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音楽レヴュー 2

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2020年2月の記事一覧

Grimes『Miss Anthropocene』



 カナダ生まれのグライムスことクレア・バウチャーは、4ADからリリースの3rdアルバム『Visions』(2012)がキッカケで、世界的なポップ・スターになった。
 このアルバムでグライムスは表現力を飛躍的に高め、メロディーを強調することで幅広い層に届くキャッチーさも得ている。1stアルバム『Geidi Primes』(2010)や2ndアルバム『Halfaxa』(2010)で顕著だったプロダ

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Andras『Joyful』



 オーストラリア出身のアンドリュー・ウィルソンは、さまざまな名義を使い分けてきた。幽玄なバレアリック・サウンドが特徴のハウス・オブ・ダッドに、ファンクの要素が漂うディープ・ハウスを鳴らすアンドラス・フォックス。その多面性に多くの人々が魅了され、アンドリューはオーストラリアのエレクトロニック・ミュージック・シーンに留まらない存在となった。日本も含めた世界中の都市でパフォーマンスを繰りひろげ、観客

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J Hus『Big Conspiracy』



 イースト・ロンドン出身のラッパーJ・ハスは、イギリスの音楽シーンを牽引する男だ。アフロビート、ダンスホール、ヒップホップ、R&Bなどの要素を交雑させた音楽性はアフロスウィングと形容されることが多い。いまでこそ、このジャンルは定番のひとつになったが、それをいち早く鳴らしていた彼は紛れもなく先駆者の1人だ。

 自身のハードな人生を反映した歌詞も彼の持ち味だ。さまざまな固有名詞や比喩を駆使して、

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BVNDIT(밴디트)の“Cool”は、男になるだけが生きる手段じゃないと教えてくれる



 BVNDIT(バンディット)は、MNHエンターテインメントに所属する韓国の5人組グループ。2019年4月にデビューしたばかりの新人で、同年11月にはファースト・ミニ・アルバム「BE!」をリリースしている。
 筆者にとって、彼女たちは可もなく不可もなくという感じの存在だった。ダンスと歌のレベルは高く、曲も良い。“Hocus Pocus”や“Dumb”などのMVでうかがえる表現力も悪くない。ただ

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Mercston『Top Tier』



 イーストロンドンが輩出したラッパー、メルクストンの歩みは少々奇妙だ。2000年代初頭からグライム・シーンで活躍し、盟友のゲッツといったさまざまなラッパーと共演もしている。2006年の『Da End Of Da Beginning』など、音源をまとめた作品も多い。ただ、そうした根強い人気があるにもかかわらず、正式なスタジオ・アルバムは1度もリリースしていない。そのせいか、メルクストンをカルト的

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DreamNote(드림노트)「Dream Wish」



 2018年11月、8人グルーブとしてデビューした韓国のDreamNote(トゥリムノトゥ)。2枚のEPを残すなど順調に活動してきたが、2019年9月にハビンとハンビョルが脱退。K-POPではよくあることと理解していても、デビューから1年も経っていないなかでの出来事は筆者に少なくない驚きをあたえた。

 「Dream Wish」は、6人編成になり初めての作品。結論から言えば、良質なトラックが揃

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