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お母さんの読書感想文「『いのちの授業』をつくる」

「いのちの授業」をつくる
玉置 崇 ・ 鈴木 中人 著
さくら社
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共著であることに、大きな意味があるなと感じた本。


著者は、かつて学校現場で授業を作ってきた大学教授と、娘さんを亡くした経験から全国各地でいのちの授業を行っているNPOの代表。

それぞれの経験や知見を併記していく内容で、いろいろな立場の人に響くだろうと思う。


道徳が特別な教科とされて数年経ち、学校現場では道徳の研究授業なども行われているようだ。

道徳の中でも、いのちを扱う授業はずっと以前から行われてきた。

もちろん私も、子どもの時に受けた、はず。

(残念ながら、道徳の時間は行事に振り替えられたりして、やったりやらなかったりという感じだったので、ほぼ記憶がない)

それが教科になるということは、必ず年間時数は行わなければならなくなるということだ。

そんな中で、道徳の授業作りに関心を持って取り組んでいる教師が増えているのだろう。

とても良いことだと思う。


昨今の子どもたちを取り巻く環境を考えると、いのちの授業の大切さは理解できる。

だが、若い世代の教師から、いのちの授業作りが難しい、という声があることから、本書が誕生したそうだ。

本書は、いわゆるハウツー本ではない。

授業で語れるような体験がない、と躊躇する教師の助けになるような、本当の物語がいくつも収録されている。

それらをヒントにしながら、授業作りに活かしてほしいという著者の願いを感じる。

どんどん活用してほしい。


たしかに、いのちの授業は難しいと思う。

いのちが大切なことは、誰でも知っている。

みんなのいのちも、自分のいのちも大切にしなければならない、ということに異論を唱える人はいない。


けれども、いじめを苦に自殺する子どもが後を立たず、悲しいニュースがなくなることはない。

みんながわかっているのに悲しい事件が起きてしまうのはなぜなのだろうか。

それは学校での指導が足りないからだ、だからもっと道徳の授業をやるべきだ、という流れになるのも、さもありなんではある。


しかし、私は、道徳(いのちの大切さ)は教えるものではないのではないか、という感覚だ。

本書で玉置氏も同様のことを述べておられるが、道徳は、感じて、考えることが必要なのではないか。


いのちは大切、という価値観は、理解しているつもりだけど、実感するのが難しい。

実感して自分の中に落とし込むためにも、感じることや考えることが大切だと思う。


でも、何かきっかけがないと、日常的に感じたり、考えたりはしないだろう。

そう考えると、学校の授業だけでは不十分で、家庭でも、社会の中でも、道徳の授業のように、感じたり考えたりするきっかけになるような機会があるといいなと思う。


とはいえ、家庭でいきなり「さぁこれから、いのちについて考えよう」とはならない。

どんなふうに話を切り出したらいいのかも、わからないかもしれない。

そんな時に、親子でこの本を読みながら、あなたはどう思うか、私はこんな気持ちになった、と感じたことや考えたことを話し合うきっかけにしてみるといいのではないだろうか。


感じること、考えることは、経験すればしただけ自分の中に積み重なっていく。

学校で、家庭で、地域の中で、子どもと一緒に大人も、感じる、考える時間が持てるといいなと願っている。

2022年10月9日


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