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シナジープランニング代表。ファッションビジネスのコンサルタント。講師や執筆も行なってい…

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シナジープランニング代表。ファッションビジネスのコンサルタント。講師や執筆も行なっています。テキスタイル、アパレル、流通までのトータルな企画、マーケティング、ブランディングなどを得意としています。

最近の記事

精神の価値とモノの価値

1.なぜ勉強して名門校を目指すのか?  世間でいうところの理想の人生とは、どんな人生でしょうか。  まず、名門幼稚園に入り、名門小学校、名門中学校へと進む。名門高校から名門大学に進学し、その間、ずっと学業優秀。できれば、スポーツもできて文武両道が理想です。  就職は、官庁か一流企業。そこからは出世競争に邁進します。官僚なら次官、企業なら社長を目指す。  途中で競争に破れると、出世コースから外され、左遷されたり、子会社に出向されたりします。それでも、生活の心配はないし、十分に

    • 「3Dプリンターの家」による新しいライフスタイル

      1.3Dプリンターの家「Sphere(スフィア)」の革新性  2022年3月、愛知県小牧市に3Dプリンターの家、「Sphere(スフィア)」のプロトタイプが完成した。広さ10平米の球体状の構造で、広さは10平米、完成までの所要時間が合計23時間12分で300万円で販売が予定されている。  まずは、グランピング用途として10棟を建設し、2022年8月には一般向けの販売もスタートさせる見込みだ。10平米を超えない場合、現行の建築基準法外の建物と扱われ、水回りの設備はない。一方で

      • 「カナ刺し」のすすめ

        1.刺し子とは?  刺し子(さしこ)とは、二枚の布を重ねて、太い糸で全体を埋めつくすようにステッチする技法で、保温、補強、硬化等を目的にしたもの。  江戸時代の火消し装束、手刺しの胴衣等では、ステッチ糸を引き締めることで、布に細かな凹凸のしぼを作り、厚みを出し、強度と硬度を増し、身体を保護する機能を高める。また、刺し子によるしぼが空気を含み、保温性も高まる。これが本来の刺し子の特徴である。  現在は、刺し子に似せた「刺し子織」を「刺し子」と呼んでいる。刺し子織は、糸を引き締

        • 中国経済が復活できない理由

          1.中国は独裁体制で動いている  中国は中国共産党の一党独裁であり、中国共産党は習近平の独裁体制である。つまり、中国の運命は習近平が握っている。この構造は、中国共産党だけでなく、多くの企業にも共通している。一般企業も、社長の独裁体制で運営されており、社長は万能であると社員も信じている。中国全体が独裁組織によって構成されているのだ。  中国が経済成長したのは、米国と日本が中国との国交を回復したことに端を発している。米国の金融資本は中国に投資し、日本企業は中国企業との合弁企業を

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          競争から共生への移行

          1.バブル経済下の不満  80年代、日本は高度経済成長を続け、私は20代だった。現在の若者にとって、80年代は輝かしい時代と映っているだろう。しかし、当時の私は日本という国に沢山の不満を持っていた。  バブル経済の最盛期には、「銀行から金を借りて株を買うべきだ」と主張する経済学者が多かった。銀行も株を買っているんだから、個人もそうすべきだと。地代も人件費も上昇し、物価も高騰した。  現在から見れば羨ましい状況だが、当時はそれが閉塞感となっていた。バブル経済下では、真面目に働

          競争から共生への移行

          2024年、世界と日本の展望

          1.中国、米国の経済モデル崩壊  中国経済が崩壊しようとしている。この流れは2024年も変わらないだろう。2024年は、世界第二位の経済大国がどのように崩壊していくかを観察する年になる。最悪の場合、再び文化大革命が実行されるかもしれない。  中国経済の悪化は、コロナ禍だけが原因ではない。それ以前から、不動産バブルは進行していたし、供給過剰も起きていた。コロナ禍が過ぎれば、経済が回復するという説には根拠がなかったのだ。  中国経済が成長するには、人民の所得をあげ、国内市場を育

          2024年、世界と日本の展望

          ハマス、イスラエル戦争の疑問

          1.ハマスの攻撃に関する疑問  日本人にとって、中東は遠い存在だ。歴史も宗教も複雑だ。いくつかのネット上の動画を見て分かったことは、イスラエルが悪いとか、パレスチナが悪いとか、簡単には言えないこと。そして、ハマスはパレスチナの第一党ではあるが、西側諸国からはテロ集団と認定されていること。  私は中東の専門家でも何でもない、単なる素人だ。しかし、素人の私でも感じた違和感がある。  第一に、ハマスはイスラエルに対する攻撃で、なぜ、自らの残虐性を必要以上にアピールしたのか、という

          ハマス、イスラエル戦争の疑問

          ビジネスも恋愛も相手の目を見ることから始まる

          1.相手の目を見ることで安心する  街中や電車の中で、外国人の異性の方と目が合ったことってありますか。私は何度かあります。これって自分が女性を見ているということなんですよね。そして、相手も私を見ていたということです。だから目が合う。  互いに目があった瞬間、私は微笑むようにしています。そして、軽く首を傾げたり、あるいは小さな声で「ハイ」と言ったりします。多くの場合、相手も微笑み、何事もなくそのまま離れていきます。こんな瞬間的なアイコンタクトであっても、何となく温かな気持ちに

          ビジネスも恋愛も相手の目を見ることから始まる

          地域社会に貢献する商業を目指そう

          1.高度経済成長は「三方よし」から  仕事をする目的は何でしょう。  日本では「三方よし」といって、「売り手良し」、「買い手良し」、「世間良し」の三つの「良し」が目的とされていました。売り手と買い手がともに満足し、また社会貢献もできるのがよい商売ということで、近江商人の心得になっています。  ここには、「株主良し」とか、「資本家良し」はありません。考えてみれば、日本が高度経済成長を維持していた時代は、銀行との株の持ち合い等により、日本企業は海外資本家の支配から独立していまし

          地域社会に貢献する商業を目指そう

          戦争の時代と「鬼」コンセプト

          1.異界から鬼門を通じて鬼が来る  鬼について考えてみたいと思います。鬼の姿の特徴は、頭に「角」が生えていて、「虎」の腰布を身につけています。  この姿は鬼門に由来しています。鬼門とは、北東(丑と寅の間)の方位・方角のことで、日本では古来より鬼が出入りする方角であり、忌むべき方角とされています。艮が鬼を象徴する方角なので、鬼の姿は牛の角と虎の腰布ということになりました。  古来、都の鬼門と裏鬼門、つまり、北東と南西の方角には、鬼が侵入しないように寺社が設置されていました。

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          ファッションに「流行」は必要か

          1.ファッションは金持ちが楽しむもの?  ファッションを楽しむという行為、あるいは衣装を競い合うという楽しみは、もっぱら上流階級のものでした。  ファッションは常に変化します。シーズン毎に新しいコレクションが発表され、それをお金持ちが注文します。  高級注文服と訳されるオートクチュールがあるのは、オペラ座がある都市だそうです。オペラ劇場、オペラ歌手、オーケストラを支える富裕層が、一定以上存在するいうことです。  かつて、多くのファッションデザイナーは、上流階級の一員でした。

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          日本人の笑顔の力

          1.日本人が意味なく笑う意味  日本人は、嬉しい時だけでなく、困った時や、嫌なことがあった時でも、笑うことがあります。何もなくても、何となく笑うこともあります。そんな日本人を見て、不気味だと思う外国人は少なくありません。  欧米人にとって、表情は感情と直結しています。というか、直結すべきと思っています。嬉しければ笑い、悲しければ泣きます。内面の感情は、外面に表現してこそ意味があります。何を考えているか分からない人間は、不気味な存在なのです。  この論理でいけば、真面目に勝負

          日本人の笑顔の力

          ファッションとコピーの悩ましい問題

          1.人真似は恥か?  尊敬する人、憧れの人の服装を真似ることは珍しくありません。その人に近づきたいと思う気持ちがそうさせるのです。  これは案外、普遍的な気持ちでしょう。ファッション雑誌のモデルの格好を真似したり、人気ショップのスタッフの真似をする。あるいは、コスプレも、好きなキャラクターの真似をする行為です。  ファッションデザイナーを目指す学生も、好きなデザイナーの作品やファッション雑誌を眺めながら、デザイン画を描きます。アパレルに勤めるプロのデザイナーも、トレンド情報

          ファッションとコピーの悩ましい問題

          コロナ禍の抑圧に対する怒りと反発

          1.コロナ禍を振り返る  学生は勉強し、社会人は仕事します。企業経営者は収益を上げ、社員を雇用します。会社員は働いて、会社の利益に貢献します。それぞれの人が役割を果たすことで、社会から評価され、褒められました。これが常識でした。  その常識は、コロナ禍で崩壊しました。学生は「学校に来るな」と言われ、会社員も「会社に来るな」と言われました。小売店、飲食店は「店を閉めろ」と言われました。  人々は、常にマスクを着用し、手指のアルコール消毒を行いました。そうした対策のお蔭で、ワク

          コロナ禍の抑圧に対する怒りと反発

          ファッションと文化盗用、偏見、差別

          1.ヨーロッパが認定して価値が生れる  ファッションの源流は、ヨーロッパの貴族階級の服装です。貴族の服を作る専門職が存在し、高度な手仕事で一点ものの服を作っていました。これがオートクチュールの原点です。  貴族階級が消え、オートクチュールの顧客はブルジョアジーに変わりました。  その後、大量生産の時代になりますが、ファッションは手工業の世界に留まっていました。  日本が本格的な既製服の時代になったのは、1970年代以降であり、それ以前はオーダーメイド主流でした。  プレタポ

          ファッションと文化盗用、偏見、差別

          懐かしのファッションを復刻する

          1.懐メロとは何か?  懐メロは「懐かしのメロディ」の略で、狭義には、1930年代から1950年代までの歌謡曲を指します。昔は、歌謡曲を流行歌と呼び、常に新しい歌が発表され、人々は新しい歌を追いかけていました。  70年代以降、団塊の世代がグループサウンズ、フォークソング、ニューミュージック等の新しいジャンルを生み出すにつれ、旧世代との世代間ギャップが広がりました。彼らの歌はビートルズなどの洋楽がベースにあります。戦前、戦中、戦後と続いてきた歌謡曲、演歌は、小唄、端唄、浪曲

          懐かしのファッションを復刻する