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やってやれないことはない12話 『ヘリコプターパイロット Take a chance』

「オートローテーション」聞いたことありますか?

エンジンが止まった時に、竹とんぼが下りていくように地上に着陸する訓練です。
着陸目的地が正面にある場合はいいのですが、後ろにある場合は180度ターンしなければなりません。況してや山間部だったり斜面だったり荒れた地面だったり思うようにならないところを瞬時に判断して目指します。

というより、降下しながら決めるので、操作は1回限りでやり直しがききません。失敗は地面に激突です。エンジンが止まったら1秒以内に操作しなければなりません。

実際、アメリカ人の訓練生が失敗し、滑走路上に卵型の操縦席部分だけになった機体転がっているのを片付けに行きました。
訓練生と教官は、入院となり、次に会うことはありませんでした。

目の当たりに見た事故で本気モードが緊張を超え、不思議に落ち着いていく自分でした。

すでにプライベートライセンスは所持しているので、一部訓練も教官なしで行います。どこまでが可能でこれ以上は教官のフォローが必要か冷静に自分を判断する必要があります。

事業用ライセンスは、ジェットタービン機(BELL206BⅡ)で行うことにしていましたので、200km以上の単独飛行で他の空港へヘリコプターで移動です。
初めての長距離飛行ですから、空港情報、飛行経路情報、目標、天候など綿密に計画を立ててフライトしなければなりません。

初めての空港で、初めての教官から初めての機体しかもジェットタービン機で短期間の訓練を受けて、試験を受けるなんてと最初は思いました。

しかし、考え方次第と気が付きました。
今まで受けてきた訓練が、そのレベルに達したからこそ教官から受験のサインをもらえたわけであり、今この機会を持てたのは、その位置に立っていることができる技量と知識等が身についているからだと自信を持つことができました。

試験も移動先のこの空港で受験し、無事合格しました。

アメリカ連邦航空局のコマーシャルパイロット・ロータークラフト--ヘリコプター(事業用操縦士技能証明書)取得しました。

晴れて目的達成しましたが、その感激はなく淡々と過ごした時間でした。
この感覚は、試験に合格するたびに覚えるもので、やるだけやった感の結果なのだと知りました。

この後、フランスのジェットタービン機(AS350B)で訓練しましたが、ローター(回転翼)の回る方向が逆なので逆になる操縦操作があり、慣れるのに手間取りました。

他の機体としてジェットタービン機(ヒューズ500D)での吊り下げ移動訓練やフロートのついた水上ヘリコプターなどのレイティングを取得しました。
水上ヘリコプターで湖に着水し湖上の人になったときは、生まれて初めての感覚でした。微風でも流されるのでエンジンは止めず、ボートの操船の様でした。

この後の飛行訓練は、木々に囲まれた川辺の狭地に入れる訓練や強風の中での離着陸訓練を始め、写真撮影用訓練など数々のレベルの高いアクシデント想定訓練を行い、残りの時間を楽しく充実して過ごしました。

時にレンタカーのようにヘリコプターを使用してその魅力を存分に堪能したものです。

牧場に朝の陽ざしを浴びながら着陸し、モーニングコーヒーを飲んだこと。

コーストウエストの断崖絶壁の上に立つピンクのおしゃれな喫茶店に着陸し、コーヒー1杯の時間をもったこと。

大きな川の中州に着陸し、コカ・コーラ片手に日光浴をしていたこと。

農場に着陸し、野菜を購入してきたこと。

雪の降った朝に、上空から眺めたヒルズボローが美しかったこと。

ポートランド国際空港のヘリポートに大型ジェット旅客機を注視しながら着陸したこと。
                                  クロスカントリーのライン上に原子力発電所を見たこと。

小さい滑走路の両脇に家が立ち並び、そのガレージから軽飛行機が出てきて驚いたこと。

検問で国際自動車免許を提示したら、オレゴン州の運転免許を取れと言われたので受験し取得しました。これで行動範囲がとても広がりました。

クリスマスのイルミネーションのなんと素晴らしかったことか。

高速道路を走って国境を越えてカナダへ旅行したこと。

アメリカ人とオーストリア人と私の3人でシェアして過ごしたコンドミニアムで覚えた文化・風習・習慣等は、私の人生に大きな影響を与えたことに感謝しています。

20世紀フォックス配給のハリウッド映画でアラン・パーカー 監督の日本語タイトル「愛と哀しみの旅」英語タイトル「CAME SEE THE PARADISE」のエキストラにて3か月間、出演が決まったこと。そして、初めての合法的な報酬をもらいました。「ベストキッドⅡ」の女優タムリン・トミタや「ライトスタッフ」のデニス・クエイドと同じ撮影現場にいたことは、経験しようと思っても出来ないことでした。

私のアメリカ留学は、『Take a chance』そのもので、学びの旅でした。

日本人コーディネーターのSANDYには多くの依頼をお願いし、いつも気持ちよく受けてくれたことに心より感謝します。

そして1年が経ち帰国します………

このnoteは、私の人生において成功・完結・失敗・後悔などのストーリーです。 若い皆さんのヒントになればと思って書いています。 書いてほしいことがあれば、気軽にご連絡ください。 サポートは結果であると受け止めておりますのでよろしくお願いいたします。