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星降る夜

あの日の夜、君の部屋。南向きの窓。
そこから見上げた星が降る夜を私は今でも覚えている。

透き通るような冷たい空気だった。
私の心を、すうっと通り抜け、何もかも見透かされているようなそんな空気。

ーーーーーーー

君の父親は単身赴任で、お母さんは看護師で、君はお母さんと二人で暮らしていた。お母さんが夜勤で帰ってこない夜は、決まって私を家によんでくれた。高校生だった私は、家族には友達の家に泊まってくるとーー今思えばお決まり文句のような嘘をついてーー家を抜け出した。

君のために用意された夕食を君は私に食べてと、君はスーパーのお惣菜を買って食べていた。
私がそっち食べるよと言うと、
こんな体に悪いもの食べさせられないよと
君は言った。

夕食を食べ終えると、一緒にお風呂に入った。
泡立てネットでふわふわに作り上げた泡で、 お互いの体を包み込んで、
触れられるたびほてる身体と、滑り出る汗を、
シャワーで洗って誤魔化して、湯船に浸かる。
あたたかいというよりも、熱くて、
心拍数がうるさい。
向かいに座る君の顔は、よく覚えてない。
覚えていないというより、あまりよく見つめられていなかったのだと思う。

お風呂上がり、君は私の髪を乾かしてくれた。
ボーボーと耳元で鳴るドライヤーの風が心地よくて
私の意識もぼーっと遠のいていく。

ホラー映画が好きな私のために借りてきてくれたビデオ。
内容はほとんど覚えてない。
うとうとしながら2階の君の部屋まで上がり、
君のベットで2人で眠る。

最初のうちは、君に抱き締められたり、おでこにキスされたり、
未経験の私にとったはその全てが新鮮で、次はどこに触れられるのだろうと、
もっと君に触れられたいと、
私からもいつの間にか君を求めるようになっていた。

そんな夜の訪問を週に1回くらい続けて、2ヶ月経った頃、
私と君は初めて一つになった。
ーーーーーーーーーー
痛くない?大丈夫?
ゆっくりいれるよ

うん、大丈夫だよ

ねぇ、私のこと好き?

好きだよ
ーーーーーーーーーー
初めてのその感覚。
最初はすこし痛かったけど、君から感じる熱と、
私を貫いてしまいそうな君の熱い想いに、呑まれ
身体中熱くほてり、どんどん溶かされていった。
とろけてしまうという感覚はこう言う事なんだと、
疲れ果てた体は恐ろしいほど満たされてた。

初めて一つになった夜、君の部屋の窓から見上げた夜空。
吹き抜ける風の冷たさ。心の空虚感。

本当は知っていた。
君の家は本当は、シングルマザーで、お父さんがいないこと。
君は私のクラスメイトと、えっちしてること。
私は君の彼女にはなれないし、
君はただ寂しい人なんだってこと。


私の瞳はきっと、星空がキラキラと映し出されて輝いていた。
そして、星は私の頬をつたっていた。

この窓が朝を迎えたら、私たち、もう終わりにしようね。


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