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私からのサイン、一瞬だから見逃さないで

また一つ恋を始めてしまった。私は何かを始めるのが上手で、終わらせるのが下手だってことを自分が一番知ってる。恋は落ちるもの、かもしれないけど私は敢えて落ちに行ってる感が否めないしなんなら穴を掘っているのは自分かもしれない。月が満ちて欠ける一連の流れにはなんの狂いもないように私が何もしなければ何も始まらなかったのに、分かってて行動に移してしまう愚かな私だった。それでも君のことをもっと知りたいと思ってしまった。

仕事帰りにアルビオンのクレンジングと乳液を買った。いろいろ浮気したけど結局アルビオンが一番いい。化粧品メーカーに勤めているといろんな化粧品の裏事情を知ってしまう、全成分を見ればだいたい分かるし、いろいろと知ってしまうからこそスキンケアに頼るのではなく食べ物や睡眠に気を遣うようになる。そんな私でもアルビオンは格別だ。それにアルビオンの化粧水の香りが好き。昔ママがドレッサーでお手入れしてたときの香り。あのときママは私の憧れの大人の女性で、今はそこに近づけてると思うとスキンケアをしている時間がとてつもなく愛おしく感じられる。

続けて下着屋さんに行ってブラとショーツの上下セットを買った。E65とD70を何度もつけかえて比べる。前かがみになって胸を寄せてみたり腕を回してみたり。一番私の胸を綺麗に見せてくれるブラが欲しい。色は黒、金の糸でほんの少し花の刺繍が施してある。ベテランっぽい店員さんにも相談して結局E65を買った。大学生まではBカップだった私の胸は社会人になった途端に急に成長した。Bカップだったときはブラなんてなんでもよかったのに、Eカップになると急に愛したくなる、大切にしたくなる。どっちもずっと同じ、私の胸だったのに。

最後に伊勢丹に寄ってマカリヨンを買った。なんだよ、マカリヨンって。いっけんマカロンなんだけど違うらしい。これは明日君にあげるの。なんでもない日だけど、なんの理由もないけどあげたいから買うの。でも気を遣われないように小さい箱に入ってるやつ。プレゼントあげるの、好きなんだ。私もうれしくなるから。


私は恋を始めるのが得意だ。でも終わらせるのは苦手、綺麗に終わった試しがない。いつも私か相手、もしくは両方がボロボロに傷ついて終わる。(いや、終わったって明確に線を引けるならまだいい方だ。)きっと今回もそうなるのは分かってる。だからせめて丁寧に丁寧に始めたい。こんな風に君が気づかないくらい前から私の準備は始まってる。アドベントの期間、一日一日クリスマスを大切に待ちわびるように。どうせめちゃくちゃのぐちゃぐちゃになって目もあてられなくなるんだから、最初くらいはとびっきり甘くロマンティックに、素敵に始めたい。

君の気持ちにはもう気づいてるから安心して。君の気持ち届いたよって受け取ったサインを送ってるからちゃんと見て。一瞬だから見逃さないで。星が宿った瞳でちらっと君を誘うから。




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