見出し画像

インド映画が好きかもしれない

こんなタイトルを付けながらインド映画は数えるほどしか見ていないし、話題になった「RRR」も実は見てません。怒られていい覚悟です、インド映画を語るな。
けど語らずにいられなかった映画と出会いました。
「きっと、またあえる」
2019年公開の映画です。今更出会ってしまった。

10年くらい前、大学生の時に地元のカウンターしかないような小さな居酒屋で働いていた時。年間300本映画を見るというお客様と仲良くなって、その人が「人生で一番笑って一番泣いた映画と出会った」という話をしていた。
毎週決まった曜日にくるその人、Kさんはいつも色んな映画の話をしてくれてた。めぶきちゃんの好きな映画は何?と聞かれ、『いま、会いにゆきます』と答えた初対面を今でも覚えてる。外国の方は顔も名前も覚えられなくて苦手なんです、唯一見てる洋画は『ハリー・ポッター』。そんなことも話した気がする。
三谷幸喜が好き、クドカンも好き。そんなメジャーな映画しか観てなかった私にその人が興奮気味に教えてくれた映画が『きっと、うまくいく』というインド映画だった。


超有名工科大学に入った三馬鹿トリオのコメディ映画。
千葉の田舎に住んでた私は数少ない上映館を探し、新宿に映画を見るだけに行った。そしてあの時、遠い映画館に行ってくれた自分にありがとうと心から思える。3時間近くある映画なので人に安易に勧められないけど、私の人生の中でNo.1映画として語れる映画。
インド映画って急に歌って踊るって聞いていたんだけど、そんなの全く気にならない。そりゃここで歌うし踊るだろって、ミュージカルに触れてれば気にならないし。後はその歌と踊りのパワーがすごい。男子大学生が過酷な学力競争の中で寮生活をしているんだけど、「んなもん知るか!楽しめ!!」みたいなハッピーなナンバーが本当に楽しい。寮のシャワー室、トイレ、悩める仲間の部屋を巡って歌って踊っておバカに巻き込んでくそのお気楽ハッピーさがクセになる。
けどふと襲ってくる現実。大学を無事に卒業すればエンジニアとしての輝かしい未来があるけど、退学になれば路頭に迷う。
貧しい家族を支えるために死ぬ気で大学に入った仲間、親の期待を背負ってきたけど本当は金になるかも分からない夢を持った仲間。この先の人生をどうしたらいいのか、光があるのか暗闇なのか。不安になる中で「きっと、うまくいく(Aal Izz Well)」高らかに歌い上げられるとなぜか笑顔になってしまう。

混乱に次ぐ混乱 答えは出ない 答えが出たら 質問を忘れる
お前の心はいつもビクビク 胸に手をおいてなだめてやれ
バカな心に言い聞かせろ
唇を丸め 口笛吹いて こう言え
「兄弟 うまーくいく(Aal Izz Well)」
「兄弟 うまーくいく(Aal Izz Well)」
「友よ うまーくいく(Aal Izz Well)」

作詞:スワナンド・キルキレ(Swanand kirkire) 日本語字幕:いとうせいこう


上に書いたお気楽ハッピーな曲がこれ、この映画の主題歌に近いんじゃないかな。この歌に入る前に三馬鹿の中でも一番破天荒なランチョーが信心深く心配性なラージューに言う言葉が大好き。
「心はとても臆病だ、麻痺させる必要がある。困難が発生したときはこう唱えるんだ、“うまーくいく(Asal Izz Well)”」
歌詞にもあります、バカな心。心はバカで臆病だからお前は悪くないよ、と笑い飛ばしてくれてる気がする素敵な歌。
検索すれば曲だけでも聴けるけどぜひ映画の中で聴いて欲しい曲です。タイミング次第ではあるけどサブスクで見られるので。3時間弱、その時間かける価値あります。私は人生の中で出会えてよかった3時間でした。
人生で初めて自分に買ったクリスマスプレゼントがこの映画のDVD。実家に住んでた時に買ったので弟も見てハマって今借りパクされたまま帰ってきてません。返さなくていいから嫁ちゃんと息子ちゃんにちゃんと見せとけよお前。

そんな初めてのインド映画が人生最高の映画になってしまった私に更に追い打ちをかけるインド映画があったのです。


「きっと、またあえる」
ふとアマプラで「きっと、うまくいく」見れないかな。なんて思った夜。検索した時に関連動画で出てきたこの映画に惹かれない訳がなかった。続編か!?と思って即再生。
ネタバレ嫌いなのであらすじも見ずに画面を眺めつつ、冒頭見てつまらんかったら見るのやめようのサブスクスタンス。本当にあの時の舐めた態度を改めたい。

結論から言うと、「きっと、うまくいく」とは全く関係ない映画、全く別のストーリーです。興行収入の成功に倣って似た邦画タイトルを付けたみたい。大成功ですよ、引っかかってハマった人間がここに。

「きっと、うまくいく」とは全く関係ないけど、あの映画が好きなら絶対に好きだと言える映画でした。
けど上映時間は2時間半、インド映画を勧めにくいのはその長さにもある。
私も家で晩酌のお供として選んでしまったけど、2〜3日かけて見るつもりでした。家じゃ2時間近い映画見る集中力を保つことさえ困難、映画館とは違う環境には向かないと思ってたから。けど気が付けば画面にのめり込み、声を出して笑って声を押し殺して泣いてた。それほど登場人物たちに入り込んでた。

この映画も、インドの有名工科大学のお話。
有名工科大学を目指す受験生ラーガヴの父アニ、今は立派な成功者に見えるが実は負け犬だったって言う話なんだけど。冒頭からもう好きってなった。
映画が始まるとみんなが寝静まった狭くてボロい男子寮らしき場所が映し出される。生活集合体の中で悪ふざけを始める男子二人。そこからどんどん悪ふざけが寮内に広まっていって、寮内全員で隣の寮にも乗り込んで行く。というワクワクと男子学生の無鉄砲さに「笑っていいのね」という作品の楽しみ方を教えてくれた、もうこれは遠慮なく笑ったろ!と思った30分後。私は泣いて笑っての波を一身に受けることになる。

ラーガヴのために自分の人生を父であるアニが追憶を語るお話なんだけど、その中で出てくる仲間たちが本当に素敵すぎる。
有名大学の男子寮。寮ごとの力関係は年に一回開催される体育祭的な大会の順位で決まって行く。アニが入学時に配属されたのが15年間最下位を記録し続けた最底辺の第四寮。部屋は狭く寮の食堂の飯は最悪だけど、そこに暮らす仲間たちは最高だったという。セックスのことしか頭にないエロ本コレクター・セクサ。マザコンで自分一人で生きていけないのに突如男子寮に放り込まれたマミー。教授たちからの罵倒のストレスを暴言を吐くことで発散する・アシッド。酒ばかり飲む、酒から逃れられない・へべれけ。負け犬から脱するチャンスを逃したみんなの兄貴分・デレク。最悪の環境の負け犬等だけど皆がみんなを大好きで家族みたいな第四寮。みんな大学を卒業してから疎遠だったはずなのにアニの連絡で集まってくれるのがまず熱すぎた。
ラーガヴに「父さんは負け犬だったんだ」と話すアニ、そしてどんどん明かされる学生時代の話。第四寮のクセの強い負け犬たちが寮対抗のスポーツ大会で優勝して脱・負け犬を目指す思い出話。

あらすじを書いてて思ったけど。これを見て2時間半の映画を見ようと思えないから あらずじ見なくてよかったと思う。スポーツ主軸のストーリーでよくあるやつじゃんよ、って萎えてた自分が見える。
けどこれを見て良かったと思えるのは負け犬らしい『卑怯とも言える』戦い方のコメディバランスと、「いやスポーツマンシップもあるんかい!」と時折見せる真剣勝負のバランス。それやっちゃう!?という卑怯さを笑いに収める形に留めて、真面目なところも真剣なはずなのに何故か馬鹿馬鹿しくて。もう皆が好きだから応援せざるをえない。
そして極め付けはガチガチの悪人が出てこない。ライバルも色々アニたちに仕掛けてくるけど、正攻法で敵わないから色んな油断で鼻を明かしてきたアニたちもそりゃ因果相応よな、って思えたりもするから面白い。
全員前を向いて、そして前を向くこと自体に価値があることを知っているからこその向上心に胸が打たれる。

ちなみにこの映画、全く踊ってくれません。劇中歌みたいのはちょこちょこ挟まるけど「踊らんのかい!!」って最初は少しがっかりします。けど踊らなくても関係ないくらいにストーリーと皆の熱量で殴られます。
なんだ、踊らなくてもいいんじゃん…いい映画じゃんインド映画。
と思ってるとエンディングでぶん殴られます、踊ります。エンディング踊るけど、ここまで一緒に物語を見てきた人にしか分からない最強のショウを見せてくれます。
これ見たら二週目いかんといかんやろ、とスマホにダウンロードしてしまったのが私です。


サブスクにハマり色んな作品を見るようにしてるんだけど、まさかの作品に出会ってしまった。
ちょっとインド映画いっぱいみようかな。けど長いんだよな、と葛藤中。だけど。きっと、好きになる。だろうなぁ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?