マガジンのカバー画像

音楽レヴュー 2

197
音楽作品のレヴューです
運営しているクリエイター

2021年6月の記事一覧

The Volunteers(더 발룬티어스)『The Volunteers』



 韓国のアーティスト、ペク・イェリンは非常におもしろい。2012年にJYPからデビューしたK-POPユニット15&(フィフティーンアンド)の元メンバーとしても有名な彼女は、ソロになってからより才能を解放している。とりわけ、内省的な詩世界を描いたファースト・ソロ・アルバム『Every letter I sent you.』(2019)、ハウスやUKガラージといったダンス・ミュージックの要素を巧み

もっとみる

BIBI(비비)「Life is a Bi…(인생은 나쁜X)」は優しい悪魔のつま先



 筆者からすると、韓国のアーティストBIBI(ビビ)はアウトサイダー的な視点が強い女性に見える。2019年に公式デビューを果たした彼女は、愛や恋人関係を歌うことが多い。それ自体は珍しいことではなく、むしろポップ・ソングにおいて普遍的と言っていい。

 BIBIがおもしろいのは、そういった題材を歌う際、自己破壊的姿勢が目立つところだ。たとえば“쉬가릿 (cigarette and condom)

もっとみる

CHAI『WINK』



 日本の4人組バンドCHAIは、便宜的に言えばロック・バンドということになるのだろう(実際にそう紹介するメディアもある)。「ほめごろシリーズ」(2017)収録の“クールクールヴィジョン”ではパンキッシュなグルーヴを響かせるなど、過去の曲群を聴くとロックな側面も確かにうかがえる。

 だが、それはCHAIが見せる多彩な表情のひとつに過ぎない。“sayonara complex”はブロンディーの“

もっとみる

Jorja Smith「Be Right Back」



 イギリスのシンガーソングライター、ジョルジャ・スミス。ディジー・ラスカル“Sirens”(2007)をサンプリングした“Blue Lights”(2016)がデビュー曲の彼女は、光速レヴェルの速さでスターへの階段を駆けあがった。ドレイクやストームジーといったアーティストと共演し、映画『ブラックパンサー』(2018)から生まれたサウンドトラック・アルバム『Black Panther: The

もっとみる