスを全面的に支援すると発表している。
 米国バイデン大統領は次期大統領選挙のために、中東和平に動いていた。その一つが、イランとの関係修復である。米国は、イランと人質交換を行い、韓国に凍結していた60億ドルの資産凍結を解除した。この資産は人道的な目的にしか使わないというが、その一部がハマスに流れた疑いはある。
 中国は、米国の軍事力を分散したいと考えている。米軍がウクライナとパレスチナに関与すれば、台湾海峡への圧力は弱まるからだ。
 これは、ロシアにとっても同様である。米国内部では、ウクライナへの支援に反対する意見も少なくない。米国のウクライナ支援が停止されれば、ウクライナとNATO戦争を継続することができなくなる。そうなれば、ロシアは有利な条件で停戦に持ち込むことが可能になる。
 こうして見ると、ハマスは国際的に孤立していないことが分かる。むしろ、ハマスのテロにより、反米勢力が結集する可能性が高まっている。

3.平和と対立による既得権

 ハマスのテロ以前、中東は平和に向けて動いていた。
 サウジアラビアとイランは、中国の仲介で国交正常化を果たした。また、サウジアラビアはイスラエルとも正常化交渉を進めていた。
 米国のバイデン大統領も、中東和平を目指し、イランとの関係修復に動いていた。
 それが、今回のハマスのテロ攻撃によって全てが崩壊したのだ。
 対立から平和への動きで、既得権を奪われる勢力もある。例えば、平和になると過激なテロ組織は必要なくなる。資金も集まらなくなる。
 イスラエルもパレスチナと対立しているからこそ、米国の支援がある。平和になれば、独裁的政権は弱体化する。それで困る勢力もある。
 イスラエルとイランも同様だ。サウジアラビアや米国の仲介で国交正常化すれば、両国ともに政権交代が起きるだろう。平和な民主国家を望む国民は多いが、一部の支配者は自らの立場を失う。
 こうした対立構造の上に、巨大な軍需産業、戦争ビジネスが存在している。戦争ビジネスにとって、独裁政権は利益の源である。また、独裁国家に反対する反政府勢力も利益につながる。
 そう考えると、どちらが正義でどちらが悪かという議論には、あまり意味がないのかもしれない。むしろ、戦争経済から平和経済への移行をどのように行うのか。そのためのビジョンの提示と国際協力、支援等について考えることが必要なのではないだろうか。
 

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