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君色想いー生理タブーとアイドルらしさー


中居正広 ON & ON AIRレポ

「これ、言っていいの?」とスタッフに確認した上で「生理痛?…のやつだったの」と恥ずかしそうに口にした。解熱、生理痛、痛み止めに効果があるため、それでなんの問題もないはずだが、来月49歳になるアイドル中居はパッケージにある「生理痛」の文字に過剰反応。「いやっ…。えっ…。間違えてんのかなと思って。それを手にしたのも恥ずかしいというか。持っちゃいけないものを持ってるような気がして」と激しく動揺した。マスクなどで顔が隠れていることもあって「オレ、女性と間違われてんのかなって。いや、そんなことないな。えっ?オレ、可愛いところ、あるかぁ…。いや、そういうことじゃない!」とドラッグストア店内で自問自答する中居。

 悪意がなくて、とにかくイノセントなトーク。このトークはプチ炎上していた。あるいは、引かれていた。無垢と無知で彩られた大人が「なんの問題もないはず」のことできゃっきゃと過剰反応する姿に、ファンを困惑させてしまうことがある。

推しのセルフ・ブランディング

 悪意のせいでなんか良くないことを言ってしまうわけでもないし、思いやりのおかげでなんか良いことを言えるわけじゃない。大人しく勉強して、結果的に自分言動とその影響力のあり方が変化する。そんなコンシャスなあり方が、アイドル性だと思う。アイドルとしてファンに言葉を届ける以上は、傷つく人や蔑ろにされている人がいないか、あらゆる想像力が必要(上岡、2023)なんだ。
 そのためには、日々のできごとを社会構造の問題として捉えて言語化していく機会・訓練(清水・ハン・飯野、2022)が必要なのだと思う。
 そして、そんな生き方を見せてくれる人を推してれば、酔いから醒めて現実に帰ってお風呂にちゃんと入って、反省と抵抗をしたくなる。もっと抵抗して習慣と現実を変えたくなる。推せば推すほど、それに比例して推しのことなんか忘れてる。コンテンツを愛すると視聴時間が減ってる。「〇〇ちゃん担」から、推しがしてることは私の生活でいうと何だろうというふうに、「私担当」になってく。  

推しのメンタルヘルスーわたしらしさー

 ジャニーズアイドルのグループの組ませ方は、「マッチョ過半数にナヨナヨした男の子数人」になることがたまにある。

 SMAP(つとぷ+新しい地図)。Sexy Zone(ふまけんしょうり+聡マリ)。Kis-My-Ft2(前の3人+舞祭組)が思い出される。前者が2枚目で後者が3枚目といった役回りになって、後者をイジる。当時インターネットに、そんなマッチョなからかい方に戸惑う質問と回答が多く寄せられてた。

 書き初めに「漢」と書くことなんてなかったであろう岩橋くんしかり、フェミニスト的な発言をしていたマリウスしかり、価値観の新しいメンバーがいなくなる。性犯罪(嵐の櫻井くんはあろうことかそれを「不祥事」と言っていたが)常習のおじいさんの采配で、おバカキャラのマッチョが残って、コンシャスな男の人たちがいなくなったり病んだりする。

推し活とセルフラブ

 推しは推しのために生きてない。一生懸命自己表現をしている。だから、そんな推しを推すほど、推しのコンテンツを楽しむ時間が減る。推しにエンパワメントされるということは、推しに憧れる(ワナビーになる)ということじゃなく、推しがやってることの私バージョンをしたくなること。
 推しが曲作りのために文学を読んでる様子にインスパイアされれば、文学を読むのではなく、その私バージョンをしたくなる。社会的になるためじゃなく、非社会的になるための存在が推しになってしまう。「好きな映画や好きな音楽とかに影響されすぎて今を見失うなよ」。

アイドルばかり聴かないで

 現実から離れるために、推しや自己啓発が扱われてしまうことがある。もちろん、いったん離れるための楽しいカルチャーだ。けど、推しは推しにガチ恋していないし、推しは推しの二次創作で忙しくしてない。推しは推しのために生きてない。

 いろんなカルチャーは、より現実にコミットするための、あるいは、再び社会的になるためのメディアだ。自らを匿名化するんじゃなく、一緒にまなざしを揺るがしたくなる存在。
 一方的な期待とまなざし(アイドル視)を逆手に取りながら、あるいは心底悩みながら、それをゆるがすアイドル。アイドル最高。


【引用・参考】

上岡磨奈(2023). アイドル・コードー託されるイメージを問うー 青土社

清水晶子・ハン・トンヒョン・飯野由里子(2022). ポリティカル・コレクトネスからどこへ 有斐閣


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