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「PLAN75」を観た。

予告編で興味がわいて、期待のあまり観る前にも投稿した作品は初めてです。公式でもハッシュタグで「#プラン75は是か非か」と書かれていましたが、映画を観て確かめてみようと思いました。

さっそく観てきました。

会場はほぼ満員に近く、年齢層も比較的高めのように思いました。主人公と近い年齢の方はどのように受け取るのでしょうか。

池袋グランドシネマサンシャイン

公開直後なので、ラストや細かい描写、展開についてはネタバレしませんが、それでも一部、予告編にない箇所も書いていたりするので一応ネタバレ注意です






















「PLAN75」制度。鑑賞前は「是」、鑑賞後は「非」

少子高齢化対策で創設された「プラン75」、要は公共の安楽死施設。実際問題、内閣府のデータを見ると、2065年の日本では、9,000万人を割り込む総人口で、約2.6人に1人が65歳以上、約3.9人に1人が75歳以上という数字。3年後の2025年でさえ、国民の5人に1人が75歳以上になると言われている。あらすじと予告編を観た時は、仕方のない選択。自分自身だってもしかしたら選択するかも。と思っていました。鑑賞前は。

実際は現代の姥捨て山であり、残酷なのは息子がおぶって行くのではなく、自分の足でその姥捨て山に行くこと。しかもそれは強制されたものではなく自分が選択したプラン。遺体も集団で火葬するプランにすれば無料という。プラン75をPRする映像では「人間はね、生まれてくる時は選べないから、死ぬときくらいは自分で選ぶことができたらいいだろうな。」と笑う。でも、一人ひとりの人生をこんなにシステマチックに処理して良いのだろうか?考えた結果、やはり「非」になった。携帯ショップの店員さんみたいだけど扱うのは人の「死」なんだけどな・・・。

ミチ(倍賞千恵子)は、最初はどこにでもいるような老婦人でしたが、でもどんどんと魅かれていく。彼女の人生は、プラン75のコールセンター職員の成宮(河合優実)と話すことで語られていく。成宮もまたミチと話すことで心の交流が生まれて彼女への親しみがわいてしまい、自分自身がゆっくりおだやかな殺人に加担していくことに罪悪感を覚えていくように見えました。そう、綺麗ごとでごまかされているけれど、冷静に考えると殺人と同じなんですよね。国が認めた合法殺人。まだ若いプラン75のスタッフだってやがて年を取る。その頃はプラン65、プラン60になっているかも。生きることに希望を持てない。こんな未来は嫌だと感じました。

そうそう、プラン75を選ぶと10万円の給付金がもらえる。ミチは奮発して特上寿司を出前で頼んだことや、とても美味しかったと成宮に話す。その場面なんてもう…。悲しくて。やるせなさすぎる。明日死ぬと分かっていながら食べる特上寿司。

あと、対応するスタッフを見ると、自炊のお弁当と水筒でお昼を取っている描写があり、おそらく非正規で大したお給料はもらっていないのだろうなと感じる描写もあり、あのお金とか色々のあれはどこへ・・・?と思う所もリアル。

河合優実 /成宮瑶子役
出典:映画『PLAN 75』6月17日(金)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー

ミチの目を通して感じた孤独と希望

この作品は何度も書いてしまうように、倍賞千恵子さん。いや、ミチがいたからこそ素晴らしい作品になっていた。彼女の一つ一つの所作が凛としていて、お惣菜が入っていたプラスチックのケースを洗って拭く姿さえ美しい。
人生を誠実に歩んできたのだろうなというのが全身で感じられる。

彼女に感情移入するあまり、成宮と交流する場面では流れる涙を止めることができませんでした。会場内でもすすり泣くような声がしました。

ラスト、ミチの出した決断が正しいのか、間違いなのかは分からないけれど、すぐには出ないし、誰も分からない。分からないまま考え続けたいと思います。

倍賞千恵子 /角谷ミチ役
出典:映画『PLAN 75』6月17日(金)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー

自分だったらどうする?その答えもまだ分からない

身寄りもなく、貯金もなく、まだ体は動くけれども若い人のように働けない。賃貸も断られ、友人も亡くなり。この先どうするか。目を背けて生きていきたいけれども、数十年後には必ず訪れる。この先家族が増えたとしても死ぬときは一人と考えた方が良いだろう。どうするだろうか。これも答えがない。考えさせられる。考え続ける作品。

磯村勇斗 /岡部ヒロム役
出典:映画『PLAN 75』6月17日(金)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー

プラン75の申請窓口の職員。粛々と仕事をこなしていく彼。すごくいそう。どこか冷めていて、若者らしからぬというか若者っぽいのか?それだけにラストの展開に驚く。プラン75のロゴもお役所仕事な感じがして。ありそうなロゴ。

おまけ:シアターが、男はつらいよおかえり寅さんと同じ所だった(多分) 

渥美清さんが亡くなったのは68歳。倍賞千恵子さんはもう80歳。妹のさくらが、いつの間にか寅さんの年を追い越してしまったんですね。

男はつらいよ お帰り寅さん
池袋グランドシネマサンシャイン

カバー画像:プラン75公式サイト予告編

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