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くわがきあゆ『レモンと殺人鬼』

※7月20日分

くわがきあゆの『レモンと殺人鬼』を読んだ。

この著者の本を読んだことは無かったが、鮮やかな装丁をしていたので思わず手に取ってしまった。誰が書いたかということから、本を選んでもよいが、それだと有名な本やオススメ等された本を手に取りがちになってしまう。自分の足で書店を歩いて、装丁やデザインからジャケ買いするのもけっこう楽しい。

特にこの本はこのミステリーがすごい大賞を受賞した作品だそうで、帯では斎藤なぎさ(誰か知らない)という人がオススメしていたので、ハズレを引くこともないだろうということで購入した。


感想的なものを少し書いてみる。ネタバレ無いように努める。

まず、タイトルに「レモン」が入っているが、そんなにレモンが重要なキーワードだということはないのうに感じる。ストーリーの中でレモンはまったく無関係ということもないが、個人的にはもっと他のタイトルがあったように感じた。

ストーリーはミステリーやこのミス大賞をとる作品らしく、どんでん返しによって意外性を突きつけられるし、主語を語らない視点で見せることによって、いい意味でのミスリードを生む。それによって読み進めるほどにのめり込んでしまう。

この本のおもしろみで言えば、各々の本音や本性というところだろうか。登場人物が色々出てくるが、それぞれにそれぞれの顔がある。良い人そうで変な人だったり、ビジネス主義的な顔があったり、よからぬ願望を抱き続けていたりである。

なんだかんだ実は一番恐いのは主人公かもしれない。最初は真面目で大人しい人物として描かれるが、話が進んでいくと、その本心が明らかかになってくる。そこが恐い。

印象的だったのは、主人公が父のレストランを手伝う幼少時のシーンである。ここでは、親の妹と自分への接し方の違いや、姉妹での立場の違いが、陰と陽で表されている。陰として手伝う自分、はたまた陽として手伝う妹、そこに主人公の闇があるのだ。

この対比を見ていると、映画『US』を思い出した。

この映画では地上にいる人間と地下で暮らすクローン人間の陰と陽の対比が描かれている。本書とは怖さのベクトルが異なるが、陰と陽の対比がテーマになっているという点では似通ったところがある。

また、「虐げられる側」「マスコミ」「少年犯罪」といった言葉が出てくる。これらは現代社会において、ネガティブな文脈で語られることの多い事柄でもある。そういった状況にある
当事者の目線に立った立場を代理経験するという意味でも本書は意味深いと感じる。


うまくまとめることができなかったが、おもしろいので読んでみるといい。

頂けたサポートは書籍代にさせていただきます( ^^)