【美術展2024#06】MOT ANNUAL 2023 シナジー、創造と生成のあいだ@東京都現代美術館
会期:2023年12月2日(土)-2024年3月3日(日)
恒例の若手作家をピックアップした企画展。
この冬はあちこちで未来志向の企画展が多かった印象だが、ここ東京都現代美術館ではテクノロジーやメディア系の台頭を強く打ち出し、若手の視点で「今」の場所から未来を問うというような空気が感じられた。
メディア系以外で気になった作品をいくつか。
荒井美波
文字を書き順通りに針金で臨書(臨作?)するという超アナログ的手法の作品。
展覧会のメインビジュアルにもなっている。
支持体と文字との間の微妙な空間にわずかな高低差がつけられていることで文字が書かれた(作られた)時間の軌跡も表現されているように感じた。
紙に書かれた文字の筆跡の強弱のみならず、目に見えない筆者の息づかいや熱量のようなものも違った角度から可視化しているように思え、支持体に落ちた文字の影は「過去」を印画紙に焼き付けた「今」のようにも見えた。
やんツー
スイッチを押すと吊るされたバイクが派手な音を立てながらこれみよがしに上下動するという大掛かりな装置で一際目を引く作品。
その装置で発電を行いその電力をスマホに充電できるのだが、これだけ大袈裟な装置なのに少ししか電力が取れないという壮大な無駄。
我々が日々行なっている些細な行為が様々なものに負荷をかけながらどのような未来へ向かうのか、という批判とも皮肉とも取れるメッセージか。
友澤こたお
写実的な顔の上に描かれるにゅるにゅるの質感。
ここには艶かしいほどの触覚が描かれている。
言ってしまえばそれだけなのだが表現がストレートでシンプルな分インパクトがあった。
今展覧会に限らず、昨今メディア系アートが増えている印象。
個人的には、特にNFTアートなどには懐疑的で、美術史に耐えうるためにもマーケット的にも作品にはテーマやコンセプトのみならず物質的造形的要素が少なからず必要なのではと思うのだが、別に作家はそんな先のことや生活のことなどを優先して作家活動しているわけではないだろうからまあそれはそれで良いか。
こんなことを思うなんて自分もすっかりおじさんになってしまったからなのだろうか。
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