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記事一覧
通わぬ道に(ワーズワース)
ワーズワースの"She Dwelt among the Untrodden Ways"という有名な作品。わびさびの心情が光る。目立たない娘で、人知れず亡くなっている。どこにも華やかな要素がない。まさしくわびさび。
恋は病いよ
サミュエル・ダニエルのLove is a Sicknessという作品。16世紀後半から17世紀初頭のイギリスに生きた。英語固有の押韻を擁護したらしいが、詳しくは知らない。評者によると、内容は凡庸だが表現は流麗とのこと。
アウグスティヌスの正義説
アウグスティヌスの自己実現的正義論。
アウグスティヌスは中山元『正義論の名著』を通してしか知らないので、後にじっくりと読むとするが、中山によれば、アウグスティヌスはこんなことを言う。
正義とは魂と身体がそれぞれの務めを果たすことであり、人間自身のうちに、自然本性のある正しい秩序が生じて、魂は神に、身体は魂に服属し、かくして身体も魂も神に服属することが正しさであり、正義なのだ。魂は神に仕える時に身
大隈言道の「流れくる…」
私の電子辞書に見つけた和歌(名歌名句事典)だが、江戸時代の歌人、大隈言道の作だ。「若鮎は浮かび上がって流れてくる桜の花びらをつつき戯れながら、またすいすいと瀬を上がっていくよ」という意味の叙景歌だ。叙景とは風景を書き表すことであり、叙景歌とは風景を書き表す歌となる。つまり、叙景歌には歌人の心情が直接表されることがない。
私は若い頃は自分の悲しみや恋情を直接詩歌に詠み込んだものだが、いまや老いたせ
藤原敏行の「秋来ぬと…」
古今集には藤原敏行のこんな和歌がある。
人間は社会的動物だが、人間性をすべて社会性に還元してはならない。自然界の本質を弱肉強食とする人がいるが、確かにそのようなところは否定できないが、それに尽きるものでもない。 人は(おそらく一部の動物もそうだと思うのだが)自然界に美を見出す存在であり、自然界には美が内在しているのだ。自然美とはいっても、夕陽や薔薇のように、雄大であったり色彩や造型の妙であったり
大江千里の「照りもせず…」
新古今集にある大江千里の作。白楽天の詩句「明らかならず暗からず朧々たる月」による句題和歌だ。「明るく照っているのでなく、曇り切っているのでもない春の夜に朧に霞む月の趣きに及ぶものはない」といった意味だ。
相反する二概念の甲乙があるとしたら、素朴な論理学的視点からは、甲か乙かのどちらかになるのであって、甲でありかつ乙であることはあり得ず、甲でもなく乙でもないこともあり得ない。甲か乙かのどちらかにな