41日目 笑う門だよ福よおいで

朝4時50分。いつになく早く目を覚ます。あと10分で、はす向かいベッドの奥様が転院のため、出発する。私がこの病棟に来る前からずっとこの部屋にいらっしゃった、先輩スーパーウーマンだ。遠方に転院することになったが、転院先の事情で午前中のうちに到着しないといけないらしく、この時間の出発となった。お別れを言いたい私は、頼まれてもいないのにこの時間に起きたのだった。

「お気をつけて」「お元気で」

いなくなったベッドはあっという間にベッドメイキングされ、次の患者さんを待つ。きれいに整えられた様をみると、寂しい気分になった。

二度寝をしていつもの時間に起きる。体温と血圧を計り、朝食、トイレを済ませる。

午前中にリハビリ2件。

言語聴覚療法リハビリでは「ハノイの塔」といわれる、木の立体パズルをする。真ん中に穴の開いた円形の板が、大きいものから小さいものまでそろえられている。3本の棒がたっているスタンドに、設置されているところからスタート。上にあるものほど小さい円になっていて、山のように三角がかたちづくられている。私はこれから、「ひとつずつピースを動かす」「小さいピースの上に大きいピースは乗せられない」「動かすピースをどこかに置いておいたり、持っておくことは禁止(必ず3本のうちどれかの棒にさすこと)」というルールの下、指示されたノルマを達成していく。3つバージョンをクリアすると、4つ、5つとピースは増えていく。コツをつかむまでが、難しい。

作業療法リハビリでは、左手の可動域をひたすら広げていく。ほとんど前日と変わらないが、一週間かけると、少し成果を確認できる。焦らない焦らない。指を一本ずつ動かしたいところ、どうしても小指に薬指がつられてしまう。これはどうにもならない。構造上仕方がない。仕方がないのに、OTさんと私はこの動きがツボにはまってしまった。つられてしまう薬指がおかしくておかしくて、笑いが止まらない。私が笑う時は、のどの穴をおさえないと穴を塞ぐガーゼとテープがはがれてしまうので、一苦労だ。

昼食後、理学療法リハビリ。ベッド上でチューブをつかったストレッチ。するといつもレントゲン室に連れて行ってくれる介護スタッフさんがやってきた。PTさんと私は顔を見合わせる。CT検査に呼ばれたのだ。創外固定をしてから6週間、待っていた、この時。骨盤よ、しっかりくっついていてくれと、祈る。

結果を待つ。待つが、今日は整形外科の手術が入っている日ということで、先生方は忙しく、まだCTの結果を見ていないらしい。今日のうちに結果発表だと思っていたが、明日になりそうだ。そわそわして、就寝の時間を迎える。



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